第二幕 第二十場
おっぱい村の広場から少し離れた場所で、金持ちのヒルデブラントは川のような用水路にかかる橋の上で息を喘がせていた。広場のにぎやかさとは対照的に、重苦しい表情を浮かべている。
「金も妻も失った。一番欲しかった貧乳少女は手に入らない。なんて残酷な運命だ……」
「どうしたのですかヒルデブラントさん」そう言ってヒルデブラントに声をかけたのは、村長宅の女中であるグレーテルだった。「こんなところで一人たそがれて」
ヒルデブラントがグレーテルに顔を向けた。「ああ、君はたしか村長のところの女中だったね。たしか名前は……」
「グレーテルです」グレーテルはスカートの端をつまみお辞儀をする。「このたびはおっぱいコンテストに飛び入り参加する事になりました。どうか清き一票をお願いします」
ヒルデブラントは力なく笑う。「残念だけど、優勝は妻のイルゼビルに決まってるんだ」
「それはやってみなければわからないのでは?」
「わかるさ。なんせ僕の妻は進行役の牧師をたらし込んで、投票を不正操作するつもりだからね。君がどんなにがんばろうと優勝はできないよ」
グレーテルの目つきが鋭くなった。「どうしてそのような事を私に話したのです?」
「ただの復讐さ。あの女、僕の金を牧師に貢いでいやがる。なりよりも大切な僕の金をだ。それにこの僕をダメ人間扱いしやがった。絶対に許せない」そう言うとヒルデブラントはグレーテルの手を取った。「なあ、あんた村長の女中だろ。このことを村長に伝えてくれ。そして憎きやつらに裁きを下してくれ。頼む!」
グレーテルの口元がにやりと歪む。「ヒルデブラントさん。裁きを村長にゆだねるよりも、ご自身で下すべきですよ。それになにより、今現在村長は命を狙われておりまして、余計な些事にかまっている暇がないんですよ」
「命を狙われている?」ヒルデブラントは困惑する。「いったいどういう事だ」
「何者かは知りませんが、おっぱい村の村長の命を狙う者がいるんですよ。そのせいで村長様は気が動転しております。だから私たちは今現在、猟師達の協力のもと犯人の捜索にあたっています。優秀な人たちです、犯人確保も時間の問題でしょう」そこで一呼吸間を置く。「だからこそ今がチャンスなんですよ。あなたが村長の座を奪うためのね」
ヒルデブラントの顔がにわかに厳しい表情になる。「女中よ、何を企んでいる」
「私は常々思っていました。あなたのような人が村長にふさわしいと。どうですか?」
しばしの間沈黙があった。「おもしろそうじゃないか。くわしい話を聞かせてくれ」
グレーテルは微笑んだ。「ええもちろんですとも」




