二の舞には、ならない!
「「「《消滅》解放!」」」
「《獣化》、」
俺、あかり、ミナが消滅を武器に付与する。ミナは合わせて獣化もして身体能力を上げる。
「溜めを開始する。援護をしてくれ!」
「「「「はい(なのじゃ)!」」」」
作戦通り、俺が消滅付与の溜めを始める。その間にあかりとミナには接近攻撃、リリには魔法での後衛をしてもらう。そして先生・・・恵には守護をしてもらうことになった。
「行くよ!ミナ。」
「ん、わかった。」
あかりとミナがベヒモスへの攻撃を開始する。それを見て俺も溜めを始めた。
隣には恵がいる。
シュババババババ‼
シュババババババ‼
二つの連続した音が鳴る。あかりとミナがベヒモスの脛の一ヶ所に集中して攻撃をしているのだ。みるみるうちに傷が深くなっていき、それに気づいたのかベヒモスの手が二人に迫っていた。
「二人とも下がるのじゃ。」
「わかった!」
「ん!」
リリの声に、二人が一度下がる。ギリギリをベヒモスの手が通りすぎていった。
「次は妾の番じゃ!《神越疾風》!」
ベヒモスの手が通りすぎる。その直後、リリから超圧縮された極大の風の刃が飛んで行く。その刃はあかりとミナの攻撃でできた傷に寸分違わず衝突した。
ズパァァンッ!
独特の音を響かせてリリの魔法が更に傷を深くした。その後から再びあかりとミナが攻撃を開始する。
もうすぐ溜めが完成するというそのとき、エネルギーが溜まっていくのを感知したのか、ベヒモスが顔をこっちに向けた。
グォォォウゥゥ‼
大地を揺るがすような声をあげ、ベヒモスが口を開ける。
「っ!旦那様、先生。あれがくるのじゃ!」
リリの言う"あれ"というのは前回俺がくらってしまった光線のことだ。
「恵、頼む。」
「は、はい!」
これに関しても対策は考えていた。恵に守護を頼んだのはそのためだ。
その直後にはベヒモスから俺たちには向かって極太の光線が放たれていた。
デュゴォォォォゥゥ!!
莫大な熱量を持った光線が俺と恵みを包む。数秒の爆光と爆音の後、徐々に細くなっていく光線の先には、大きく削れて所々が赤熱している地面と、その中心に溜めを完了した俺と、右手を上げて立つ恵がいた。
「二度も同じ攻撃はくらいません。お返しです!」
上げた手をベヒモスの傷へ向ける。
「《異空間固定》全解放!」
伸ばされた手の先の空間が歪み、そこからさっきのベヒモスの光線が飛び出す。紫色をした光線の中には、赤、青、緑、白などの色が混じっている。今まで異空間固定で先生に渡していた魔法の数々が混じっているのだ。
ズガガガガガァァン
再び傷に大きなダメージが入り、傷が広がった。
「これならいける!」
傷は脛の半分まで及んでいた。それを見て確信する。
「次は、俺の番だ!」
その傷へ向かって一気に飛び出す。ベヒモスもさすがに危険を感じたのか、俺に向かって細い光線が四方八方から飛んでくる。
「《空間遮断円盤》」
自分の回りに黒い円盤を複数飛ばす。それらが俺の回りを飛行して光線を打ち消していく。
空間を歪ませて遮断することで、物理、エネルギー関係なく遮断する魔法だ。
さらに、その円盤を足場にすることで空中でも移動することができる。
「っ!くぅぅ・・・。」
それでも守りきれない部分は避けるしかないのだが、避けきれず少なくないダメージを負ってしまった。それでもなんとか傷までたどり着いた。
「い、いくぞ!溜め、解放!」
ベヒモスの攻撃をなんとか切り抜けて、溜めを解放する。
「おぉぉりゃぁぁ!」
シュヴヴァァァン
グガァァァゥゥ!
剣の刃渡りを大幅に越え、消滅のエネルギーが残りの半分を一気に削った。
ズズズズズ・・・ドゴォォォン!
切り落とされた足が地面に落ちる。みんなのところまで戻ると、その衝撃が爆風となって押し寄せてきた。
「こ、ここらかだよ、孝介!」
そうだ。ここまででできたことはまだ足を切り落としただけである。
「あぁ、予定通りいくぞ。」
ここでは敢えて攻撃にいかない。前回と同じであれば、次に起こるのは、
「ん、始まった。」
その瞬間、ベヒモスに黒い煙・・・バレッドスモークが集まっていく。これで修復されてしまってはいけない。それを防ぐために、
「《空間遮断接着》」
切られた脚の部分に空間遮断をくっつける。これでバレッドスモークによる修復をさせないようにするのだ。
そして、ここで攻撃をしない理由。それは・・・。
「っ!あそこか!」
バレッドスモークが発生している場所を見つけるためだ。