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クズ、異世界でもクズになる  作者: しすは
第1章

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クズ、始まる。

「おい、案内しろ。サキュバスの首をへし折って、極上のメインディッシュにしてやる」

 俺は震えるサキュバスの少女――「食料」をで指し、地下遺跡のさらに深い闇へと歩を進めた。

 道中、恐怖に顔を引きつらせる「食料」の細い二の腕を、俺は気まぐれに掴んではブレードの爪で一切れずつ削ぎ落とし、口へと放り込んだ。そのたびに「ぎゃあああッ!」と最高の悲鳴が響き渡るが、俺の血を植え付けられた彼女の肉体は、即座に肉飛沫を上げて元通りに再生する。刺激的な酸味と、絶望が隠し味となった濃厚な旨味。まさに減ることのない最高の携帯食料だ。

 やがて、遺跡の最奥にある巨大な謁見の間に辿り着いた。

 そこにはダンジョンの王らしき巨体の男が鎮座していたが――そんなものはどうでもいい。

 俺の目を釘付けにしたのは、その椅子の周りに侍っていた、十数人もの妖艶なサキュバスたちの集団だった。「食料」と比べると低いが、漂ってくる空気の匂いだけで、全員が「超一級品の高級食材」だと本能が理解する。

「な、何奴だ……!」と立ち上がるゴミを、俺はブレード状に変形させた右腕の一振りで、言葉ごと首を跳ね飛ばして文字通りゴミのように蹴り捨てた。

 邪魔者は消えた。視線の先には、恐怖に顔を白く染めて逃げ惑おうとする、極上のサキュバス(メインディッシュ)の群れ。

「さあ……お前ら全員、俺の血肉になれぇえええええッ!!」

 俺は理性のタガを完全に外し、獰猛な獣となってサキュバスの群れへと躍り出た。ある者は首をへし折り、溢れ出る新鮮な果実のような血を喉へと流し込む。ある者は柔肌の腹を引き裂き、ねっとりとした濃厚な旨味の詰まった内臓を貪り喰らう。悲鳴、絶望、飛び散る鮮血。その全てが俺の味覚をこれでもかと刺激し、脳を歓喜で沸騰させた。喰えば喰うほど、彼女たちの魔力と生命力が俺の肉体と同化し、内側から底知れない力が満ち溢れていく。

 数時間後。

 謁見の間には、骨の一本すら残らない綺麗な空間と、血の海だけが広がっていた。全てのサキュバスを一人残らず喰らい尽くし、俺の腹はこれまでにない極上の満足感で満たされていた。

「ふぅ……美味かった。御馳走様だな」

 口元に付いた血を舌でペろりと舐め取り、俺は満足げに息を吐く。これほどの極上肉を一気に喰らったのだ。俺の肉体と能力は、以前とは比べ物にならないほど強大に進化している。

 そんな血の海の中心で、唯一、五体満足な状態で床に転がり、ガタガタと震えている者がいた。「食料」だ。彼女は、仲間たちが目の前で文字通り「家畜のように解体され、貪り喰われていく地獄」を最初から最後まで見せつけられ、恐怖のあまり完全に精神が崩壊しかけていた。

「お前は、俺の血を分けた『不死身の携帯食料』だ。どんなに小腹が空いても、お前だけは絶対に減らない。……さあ、次の街へ向かうぞ。次はどんな美味い食材が――」

「――そこまでだ、化け物。……いや、貴様は『あの時の男』か!」

 突如、天井を突き破って謁見の間に降り立った影があった。燃えるような赤髪をなびかせ、眩い聖剣を構えた男。かつて俺の前に立ち塞がり、その圧倒的な力で俺をあと一歩のところまで追い詰め、殺しかけてきたあの因縁の赤髪の勇者だった。

「勇者……! あはは、思い出したぞ! あの時はよくも俺を殺しかけてくれたな! だが今の俺は、あの時とは比べ物にならないほど進化している! お前のその美味そうな肉、最高のデザートとして喰らい尽くしてやる!」

 俺は進化した超再生の肉体を爆発させ、かつて自分を死の淵へと追いやった勇者へと牙を剥いて飛びかかった。

 ブレードの爪と聖剣が激突し、凄まじい衝撃波が謁見の間を揺らす。俺の爪が勇者の肩を切り裂き、その鮮血が口に飛び込んでくる。……美味い! 強者特有の生命力に満ちた極上の味が脳髄を痺れさせる。

 だが、かつて俺を殺しかけた男の力もまた、全盛期を超えていた。俺の超再生が傷を癒やす速度を上回る、神速の剣閃。聖なる光を纏った刃が、俺の肉体を何度も何度も、容赦なく切り刻んでいく。

「がはっ……あはははは! 素晴らしい! もっと、もっと刻め! 喰い甲斐があるというものだ!」

「笑うな……! 貴様を…」

 勇者の瞳に宿る、絶対の正義と決意。彼は俺の異様な再生力を見抜き、殺すことではなく「別の手段」を選択した。勇者が聖剣を床に突き立てると、謁見の間の床に巨大な黄金の魔法陣が浮かび上がる。

「光の鎖よ、悪しき魂を縛れ! 【ダークバイ】!!」

「なっ……身体が……動か、ない……っ!?」

 魔法陣から無数の光の鎖が這い出て、俺の四肢を、肉体を、驚異的な力で縛り上げていく。超再生の力をもってしても、この神聖な封印の力を破ることはできない。肉体が徐々に石のように固まり、感覚が遠のいていく。

「クソが……俺を、俺を封印する気か……っ!」

「大人しく眠れ怪物。二度と目覚めぬよう、この遺跡ごと地中深くへ封印してやる」

 赤髪の勇者が厳かに呪文を唱え終えると、俺の視界は完全に黄金の光の中に包まれ、身体は完全に身動きの取れない闇の底へと沈んでいった。

 ――だが、俺は絶望などしていなかった。

 石化し、闇に閉ざされていく意識の境界線で、俺は確かに見たのだ。

 俺の足元で、同じように光の鎖に巻き込まれ、一緒に封印の闇へと引きずり込まれていく「食料」の姿を。彼女は恐怖と絶望に顔を歪ませながら、俺と共に永遠の闇へと落ちていく。

 あはは……あははははは!

 俺は心の中で狂ったように笑った。

 勇者よ、かつて俺を殺しかけ、今また俺を封印したお前は勝利したつもりだろう。だが、俺の隣には「不死身の携帯食料」が一緒にいる。

 これから始まる何百年、何千年の退屈な封印の時間。俺はこの暗闇の底で、何度でも、何度でも元通りに再生する「食料」の極上の肉を、飽きることなくじっくりと貪り喰らい続けるだけだ。

 そしていつか、この封印が解けるその時まで。

 俺の、終わらないディナータイムが幕を開けた。

終了、なんか終わり方が変でごめんなさい。この続き…とは言わないけど、少し続きが今度始まります。主人公は変わるけどね。

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