第二幕 第十一場
おっぱい村の広場にある舞台の上では、おっぱいコンテスト出場者の六人が並び、司会進行役である牧師がしゃべり続けている。舞台脇ではピエロ達が音楽を奏でていた。
「以上をもちまして」牧師ハインツは言った。「おっぱいコンテスト出場者の決意表明は終了させていただきます。みなさま長い間おつきあいくださいまして大変ありがとうございました。それではおっぱいコンテスト参加者退場となります。盛大な拍手でお送りください」
鳴り止まぬ拍手のなか、おっぱいコンテスト出場者の六人は舞台を下りると、舞台裏に設けられた控え室のテントの中へと入っていく。
「今年は手応えがあったよ。私の優勝で間違いないね」巨漢の老婆トリーネが自信満々に言った。「そう思わないかいエルゼちゃん」
巨乳少女エルゼに化けた女狐が適当に話を合わせる。「そーですね」
爆乳女イルゼビルが鼻で笑う。「そいつは結構な事だねトリーネさん」
「笑うと失礼ですよイルゼビルさん」猫耳娘のマリィーが笑いをこらえながら言った。
「疲れた」そう言って椅子に座りテーブルに突っ伏したのは幼女ザンネだった。「まさか一時間以上も立ちっぱなしとは思わなかったぞ。人間どもの戯れに付き合うのも楽ではないな」
「大丈夫ザンネちゃん」そう言って貧乳少女リーゼがコップに入った水を差し出した。
「おお、気が利くではないか」ザンネはコップの水を一気に飲み干す。「うまい生き返る。よくやったぞリーゼとやら」そこでリーゼに顔を向ける。リーゼの顔は少しばかり青ざめているように見えた。「ん? どうした。顔色がすぐれぬようだが」
「ええ、ちょっと体調がすぐれなくて……」
「それはいかんな。水をくれた礼だ。わらわがなんとかしてやろう」ザンネはそう言うと懐から色とりどりのガラスの小瓶を取り出す。そして空のコップにそれらを少量ずつ入れかき混ぜると血のような真っ赤な色になり、たちまちあたりに甘い香りを広げる。
「なにこのいいニオイは」リーゼは鼻をくすぐる香に興味を示した。
「甘い香りだね。なんだいそれは」イルゼビルがニオイに釣られ、二人のもとへやってきた。
イルゼビルに続き、他のおっぱいコンテスト参加者も続々とザンネのもとに集まる。
「これは各種ハーブをブレンドしたわらわ特製の魔法の香水じゃ」ザンネはコップをテーブル中央に寄せる。「ニオイを嗅ぐだけて疲れを癒す効果がある」
イルゼビルが笑った。「お嬢ちゃんたら、まだ魔法使いごっこを続けるのかい」そう言うと手で扇ぎニオイを嗅ぐ。「でもまあ本当に疲れが癒される感じがするね。気に入ったよこれ」
偽エルゼが咳き込んだ。「私にはこのニオイはちょっとキツいわ」
「そうか、それはすまんかったのう」ザンネがにやりと笑う。「無理に嗅がなくても——」
「おっぱいコンテスト出場者のみなさん、ご注目ください」唐突に牧師ハインツの大声が響き、ザンネの言葉を遮った。「村長様より激励の言葉があります」
一同が振り向くとテントの入り口に牧師ハインツ、おっぱい村の村長、その女中のグレーテル、老いた猟犬ズルタン、それに先ほどまでこちらにいたはずの猫耳娘のマリィーがいた。
「どうぞ村長様」牧師が言った。
村長はあたふたとした様子だった。「えー、本日はお日柄もよく、みなさんを明るく照らすお天道様も、みなさんの美しいおっぱいを目の前にしては、その顔を赤く染め上げることでしょう。みなさんのおっぱいのすばらしさは、たとえ森の木々の葉が残らずワシの舌だとしても、語り尽くせぬでしょう。みなさんのご活躍、ご健闘をお祈りしております」
「村長の激励の言葉、大変ありがとうございました」
牧師が拍手をし、みなに拍手を強要する。しかたなしに一同は拍手をした。
「それではおっぱいコンテスト出場者のみなさん、ここでお知らせです」牧師が言った。「これよりフリータイムとなります。この時間を使って各自自由に村人達におっぱいのすばらしさをアピールする事が出来ます。制限時間は先ほど説明した通り午後六時まで。それまでにはこの控え室に戻ってきてくださいね。それではこれにて解散」
その言葉とともに、一同が再びニオイを嗅ぎ始める。咳き込むのは偽エルゼだけだった。
そんななかリーゼがふと足下に目をやると、そこには愛犬のズルタンがテーブルに集まった人たちのニオイをこっそりと嗅ぎ回る姿があった。
「ちょっと何やってんのよズルタン。失礼でしょう」リーゼはズルタンを呼び止めた。
「あ、いや、これは、そのちょっと……」ズルタンは口ごもる。
二人の間に気まずい沈黙が訪れるなか、偽エルゼが席を立つ。
「やっぱり私には、このニオイだめだわ」そう言うと偽エルゼは咳き込みながら外へと出て行く。
「……まあいいわ」リーゼはズルタンの頭をなでた。「だけど二度とこういうことしないでね」
「はい。わかりました」ズルタンはきまり悪そうに下を向く。
リーゼがズルタンの頭をなでていると、イルゼビルが席を立つ。
「さてと、そろそろ行くかね」そう言うとイルゼビルは外へ行ってしまう。
ズルタンの頭をなでるリーゼの手が震えだした。「ねえ、ズルタン。私優勝できるかな?」
ズルタンは顔を上げリーゼを見つめる。「どうしたんですか。そんな弱気なになって」
リーゼはさみしげな笑みを見せる。「ううん。なんでもない。ごめんね弱音はいちゃって。私が優勝しなくちゃいけないっていうのに」そう言うと小走りでテントの外へ向かう。
ズルタンはリーゼの後を追うも、入り口に立つ村長の前で立ち止まってしまう。
テーブルに残されたのはトリーネとザンネの二人だけになった。
「それじゃあ私も行きますか」トリーネはそう言うと席を立つ。
気がつけば一人テントに残されたザンネは不適な笑みを浮かべた。「そろそろやるか」




