表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/64

第21話

 通路を歩き進めると角から曲がってくるリリアーナ様とミザリーさんの姿が確認できた。

 僕が足を止めることなく進むと、こちらに気がついたミザリーさんが一瞬驚いたような顔をするがすぐに戻ってしまった。そして、横を通り過ぎるときに軽く頭を下げると僕はそのまま通り過ぎて行った。


(ほらね、気づかなかったでしょ。そんな1度しか会ったことない人のことなんてさすがに覚えていないでしょ。しかも、相手は冒険者だし目と髪の色も違ったんだから)


 3人にそう言ってそのまま歩いていると、後から自分の名前を呼んでいる声が聞こえてきた。


「ユーリ様・・・?ユーリ様!!」


 驚いて足を止めていると後ろから衝撃を受けて、バランスを崩しそうになってしまった。そして背中に大きくてムニュムニュした柔らかいものが当たっていることに気がついた。


 ♦


 私は部屋を飛び出して悠璃様の部屋へ向かおうとしたが、場所を知らないことに気づいた。


「そういえば、悠璃様の部屋ってどこなのかしら」

「リリアーナ様、私が案内しますよ」

「では、ミザリーお願いするわね」

「分かりました」


 そう言うとミザリーは通ってきた方と反対の方へ歩き始めました。

 少し進むと角が見えてきたので、ミザリーについて左にまだりました。すると、前から誰かが歩いてきていることに気がつきました。


「ミザリー、前に見える人ってこの城の使用人かしら?執事にもメイドにも見えないのだけれど」

「あ、はい、どうやら異世界から召喚された方のようですね」

「なるほど、こちらに歩いてくるということは外出されるのでしょう」


 ミザリーが一瞬驚いたような顔をしたけどすぐにいつもの表情に戻った。もしかしたら、ミザリーの知っている人かもしれませんね。


 それからさらに近づいてくるとそれが男の人だとわかりお顔を見ることが出来ました。


「へぇ~、すごく整った顔立ちをしていますわね。異世界の方は皆そうなのでしょうか?でも、どこかで・・・?」


 違和感を感じていると、こちらに気づいたのかすれ違う際に頭を下げていた。それから少し進んだところで違和感の正体に気づきました。


「そういえば、顔立ちや髪型がユーリ様にそっくりだったような気がしますわ。でも髪と瞳の色が違いましたわね。ミザリー、髪や瞳の色って変えることが出来るのかしら?」

「そうですね、魔道具を使えば可能でしょう。それと、ユニークスキルの中に見た目を変えたり偽ることのできるものがあるらしいですよ」


 それを聞いた私は直ぐに、頭の中で髪と目の色を変えた姿を想像してみると、ユーリ様と全く同じ顔になることに気がついた。


「ユーリ様・・・?ユーリ様!!」


 気づいた時には既に、ユーリ様の背中に抱き着いていました。


 ♦


「あ、あの、リリアーナ様?背中に当たっているのですが・・・」


 悠璃は背中に当たっている柔らかいものを意識しないようにしてリリアーナに声を掛けた。


「はっ!す、すみません。うれしさの余りつい・・・。ところで、ユーリ様は私の名前を憶えていてくださいましたのね。すごくうれしいですわ!!」

「リリアーナ様も僕のことを覚えていてくださり、ありがとうございます。ミザリーさんもお久しぶりです」


 髪も目も色が違うのに気がついたリリアーナ様に驚いた。


「メイドである私のことも覚えていてくださったのですか。ありがとうございます」

「それにしてもまさか、ユーリ様が勇者様だったとは思いませんでした」

「はは、僕は眷属使いで勇者ではないですよ」


 確かに勇者の称号は持っているけど、職業は眷属使いだからね。


「ということは、もしかして眷属使いの悠璃様というのは、ユーリ様のことだったのですか?」

「そうですね。この世界の人たちは悠璃よりもユーリの方が呼びやすいみたいですし、冒険者ギルドでもユーリで登録しました」


 どうやら、この世界の人たちは”ゆうり”よりも”ユーリ”と伸ばした方が呼びやすいようだ。


「なるほど。そういえば、こちらに向かってきたということはお出かけされる予定だったのですか?」

「はい、ダンジョンに行こうと思いまして」

「そうだったのですね。ところで、またお話することはできますか?」

「ええ、ずっとお城にいるわけではありませんが、またお話しできますよ」

「分かりました。本当はもっとお話ししたいのですが、ユーリ様のダンジョンに行く時間が無くなってしまいますし、もう行きますね」

「はい、僕もリリアーナ様とお話しできてよかったです」


 リリアーナ様が去っていくのを見送って僕は改めてダンジョンに向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ