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第28章 森の質問
森は、交番帰りに、神社へ寄った。
制服のまま。
コンビニの水を、二本、持っていた。
もう、習慣だった。
老師は、石段に座っていた。
武志は、境内の端で、足を揃えて、立っていた。
山田は、今日は、いなかった。
花も、健二も、いなかった。
森は、水を一本、武志に渡した。
もう一本を、老師の横に置いた。
老師は、礼を言わなかった。
ただ、開けて、飲んだ。
「……警察官。」
「はい。」
「何か、聞きたい顔やな。」
森は、少し、迷った。
でも、聞いた。
「武志さんは、危ない人ですか。」
老師は、水を、一口、飲んだ。
「何に対して。」
「……人に、対して。」
老師は、少し、考えた。
「人を、壊す方には、向いとらん。」
森は、息を、少し、吐いた。
「では、安全、ですか。」
老師は、首を振った。
「制度を、困らせる方には、向いとる。」
森は、しばらく、黙った。
警察官としては、やや、困る答えだった。
でも、妙に、正確だとも、思った。
「……それは、取り締まれませんね。」
老師は、少しだけ、笑った。
「せやろ。」
森も、少しだけ、笑った。
武志は、離れたところで、水を飲みながら、
何も言わなかった。
でも、その沈黙は、森には、
だいぶ、信用できるものに、聞こえた。




