第34話(キャロル視点)
パンッ。
乾いた音が晴天に響き渡る。
ふうん。
『女性や子供でも使える超軽量短銃』っていう触れ込みだったから、もっと反動が小さいと思ってたけど、けっこう手首に衝撃が来るわね、これ。私みたいにエレガントなレディが使うためには、この半分くらいに反動を落としてもらわなきゃ困るわ。
私が空に向かって引き金を引いたのを見て、私兵団の一人でリーダー格の男が慌てて駆け寄って来る。
「キャロルお嬢様。勝手に発砲されては困ります。軍事調練への同行は許可しましたが、短銃を携帯されているとは聞いていません。射撃訓練は射線の安全性を確保してからでなければ、やってはいけな……」
「うるさいわね。それくらいわかってるわよ。ちゃんと空に向かって撃ったわ。これなら100パーセント安全でしょ? まさか、空には天使がいるなんて言わないでしょうね」
「そのようなことは申しませんが、空に撃っても軌道によっては地上の人間に当たることがあります」
「そんなの、1000分の1以下の確率でしょう?」
「しかし、ゼロではありません。どうか、今後は無許可発砲はお控えください」
ちっ。
なんなのこいつ。
いちいち言うことがかたいわね。
あの忌々しいクリスタを思い出すわ。
ほんっと、あいつにはイラついた。
いつだったっけ? ある日突然お兄様に婚約者ができたのよね。で、実際に会ってみたら、まあいちいち言うことが癇に障る、真面目くさったつまんない女だったわ。
だから、邪魔してやった。私がデートについてくたびに嫌がってるのはよく分かってた。なのに、物分かりのいい大人ぶって、必死で笑顔を作ってるのが最高に笑えたわ。
大人ぶったやつは嫌いよ。私は大人になんてなりたくない。私は永遠のお嬢様。なぁんでも許してくれる優しいお兄様と、なぁんでも思い通りになるウォード領で、大人にならずに一生自由気ままに過ごすのよ。
あら、話がそれたわね。
そうそう、今は目の前にいる、おかたい兵士の話だったわ。私は気を取り直し、おかたい兵士に手のひらを向けて、『何かよこしなさい』というジェスチャーをしながら言う。
「射撃がダメって言うなら、小さな弓か何かを持ってきてちょうだい。それで狩りでもして遊ぶわ。私、凄く上手なのよ」
「弓はありません。もうずっと前から戦闘の主役は銃です」
「あっそ。じゃ、やっぱり銃で遊ぶわ」
「お嬢様。遊びたいのであれば、お屋敷に戻って同年代のご友人とお戯れになってはいかがでしょうか」




