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第1話 準備できました?

※2026/08/16:各話で改行位置や一部表現を修正しました。

 内容の変更はほとんどありません。

※2026/08/14:タイトルを変更しました。

 ほぼ同名タイトルの既存作品がございましたので、変更しました。内容に変更はありません。

 ごめんなさい。

・目覚め


どこ?


呼んでる?


まるで、金縛りにあったような。

わたしは理解できなかった。


まるで、夢の中の夢から覚めたような。

わたしはまだ、理解しようとしなかった。


・2回目のヒアリング


お客様のところへ向かう新幹線から外を眺めているときだった。


「会議とかって、うまくしゃべれなくなっちゃうなぁ」

目的地に近づくにつれ焦りが出たのか、つい漏れてしまった。


隣でPCを睨んでいた先輩は、つぶやきを逃さない。

「阿南くんどうした?2回目でも緊張しちゃう感じ?」

「あ、はい、苦手意識とかは特にないんですけど」

「シンコウ機械産業さんとは長い付き合いし、フォローするから」

「そ、そうですね、ありがとうございます」

「この件、せっかく上流から入れるんだ。楽しむくらいでいいよ」


先輩には新人のときからずっと見てもらってる。

普段はガサツに見えるけど、仕事では細かい気配りができる人だ。

でもなんだろう、見透かされているような気もする。


ほどなくして、降車準備を促すチャイムが鳴った。

「今回も俺がメインで進めるし、まあ気楽にいこうぜ」

「はい、ありがとうございます」


気楽にと言われても、正直よくわからないな。

駅から出た直後、先輩につられてタクシーに飛び乗った。


・・・わかってる。

乗っているタクシーの口コミなんか見ても意味はない。

わかってはいるんだけど、気になるものは仕方ない。

その様子に、先輩が少しめんどくさそうに聞いてきた。

「で、それ何をしらべてるの?」

「いや、なんかクセみたいなもので」

「そうなんだ。なんか大変だね」

大変、なんだろうか。

先輩が口コミなんかを気にしているところは見たことはないが。


気楽・大変・気楽・大変。

よくわからないことを考えていると、お客様の出迎えが見えた。

暑い中待ってくれていたのか。


先輩が運転手さんの制止を気にせず飛び出していく。

「ほんと暑いですな!がはは!」


やや大振りな挨拶は、お客様との距離感がわかる。

気にせず懐に飛び込む。そういうとこは、やはりすごい。

運転手さんに謝りながら清算をすませ、あとを追いかけた。


会議室に案内いただく途中、ずらりと並ぶポスターに目が行く。

装具や関連パーツの紹介ポスターだ。

正直製品のことはよくわからないが、多様であることはわかる。

先輩の言う多品種少量生産って言葉が実感できるかな。

生産管理システムの増強を急ぐ理由もわかるというものだ。


よし。

会議は得意ではないが、気合を入れないと。

そう思った先からランチまでは、なぜか記憶がなかった。


「さって昼飯どこいくかな。なにたべようか」


先輩の言葉にとっさにスマホを出してしまう。

「ここは3.2で微妙かもですね。あっちは3.6。どうしましょう」

「いや別にどこでもいいよ(笑)」

「失敗したくはないんですよね」

「ん・・・じゃぁ、あそこでラーメンにしようか」

「あ、はい」


ほらやっぱり失敗するじゃないか。

この自称ラーメンは、塩味のお湯に輪ゴムが浮いてるだけだ。

いや、これをラーメンと言い張る店主がすごいのか?


先輩はラーメンのようなものに、独自のアレンジをはじめる。

「結構いけるぞ?」

あるだけの調味料で解決を図る姿は、ポジティブではある。

でもついでに先輩のアレンジ作品がカバンにはねたりもする。

こういうところが苦手なんだよ。いや、尊敬はしてるけども。


「さて、午後も気合いれて頑張るか!」

「は、はい」


・転機


無事に仕事を終えた解放感からか「メシいこうぜ」と誘われた。

正直、少し疲れている。

そのせいか、ほんのり昭和風味のノリが魅力的に思えなかった。


「あ、すいませんが、今日はちょっと疲れたようでして」

「そうか、いや、無理すんな。すまんな」


先輩いい人なんだけどな・・・

若干の後ろめたさは感じなくはない。

でも今日はさっさと寝てしまいたい気分だった。


さて、先に缶ビールでも買っていこうかと振り向いた刹那、


ゴン


世界が真っ白になった。


・女神


「?」

「とっても興味がありますねえ」


「??」

「なんで、とは思うんですけど」


「めがみさま」

「はいー!女神様ですよー!麗しのアネカ様ですよー!」


「え」

「え、ではないですよー!アネカちゃんでもよいのですよー!」


「あ、はい。女神アネカ様」

「あなたはとてもいい子です。よしよし。うーんそうですねえ」


ブツブツと言ってる女神的な何かの上に、!マークがうかぶ。

同時に、その女神っぽいのがたたみかけてくる。

「なんか色々と気になっちゃう感じみたいですねー」

「はい!では!びっくりスキルで最強、とかどうでしょう!」


前のめりの女神風味がちょっと怖い。

「え、最強?」

「はい!アネカ様は最強なんですよ?」

「なにそれ?アネカちゃん、なにいってんの?」

「なんかもう色々見えちゃう感じです!」

「見える?」

「はい!なにかを選ぶときってあるじゃないですか」

「ありますね」

「どういうのか表示されます!お見通しだよ!って感じです!」


「表示?え、どこに?」

「このあたりです!」


えまって、見通すってことは未来を先読みみたいな・・・?


「それって、最強じゃないですか!」

「はい!アネカ様は最強!なのですよ!」


「それで早速なのですが、いろいろ興味あってですね・・・」


女神感を出す存在は、思案を巡らすような仕草をしている。

しばらくすると、そうだ!とばかりに提案してきた。

「転生先選択特典付きなのですよ!」


転生先って、やはりこの状況はそういうやつなんだな?

エンジニアとして仕事の幅が広がるな、と思ったとこだった。

そうか、やはり天に召された、か。

先輩についていってたらまた違う人生だったのかもな。


さっきから、キラッキラな瞳をした自称女神の視線が気になる。

さぁ!今なのですよ!使うときなのです!ってとこだな。


 ▽ 剣と魔法で大冒険生活

  ロマン度:MAX

  ハーレム度:MAX

  危険度:MAX


あ、そういう表示なんだ。

なんだかレビューサイトぽいというか、え未来とは?


 ▽ 古代遺跡でトレジャーハンター生活

  骸骨とかに頭かじられそう度:MID

  たぶんお風呂入れない度:MAX

  案外地味かも度:MID


まってパラメータが独特すぎない?

統一してくれないと選びにくいんですけど?アネカちゃん?


 ▽ 研究都市でエリートエンジニア生活

  清潔度:MAX

  安定度:MAX

  達成感:MAX

  収入感:MID

  技術度:MID

  活躍余地:MAX

  やり直し度:MID


めちゃめちゃ勧めてくるじゃん?

これっていわゆるホワイトエンジニアじゃん?

もうこれ一択だろ。

てか、やり直し度ってなんだ。ま、いっか。


「決まりました?」

「そうですね。3番目の研究都市ってやつで」


「はーい、ではー!いってらっしゃーい!」


再び世界が真っ白になる。

うすくなる視界の端に、女神風情の微笑みが見えた。


・・・うふふ


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