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第一幕 第六場

 舞台裏のテントの中では、おっぱいコンテスト出場者の六人がテーブルを囲んでなにやら話をしている。よく見てみるとテーブル中央に置かれたコップのニオイを嗅いでいる様子だった。コップには赤色の液体が満たされている。


 村長は信じられない思いでテントの中にいる六人を見つめた。おっぱいコンテスト出場者の中に、おっぱい祭りを中止しろと脅迫状を送りつけた人間がいる。いったいどうしてじゃ?


「なんだこのニオイは」ズルタンは前足で鼻先を押さえた。「鼻が曲がってしまいそうだ」


「あ、お義父様」そう言って村長のもとへ駆け寄ってきたのは猫耳娘のマリィーだった。「どうでしたか私の決意表明?」


「あ、ああ。とてもよかったよマリィー」村長は嘘をついた。「それよりもマリィー」テーブルに置かれたコップに群がる女達を指さす。「あそこでお前達は何をしているのだ」


「ああ、あれですね。あれはザンネちゃんがハーブを混ぜて香水を作ってくれたの。なんでもニオイを嗅ぐだけで疲れを癒す効果があるとか」


 マリィーはそう言うと咳き込んだ。


「大丈夫かマリィー?」村長は心配そうに言った。「風邪でもひいたのかい?」


「ううん。大丈夫よお義父様。ただ咳きが出ただけですから」


 女中のグレーテルが村長に耳打ちをする。「村長様。やはりあのザンネと名乗った女の子が怪しいのでは?」


「早まるでないグレーテル。ここは——」


「これはこれは村長様」


 不意に背後から声がかけられた。振り向くとそこには牧師のハインツが立っていた。


「おっぱいコンテスト出場者へ激励の言葉を掛けに来てくださったのですか」


 村長は話を合わせる。「……ま、まあ、そんなところじゃな」


「わざわざご苦労様です村長様」牧師は咳払いをすると大声を出す。「おっぱいコンテスト出場者のみなさん、ご注目ください。村長様より激励の言葉があります!」


「ちょと、何を勝手に言っておるんじゃ」


 村長は牧師の突然の行動に慌てる。テントにいるみんなの視線が村長に突き刺さる。


「どうぞ村長様」牧師はにっこりと笑顔を見せた。


 村長はしかたなしに話を始める。


「えー、本日はお日柄もよく、みなさんを明るく照らすお天道様も、みなさんの美しいおっぱいを目の前にしては、その顔を赤く染め上げることでしょう。みなさんのおっぱいのすばらしさは、たとえ森の木々の葉が残らず私の舌だとしても、語り尽くせぬでしょう。みなさんのご活躍、ご健闘をお祈りしております」


「村長の激励の言葉、大変ありがとうございました」牧師は拍手をする。


 牧師にならうようにして、他の人たちも拍手を送る。


「それではおっぱいコンテスト出場者のみなさん、ここでお知らせです」牧師が言った。「これよりフリータイムとなります。この時間を使って各自自由に村人達におっぱいのすばらしさをアピールする事が出来ます。制限時間は先ほど説明した通り午後六時まで。それまでにはこの控え室のテントに戻ってきてくださいね。それではこれにて解散」


「それじゃあ、お義父様」マリィーが村長に言った。「私さっそく広場の人たちにアピールしてきますね」テントの外へと出て行く。


「さてと、私も舞台に戻りますか」牧師もテントから出て行った。


「ズルタン」そう言って村長はズルタンに目配せをする。


 ズルタンはうなずくとテーブルにいるコンテスト出場者のもとへ向かう。そしてさりげなくテーブルの周りを回りながら、コンテスト出場者のにおいを嗅ぎ回る。その途中、一人の少女に呼び止められ話を始めた。相手は貧乳少女のリーゼだった。


 テントの入り口に立つ村長とグレーテルが小声で話を始める。


「なあ、グレーテル。なんともおかしな話とは思わないかね」


「と言いますと?」


「おっぱい祭りを中止せよ、と脅迫状を送りつけた輩が、どうしておっぱいコンテスト出場者の中におるのじゃ。祭りが中止になればコンテストも中止になってしまうのに」


「私は最初からザンネと名乗った女の子が怪しいとにらんでいましたので、そのようなことは思いもしませんでした」


 巨乳少女エルゼが咳き込みながら二人の側を通り、テントの外へと出て行く。


「仮にザンネ以外のコンテスト出場者が脅迫状を送りつけたとしよう」村長が言った。「その目的はなんだと思うかね?」


「……皆目検討もつきませんね。コンテストが中止になれば賞金もなくなりますからね」


 爆乳女のイルゼビルが二人の側を通り、テントの外へと出て行く。


「ただし」グレーテルは話を続けた。「金持ちの妻であるイルゼビルならあるいはと」


「なるほど。たしかに金持ちならば賞金がなくても、どうってことないのう」


 貧乳少女のリーゼが小走りで二人の側を通り過ぎていく。その後を追うようにしてズルタンが二人の元へと戻ってきた。


「どうじゃズルタン。誰が犯人かわかったか?」村長が訊いた。


 ズルタンは首を横に振った。


「ダメです。あのテーブルの上に置かれた香水のせいで、みんなに強烈なにおいが染み付いてしまい、判別できませんでした」


 二人はテーブルに残っている幼女ザンネと巨漢の老婆トリーネを見た。


「犯人はわからずじまいか。まいったのう」村長は厳しい顔つきになった。


「村長様」そう言ってテントに猟師の一人が駆けつけた。「大変です。至急お知らせしなければいけないことがあります。ここでは人目がありますので、こちらへ来てください」

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