↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹ばかりを優先する無神経な婚約者にはもううんざりです。お別れしましょう、永久に。  作者: 小平ニコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/68

第57話

「ブライス・オルスタイン公爵様。このたびは……」


 その態度に、ブライスも慌てて膝をつく。


「よ、よしてくれクリスタ。きみにそんな態度を取られると、照れくさいを通り越して悲しくなってくる。ほら、立って立って」


「でも……」


「きみだって、僕が形式ばった態度で『うむ、苦しゅうないぞ。フォーリー家の長女、クリスタ・フォーリー嬢よ』とか言っていたら嫌だろう?」


「う……。それは確かに、ちょっと嫌です」


「だったら、自分が嫌なことは人にもしちゃ駄目だよ。ほら、立って」


 その、優しく窘めるような言い方は、先程までの厳格なブライス・オルスタイン公爵のものではなく、私の知る草原のブライスのものだった。彼の言葉で、ずっと緊張していた心と体が、やっと本当の安らぎを取り戻した気がする。


 だからなのか、もう自分の感情と行動を、自分で制御できなかった。私はもう何も言わずに、彼を抱きしめる。ブライスも、私の背にそっと両手を回してくれた。白銀の甲冑は冷たかったが、それでも彼の温もりが伝わって来て、心が温かかった。


 その温かさに対して寂しい寒風が吹きつけるように、エリックの声が響いてくる。


「おかしい……。こんなのおかしい! どうしてこうなるんだ!? どうして何もかも思い通りにいかない!? どうして!? どうして!? どうして!?」


 とりあえず連行されたのはラスールだけだったので、エリックは捕縛されたまま、地面に正座をして喚いていた。その表情は完全にパニックそのものであり、かつては自信にあふれていた瞳から、駄々っ子のように大量の涙をあふれさせていた。


「なんだって思い通りになったんだ! 何をやったって俺を止められる者なんていなかったんだ! 俺はラスール・ウォードの息子だぞ! それがどうして、縛られて地面に膝をつかなきゃならない!? どうしてだ!? どうしてなんだよおぉぉぉ……!」


 半狂乱のエリックは、体を折り曲げて地面に額を擦り付けている。そして顔を上げると、エリックは私を睨み、お腹の底から絞り出すような呪詛の声を投げかけてきた。


「クリスタぁ……! お前のせいだ! お前が俺を拒絶するまでは、なんでも思うがままだったのに! 偉そうに説教なんかしやがって! お前だけだぞ、この俺を叱ったのは! あれで全部ぶち壊しだっ! お前のせいだぁっ! あんなに愛してやったのに! 誰よりも愛してやったのに! 俺の愛を無下にした性悪女めっ!」


 相変わらず無茶苦茶な理屈だが、もう腹は立たなかった。こういう考え方しかできない彼が、心から哀れだった。しかし、ブライスは聞くに堪えないといった表情でエリックを制した。


「黙るんだ。クリスタに対する侮辱は、この僕が許さない」


「うぅっ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。