第2羽 セル
(うーん、どうしよう…)
「頼む、娘はまだ16歳なんだ…せめて大人になるまではそばで見守らせてくれ!妻も病気で3年前に他界している。私のせいで…私のせいであの子は1人ぼっちになってしまった…」
そう言って泣き始めた人に、天国まで来てください、なんてこれ以上言えるわけない。
悪魔は魂を地獄に無理やり連れて行くけど、僕たち天使にはそれができない。
というか、天使が嫌がる人を無理やり連れて行くのは不味いと思う。絵面的に。
「死んじゃったら天国に行くのは昔からのルールなんだよね。そうしないと現世に亡くなった人の魂が溢れかえっちゃうし…」
「ほんとうにすまない…あと4年…いや、せめて2年待ってくれないか」
「そう言われても…」
さっきからずっとこの繰り返しだ。
(やっぱり、未練ある人はなかなかついてきてくれないなぁ。やっぱ、中級天使に頼むしかないか)
多分、僕にはこの人を天国までつれていくことはできない。
できるだけ早くセラフィム様の近くで働けるよう、もっと仕事を成功させたいのに…
自分の力不足を実感しつつ小さくため息をつき、コンパスを出す。
僕らができなかった仕事は、下級天使より実力のある中級天使に回されるのだ。
僕に仕事として割り振られた人の情報ページ、つまりこの男の人のページの右上にある、申請マークを押す。
もう僕にできることはない。
男の人にペコリとお辞儀をし、翼を使って上昇する。
ふと、こちらに飛んでくる影が見えた。
それが誰かわかった瞬間、つい飛び寄ってしまう。
「セル!久しぶりー!」
「ふふっ、久しぶり。シグレは今日も元気だね」
そう言ってにっこり笑っているのは中級天使のセルだ。
一応僕の上司だけど、生み出されたばかりの僕に色々教えてくれた兄のような存在でもあるし、1番の友達でもある。
セルは、肩にかかるくらいのさらりとした髪をもっている。同じ白髪でも、天パで毛先がはねてしまう僕とは大違いだ。目の色も、暗い青色の僕とは違って澄んだ翡翠色をしている。
セルは綺麗だと言ってくれるけど、暗くて天使らしくない目の色は昔から僕のコンプレックスだ。
そんなことを考えながらセルのことを見てると、あることに気づく。
「あれ、セルの翼また大きくなってる?」
天使の翼は、仕事をしていけば少しずつ大きくなる。
厳密には、羽の枚数が増えているだけだけどね。
天使にとって翼は飛ぶためのものでもあり、悪魔と戦闘になったときに戦うためのものでもある。
あんまり多くはないけど、天使と悪魔は相性が悪くて定期的に喧嘩が起こるらしい。
いつ喧嘩になってもいいように羽を使う練習はみんなしている。
ちなみに羽をどう使うかは天使によってバラバラで、僕は弓に変えて使っている。選んだ理由は近距離で戦うのが怖いからだけど…別にいいよね!
羽を武器に変えたりして戦う天使にとって翼の大きさは威力とか強度に直結するから、翼の大きさが大きいほど階級が上がるのだ。
僕は全然大きくならないのに、セルの羽は中級天使になってからどんどん大きくなってる気がするんだよな…
「やっぱセルってすごいよなぁ…!」
「そんなことないよ。僕もいつかシグレに抜かされちゃうかもしれないし」
セルは照れくさそうに笑ったあと、そう言って僕の頭を撫でた。
「やっぱセルは大人だなぁ。あれ、そういえばセルがここにいるってことは…もしかして僕の仕事を引き継ぐのってセル!?」
「うん、そうだよ」
「うわー、またセルに任せることになっちゃった…ほんとごめん!」
両手を勢いよく合わせて全力で謝る。
上司なのもあって、僕ができなかった仕事はセルに回されることが多い。
だから毎回難しいのをセルにお願いすることになっちゃうんだけど、忙しいの知ってるから申し訳ないんだよな…
「大丈夫だよ、それが僕の役目なんだし気にしないで?それに、いつものことだしね」
セルがいたずらっぽく微笑みながらそう言った。
「つ、次からは自分で頑張るし!」
「ふふっ、頑張って。じゃあ、僕はそろそろ行くね」
「うん、またねー!」
セルに手を振ったあと、僕も急いで次の人のところへ向かう。
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天使の羽の使い方は色々あるけど、一番多いのは羽を集めて武器の形にする方法です。
ちなみに1度羽を使ったらそれ以外の使い方ができなくなるので、初めて羽を使うときに弓を作ったシグレは今後も弓しか作れません!
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