第二幕 第二十二場
おっぱい村の外の平野では、ヒツジ達の群れが自由気ままに草をほおばっている。そこへヤギ達の群れがやってきた。
「よおヒツジ」とあるヤギが言った。「調子はどうだい?」
「まずまずさ」とあるヒツジが言った。「そっちはどうだい?」
「俺たちゃ、すこぶるいいぜ」ヤギが誇らしげな顔つきになる。「なんせ人間どもから独立し、野生に帰ったんだからな」
「そいつはどういうことだい?」別のヒツジが質問する。
「馬鹿な人間どもに飼われるなんて馬鹿らしいってことさ」ヤギが答える。「なんで俺たちがあんな頭の悪い人間どもの家畜にならなきゃなんねぇんだ。馬鹿馬鹿しい」
「言われてみればそうだよな」ヒツジは感心したようにうなずいた。「俺たちのご主人なんて狐に騙されて森の中へ行っちまった。今ごろは狼の腹の中に違いねえ」
「やっぱ人間って馬鹿だよな」ヤギが笑った。「俺たちはヒツジで毛が川に流れちまったって嘘ついたら、川の中へ飛び込みやがった。今ごろは溺れ死んでいるに間違いねえ」
「まったく人間どもは殺してやらなきゃダメだよな」そう言ってしれっと会話に参加したのは、巨大狼であるビッグウルフだった。
ヒツジとヤギ達に戦慄が走る。すぐさま逃げ出そうとするも、いつのまにか狼の群れに囲まれ逃げ道はなかった。ヒツジとヤギ達はなす術無く、がたがたと震える事しか出来ない。
「落ち着きなって」ビッグウルフがやさしい口調で言った。「何もおまえらを食べるつもりはねえよ。ただし」そこで間を置く。「俺たちに協力さえしてくれればな」
「何でもします!」ヒツジ達がわめく。「何でもしますから!」
「どうか殺さないでください!」ヤギ達もわめく。「殺さないでください!」
「いい子たちだ」ビッグウルフは笑顔を見せた。「じつは俺たちも馬鹿な人間どもが嫌いでよ、だから今からおっぱい村に乗り込んでよ、皆殺しにしてやるんだ。そう言う事だからお前達は、おっぱい村から人間どもが逃げ出さないよう、村の外で見張ってろ。もし逃げ出そうとする人間がいたら足止めするんだ。そして大声で鳴いて俺たちに知らせろ。いいな」
「わ、わかりました」ヤギ達が声をそろえて言った。
「約束は守れよ。でないと殺すぞ」ビッグウルフは両の手から爪をむき出しにする。「あとそれからもう一つお願いあるんだ。もちろん聞いてくれるよな、ヒ・ツ・ジ・さんたち」
「は、はい。よろこんで」ヒツジ達が声をそろえて言った。
「いいか。動くんじゃねえぞ」ビッグウルフはむき出しの爪を掲げると、ヒツジに向かって振り下ろした。




