第51話
「さて、クリスタ。全面的に降伏するとのことだが、それはフォーリー家の総意かね? 当主のレスターはどこだ? 姿が見えんようだが」
「お父様は身体を壊し、お屋敷で静養されています」
あなたたちのせいで。
……と付け加えたかったが、意志の力でなんとか堪える。
「ほっ、軟弱なことだ。ん~……しかしねぇ。降伏すると言われても、こっちはもう、弱腰になったそちらの兵を皆殺しにしておしまいって段階だからね。今さらになって『もう許して~』って態度を取られてもね、困るんだよねぇ。ほら、ここまでやっちゃったらさ、中途半端に和解するより、全員殺した方が後々楽なんだよ」
相変わらず、威圧感のない親しげな口調だが、話の内容は冷酷そのものだった。しかも、脅しで言っているわけではない。この男は、間違いなく和解より皆殺しを望んでいる。私は緊張で乾いた喉をゴクリと鳴らし、懸命に説得を試みた。
「しかし、これは明らかな私争であり、不当な侵略です。加えて、戦意を失ったフォーリー領民を虐殺したとなれば、いくらあなたでも、国王陛下から罰せられることは避けられないでしょう。だから……」
その時、「ふふふ」という嘲笑が聞こえた。声色で、エリックのものだということがすぐわかった。それから、「きゃはははっ」という、心の底から人を小ばかにした笑いも聞こえてくる。これはキャロルのものだった。
「おぉ~、かわいそうなクリスタ。何も知らないんだねぇ。王は何も言ってこんよ。今回のことについては、知りもしない。ワシが裏で手を回しているからね。大公のジジイも同じだから、期待しても無駄だよ」
「なっ……」
あまりにも衝撃的な言葉に絶句してしまう。エリックとキャロルの勝ち誇った笑いが聞こえてくるが、それに対して屈辱を感じている余裕もないほど、私の頭はショックに揺らいでいた。
「ふはははは、物事には何でも表と裏がある。表側しか見えていない馬鹿正直なレスターの娘であるお前には、受け入れがたい話だろう。しかしこれが現実だ」
「で、でも、国王陛下からも、大公様からも、直訴の手紙に対するお返事自体は来ていました。今回のことを何も知らないなんて、そんなことは……」
「あれは偽造だ。さすがにレスター自身に直接陳情に行かれては面倒だからな。お前たちの希望を打ち砕くためにやったのよ。うちには書類の偽造を専門にしている職人がいてね。署名まで完璧に真似ることができる。お前たちも貴族なら、一人くらいはそういう人間を雇っておくと何かと便利だぞ。ふははははは!」
「お父様ぁ、これからフォーリー家はなくなっちゃうんだから、そんなアドバイスをしても意味がないわ。代わりに、小銭でも恵んでやったらいいんじゃない?」
「おお、そうかそうか。滅びゆく者に対しては、謀略の知恵よりもはした金の方がよっぽど有用だな。さすがはキャロルだ。エリックともども、優しく賢い、我が自慢の子よ! ふはははははははは!」




