コピー、コピー、そしてコピー
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「なんでこいつらがここにいるんだ?」
扉が閉まり、逆光がなくなったことでその全容か見えるようになる。
そこにいたのは、明らかに異空間固定をしておいた勇者、つまり俺のクラスメートたちだった。
「孝介が寝ている間に、全員の異常強化を解除しておいたの。解除用のポーションはマジックバックにはいってたからね。」
「奴隷化された時点でそこからの記憶はとんでおったから、今の状況もしっかりと説明しておいたのじゃ。」
そうか。みんなも動いてくれていたんだな。
「孝介。あの事は本当にすまなかった。黒魔法をかけられていたとしても、そのあと探しに行こうとしなかった。」
と潔く謝っているのは、さっきも一番に声を上げた天城翔太だ。それにつられて、ちらほらと謝罪の声が聞こえてくる。
「いや、別に大丈夫だ。それより、お前らさっきから"最強の助っ人登場"みたいな雰囲気出してるけど、はっきり言ってベヒモス相手にどうにもならないからな?」
「そんなことはない!俺たちが力を合わせればできないことなど・・・。」
「天城くん、そう簡単に対抗できる
相手ではありませんよ!」
先生が被さるように注意する。実際にそうなのだ。だいぶダメージを与えたのだ。一度は弱らせることができたと言ってもいいだろう。だが、そこからが問題だ。
「あの黒い煙がなんなのか分からないと、どう対処すべきかもわからないからなぁ。」
まずあの黒い煙のせいでそこまでステータスの高くない勇者たちは近づけないだろう。それに、ダメージを与えたとしてもあの煙が修復してしまうようだ。
「その煙についてなのじゃが、あれはバレッドスモークと同じようなものだと思うのじゃ。」
「「「バレッドスモーク?」」」
俺とあかり、あと先生が知らない言葉ってことは、この世界ではそれなりに有名なことってわけか。勇者の方でもざわざわと何かを言っているようだ。
「私、聞いたことある。魔物の生まれる場所に発生する。バレッドの町で初めて発見された。だからバレッドスモーク。」
「そうじゃの。正確には魔物の体を作る元となるものなのじゃ。世界を構成するエネルギーの変質したものとも言えるかの。それが集まることで魔物を生み出すのじゃ。ベヒモスの回りの煙もそれと同じようなものじゃろう。ダメージを受けると、そこを修復するようにバレッドスモークが集まっていくのじゃ。」
「てことは、まずはそのバレッドスモークってやつをどうにかしないといけないわけか?」
「そうなのじゃが、あの煙はベヒモス自身が世界を構成するエネルギーを取り込むことで生み出しているとしか考えられんのじゃ。そもそも世界にあんな量のバレッドスモークは存在せんからの。」
つまり、その供給を絶つ方法が必要なわけか。どうすれば・・・。
「そこで、クラスのみんなをこのタイミングでもとに戻した理由につながるわけ。」
「ん?どういうことだ?」
「そこ、大事なところじゃったのに!なんで言ってしまうのじゃ!」
リリが先に言われたことに怒っているのは置いておくとして、その理由というのは・・・。
「孝介の《想像》で全員の天与をコピーしてほしいの。」
「全員の天与のコピー?なんでだ?」
「エネルギーの供給を絶つには世界の奥深くまで干渉できる力が必要なのじゃ。絶対にできるとはいいきれないのじゃが、旦那様がすべての天与を習得すれば供給を絶つことも可能になるかもしれんのじゃ。」
「そ、そうか。みんなはそのことを知ってるのか?」
「はい。私が説明しておきましたよ。」
先生から言ってくれているなら大丈夫だろう。
「でも、孝介様の魔力、足りるかわからない。」
「そうだね。たしか二つコピーしたところで魔力が切れたから。」
コピーしては倒れて、なんて繰り返していたらいつまでたっても終わらないからな。MP回復ポーションにも限度があるし。
少しの間悩んだところで、俺は一つの案を思い付いた。
「これならいけるかもしれない。少し試してみてもいいか?」
その案を実行するため、クラスメートのうちから一人来てもらった。
「天城、とりあえずステータスを見せてくれ。」
「あぁ、わかった。」
天城翔太。天与は《逆境》だな。
俺はそのステータスを見ながらスキルを使う。
「《分析》!」
スキル《分析》 ヘルにもらったものだ。これを使えば天与の仕組みを理解できる。そうすればより少ない魔力でコピーができるのではないか?と思ったのだ。
結果は・・・。
「よし、コピーできた。それに消費魔力量も大幅に減ってるな。」
「ほんとに!ならうまくいくかもしれないね!」
「あぁ!」
さすがになかなかの魔力を消費するみたいだが、この調子ならMP最大から10回はコピーできそうだ。
「このまま天与をコピーしていきたい。みんなも順番に来てくれ。」
それから30分ほどしてほとんどのコピーが終了した。最後の三人は、桐山信吾、大山柊、佐賀仁司だ。まぁいじめ主犯核だったやつらだな。
「久しぶりだな。」
一応それっぽく声をかける。
「ちっ、なんでお前なんかに協力しないといけないんだよ。」
「お前のせいであかりちゃんが出ていってしまったってゆうのにな。」
「甚だ不本意だ。」
三人それぞれ恨み辛みを吐き捨てていくが、そんなことは俺の知ったこっちゃない。
「別に俺がお前らになんかしたわけでもないだろ。それにあかりがついてきたのはあかり自身の意思だし、それに今は俺の妻だ。人の妻に手を出そうなんて考えんなよ?」
「な、なんだよそれ。」
え?あ、こいつら俺とあかりがそうゆう関係なの知らなかったのか?まぁあと3人いるわけだが。
そんなことを考えてると、後ろから誰かが抱きついてきた。
「そう。今、私と孝介は夫婦なの。あとミナとリリと先生もね。」
「っ!お、お前ぇ~!」
「なに、文句でもあるの?てか早くステータス見せなよ。さもないと・・・消すよ?」
「「「ひぃっ!は、はいぃ!」」」
あかりさんや、殺人鬼の目になってますぜ・・・。
と思いつつも三人の天与を分析、コピーする。
「よし!これで全部コピーできた・・・うっ!あぁぁぁ!」
「こ、孝介!どうしたの!ねぇ!」
「孝介様!?」
「だ、旦那様!早くベットへつれていくのじゃ。」
「横井くん!大丈夫ですか!ベットはこっちです。早くいきましょう!」
な、なんだこれは!頭に激痛が走る。脳の神経が焼き切れるような感覚に襲われる。みんなが何か騒いでいるが、それを理解するほどの余裕は残っていない。クラスのやつらもざわざわとあわてているようだ。
徐々に意識が薄れていく。そして、目の前が真っ暗になった。
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何かが見える。俺は何をしているんだ?体は動かない。ついさっきもこんなことになってたな。けど今回は何かが見えている。それが何なのか。
その何かが動き始めた。一枚の布のような。裏と面。その瞬間、脳に情報が流れ込んでくる。はぁ、そうゆうことか。その何かは刻々と形を変えていく。なにかに包まれている。それが漏れだしたり、再生したり。その都度情報が流れ込んでくる。きちんと理解ができる。その時間は一瞬のような、気の遠くなるような長い時間のようでもある。
それはこの世界の仕組み。この世界の過去、現在、そして未来の動き。
この世界のすべて
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「・・・・・・け・・・う・・け・・・・・・こう・・け!」
「こ・・す・・さま・・・こう・・・け・・・」
「だ・・・さま・・・・・・んな・・・ま」
「・・・い・・ん・・・よこ・・・く・・」
なんだよ、暗号を解くのは苦手なんだ。てかヒントはどこだ、ヒント。そうじゃないと解けやしない。
しばらくすると徐々に鮮明に聞こえてくる。それはとてと聞きなれた声だ。あぁ、そうゆうことか。
「孝介!」
「孝介様!」
「旦那様!」
「横井くん!」
「・・・ん、んん。そ、そんなに一斉に叫ぶなって。死んだわけでもないんだし。」
みんなの声だ。俺はまた倒れたみたいだな。
「うぅぅ。勝手に倒れないでよぉ。」
「孝介様。本当に死んじゃうかと・・・。」
「妾を置いてどこか遠くに行ってしまうのかと思ったのじゃぁ~。」
「う、うわぁぁぁん。横井くん・・・ひっく・・・また倒れたから心配で心配で・・・。」
「いや、いくらなんでも気にしすぎだって。ちゃんと息もしてたし、心臓も動いてただろ?」
生きてることはわかったはずなんだけどな。
「それに、ちゃんといい報告がある!」
「「「「いい報告?(じゃと?)」」」」
「あぁ」
さっきまで見えていた、夢のようなもの。そう
「これで、やつに・・・ベヒモスに勝てるかも知れない。」
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