第二幕 第三十四場
悠然と暮れ行くおっぱい村の広場は、人々の熱気で包まれていた。広場のあちらこちらに灯るたいまつの明かりが、それに呼応するかのように揺らめく。広場中央にある舞台脇で音楽を奏でるピエロ達が雰囲気を盛り上げるなか、牧師が舞台に上がった。
「みなさん大変長らくお待たせしました!」牧師があらん力の限り叫んだ。「これよりおっぱいコンテストの投票となります!」
人々の熱気は最高潮に達した。
「それではおっぱいコンテストの出場者に入場してもらいましょう。まずはこの方からです。エントリーナンバー一番どうぞ」
舞台に貧乳少女であるリーゼが上って来た。そして舞台中央に立つとお辞儀をする。「みなさんこんばんはリーゼです。今回おっぱいコンテストに参加できた事がとても幸せです」胸を張ってどうどうとしゃべるその表情はほがらかだ。「勝ち負けは気にせずに最後まで楽しみたいと思います」そう言うと舞台後ろに下がる。
「それではエントリーナンバー二番の方どうぞ」
猫耳娘のマリィーは舞台に上ると中央に立ち、誰かを探すかのように観客達を眺める。
「どうされましたか?」牧師が棒立ちになっているマリィーに問いかける。
「別になんでもないわ。気にしないで」そう言うとマリィーはスカートの裾を軽くつまみ上げ頭を下げた。「みなさまこんばんはマリィーです。このおっぱいコンテストでは絶対に優勝し、その栄誉ある姿をお母様に見せてさしあげます。だから私を見守っていてくださいお母様」
「それではエントリーナンバー三番どうぞ」
舞台に巨乳少女のエルゼが上って来ると、何もないところでつまずき転んだ。エルゼは照れくさそうに笑いながら立ち上がると舞台の中央に立った。「あーエルゼです。えーとね、ここに立つのは初めてなので緊張してます。とにかく神様に会って子供が欲しいです」
観客達がどっと笑い出した。卑猥な声援がちらほらあがる。
「どうやらエルゼはおっぱいコンテストを何か勘違いしているようだ」牧師が言った。「さすがドジっ娘ですね。それではエントリーナンバー四番どうぞ」
舞台に爆乳女のイルゼビルが腰をくねらせながら現れた。舞台中央に立つと自慢の胸の谷間を強調するかのように前屈みになる。「みんなイルゼビルをよろしくね」そう言うと胸の谷間をさらに強調させようと、胸の下に腕をまわし胸を強く圧縮した。紐がピンと張りつめ切れかかる。「絶対に私に入れてね」そして姿勢を正したその瞬間、紐が切れた。ドレスがするすると足下に落ちていき、イルゼビルはその爆乳を衆目にさらした。
観客達からはかつてないほどの歓声が上がった。
イルゼビルは悲鳴を上げるとその場にかがみ込み赤面する。
「おおっとこれはいけません」牧師が手を頭に当て、さも残念そうに言った。「人前で胸をさらけ出してしまったイルゼビルは残念ながらここで失格だ!」
イルゼビルは歯ぎしりすると胸を隠しながらドレスを拾い上げ、舞台から走り去っていく。
「これはとんだ嬉しいハプニングでした。それではエントリーナンバー五番どうぞ」
しかし誰も舞台に上がってこない。
「エントリーナンバー五番」牧師が言った。「トリーネさん。出て来てください」
「ほほほ」その大声は空から聞こえた。みなが夜空を見上げると、なんと空から巨漢の老婆であるトリーネが腕を組みながら落ちてくる。トリーネは大きな衝撃音とともに舞台中央に着地すると平然とした態度で言った。「トリーネよ。よ・ろ・し・く」ウインクをする。
観客達からは当然のようにブーイングが上がるなか、広場に集まっていた猟師達からは歓声の雄叫びがあがる。
「とんでもない登場でしたね。それでは飛び入り参加のエントリーナンバー六番どうぞ」
舞台に幼女ザンネが恥ずかしそうにしながら現れた。ザンネは舞台中央に立つともじもじしながら言った。「あ、あのーザンネです。五歳です。よ、よろしくお願いします」
「はーい。ザンネちゃんはとってもかわいいでちゅよ。みなさんも私の愛するザンネに票を入れてくださいね。それでは途中参加のエントリーナンバー七番どうぞ」
舞台にメイド服姿の女中グレーテルが現れた。グレーテルは舞台中央に立つとスカートの裾を軽くつまみ上げ、深々とお辞儀をした。「みなさまこんばんは。村長の……元村長のヨハネスに仕えておりました女中のグレーテルです。このたびは途中参加という事もあり、アピール不足は否めませんが、必ずや優勝してみせます。そしてその賞金を手にし、私は羽ばたきたいと思います」もう一度お辞儀をする。「みなさまの清き一票をお待ちしております」
グレーテルが舞台後方に並ぶおっぱいコンテスト出場者の列に加わると、一人の村人が穴の空いた大きな箱を持って牧師の所へやってくる。牧師が箱を受け取ると村人は下がった。
「それではみなさん。これよりおっぱいコンテストの投票に移りたいと思います」牧師がおっぱいコンテスト出場者を指し示した。「残念な事にイルゼビルは失格になってしまいましたが、みなさんにはここにいる方々の名前を投票用紙に記入し」そこで箱を掲げる。「この箱に入れてもらいます。ちゃんとご自身の名前を記入するのを忘れずにお願いしますよ」
突然ピエロ達の演奏が止まった。不意の出来事にみながピエロ達に目を向けた。
一人のピエロが舞台中央に歩み出ると深々と頭を下げた。「投票の前に私からみなさまに一言お礼を申し上げたい。我々は今日おっぱい祭り参加できて非常に楽しかった。何事もなく無事進行したようで、このまま何事もなく無事終えられる事を切実に願ってますよ」
ピエロが舞台脇に戻ると、ピエロ達が再び音楽を奏で始めた。
牧師が気を取り直すかのように咳払いをする。「それではみなさん、投票開始です!」




