↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹ばかりを優先する無神経な婚約者にはもううんざりです。お別れしましょう、永久に。  作者: 小平ニコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/68

第61話

「そうよね、そうよね。でも、撃つか撃たないのか決めるのは私よ。私私。私が、すべての決定権を持ってるのよ。あぁ、いい気分だわ。汗だくでこんな草原を走り回って最悪の気分だったけど、やっといいことが起こったわね」


 些細な優越感により、自分が置かれている絶望的な状況が吹っ飛んだのか、キャロルは本当に幸せそうだった。浅慮もここまでくれば立派な才能である。


 私は、もう一度まったく同じ質問をした。


「私を撃つの?」


 そして、キャロルから返事が来る前に、さらに畳みかける。


「撃ってどうなるの? 今の自分の立場を考えてみなさい。私を撃てば、あなたはもう許されない。さらに状況が悪化するのよ」


 キャロルは爆笑した。


「きゃははははははははははははは! 許されないですって? 誰が? 誰が私を許さないの? 私はねぇ、何をしたって許されるのよ! みんなが許してくれるの! 世界が私を許すの! 私は特別な人間なのよ!」


 キャロルは銃の撃鉄を起こしながら語り続ける。


「乳母を蹴飛ばした時も許されたわ。悪戯で使用人を階段から突き落とした時も許されたわ。みんな、決まってこう言うの。『悪いのは私です、キャロルお嬢様ではありません』ってね! 世界も、みんなも、私の味方なのよ! 私は最高のお嬢様よ! 私だけは、何をしても許されるのよ! きゃははははははははははははは!」


「じゃあ、なんで逃げたの?」


 キャロルの馬鹿笑いがピタリと止まった。

 代わりに、私が話し続ける。


「本当はもうわかってるんでしょう? ウォード家はおしまいだって。もう『最高のお嬢様』じゃいられないって。それで、自暴自棄になってる」


「う……う……う……」


「もうやめましょう。今なら、あなたはまだ……」


「うるさいっ!」


 そして、キャロルは銃の引き金を引いた。……しかし、弾丸は発射されなかった。キャロルは驚愕の表情で何度も引き金を引くが、結果は同じだった。


「な……なんで? なんで弾が出ないの?」


「キャロル、銃は魔法の武器じゃないのよ。火薬を爆発させて弾を飛ばす『精密機械』だから、案外ちょっとしたことで思い通りにはいかなくなるの。特にその銃は、重量、反動共に、極端に軽くするために色々なものを犠牲にしてるから、水に濡れるとすぐ弾が出なくなるんですって。ハンスさんが言っていたわ」


「そんな……そんな……っ」


 私の言っていることが信じられないのか、信じたくないのか、カチカチと引き金を引き続けるキャロル。……本当に、どうしようもない子。恩着せがましいことを言う気はないけど、弾が出なくてあなたは救われたのよ?


 確かにあなたの罪は軽くはないけど、最悪の罪である『殺人』はまだ犯していない。それが今、私を撃って殺してしまったら、法的にも道義的にも決して許されることはなくなる。そうなれば、もうどこにも救いはない。誰も、あなたを救ってはくれない。どうしてわかってくれないの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。