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68…文化祭④喜びの裏側で

「通っていた時はそれなりに来ていたんだよね。今日も美味しいね」


「え?! 父上が学食に来てたんですか?! 午前か午後か、どちらかしか来てなかったものだと」


「それなりに真面目に通ってたからね?!」


 オウカ公爵父兄の会話を、リリーがにこにこしながら聞いている。



 皆で学食、と言ってもコース料理が出てくる高級レストランの様な所で、リリーたっての希望で"5人で"昼食を取ってる。


 カヨもジュンも、リリーが言い出した時は口を押さえたい衝動に駆られた。抑えた自分達を褒めてやりたいと思ったとか。


 緊張でどうにかなってしまいそうだった2人だったが、食事の所作が流石公爵家という3人に見惚れてしまい、見事に緊張を忘れた。

 それこそ、物語を目の前で見ている様だったからだ。きっと今の状況は現実であるはずがない!! と脳が勝手に判断してくれたらしい。




 食後、リリー達はチームが今どんな感じなのか訪ねてみることにした。

 勿論、購入を特別に予約しているオルゴールを買うためオウカ公爵と小公爵も一緒に。



「カヨさん、ちょっと前から俺は現実に生きていると認識出来ていないんですが」


 オウカ公爵家が仲良く話をしている隙に、ジュンはカヨに小声で話かけた。


「あら奇遇ね、私もよ……でも、もうどうせなら楽しみましょう。失礼がなければ大丈夫そうよ。公爵様や小公爵様のような方と近くに居られる機会なんてもう二度と無いでしょうし」


 ……なるほど!!


 今度商談の時に来なさいとオウカ公爵に言われた事も忘れて、ジュンは納得しようとした。





「え、もしかして、もしかしなくても……もう完売したのかしら?!?!」


 リリーは嬉しくて、カヨとジュンをまとめて抱きしめた。


 オウカ公爵父子はにこにこしながら見ている。

 どうやら、リリーへ邪な気持ちを持っていないと判断されれば敵認識はしないらしい。

 が、何故かタツァックがリリーを離しに行った。


「2人が失神しそうだよ」


 リリーは力を込め過ぎたらしい。




 それを面白くなさそうな顔をして見ている者が2人。



「何だか楽しそうだな」


 用事を終わらせたユウが戻って来た。挨拶は要らないと手で制止しながら。

 リリーが抱きついていたのを見てしまい、ユウは余裕を持ちたいけれどやはり心穏やかではない。


 ……のを見てほくそ笑んでいるオウカ公爵も、ユウは気に入らない。


 タツァックはやれやれといった感じで、父を窘めた。


 ユウはリリーの手を取って挨拶のキスをした。

 完売でテンションが上がっているままのリリーは、ユウに抱きついて頬にキスを返した。


 すかさずタツァックがリリーを止めようと近付いたら、兄にも抱きついて頬にキスをした。


 ニコニコしているリリーに、誰も近寄れなくなってしまった。

 膠着状態が少し続いた……



「リリ、ストップしなさい。人前だよ」


 完全に濡れ衣だが……ユウにキレそうになるのを我慢して、逆に静かになったオウカ公爵に窘められリリーは冷静さを取り戻した。


「申し訳ありません……」




 そして、もう1人は学園の屋上に。


 胡座をかき片膝を立てて、頬杖をつきながらリリーの楽しそうにしている姿を見ている。


 真黒な剣を片手に、冷めた表情で。


ーー危なかった。


「煩い。お前お喋りだよなー。話し相手が欲しいからって解呪するんじゃなかった」


 話しながらリリーから目を離さない。


『ああ?! お前の方がよく喋るだろーがよクソガキが』


「口も悪いし、剣のくせに人に詳し過ぎるし、何者なんだ」


『………………言えねーみてーだ』


 言おうとした事が意外で、一瞬驚いてリリーから目を離して剣を見てしまった。


「誓約か?」


『そんなもんだな。お前は、俺が有るのに欲のままに生きねーのか』


 リリーに目を向け直すと、リリーは平民のメンバーにお礼を言っているところだ。


「リリを手に入れるにも、強行突破じゃ……厳しいな。リリに敵うかどうか」


ーーあのテンションのままだったら、リリは全員にキスしてしまいそうだったな。


『はっ! そんな強いのか、あのご令嬢は』


ーーそんな事になったら、俺はオウカ公爵以上にやばかったかもしれない。


「異常なくらい強い。まぁ、そこも良いんだけど」


ーーキスされた人間全てを即刻どうにかしてやろうと思っていたから。


 剣を持っているアキラは、次第に手に力が入っていく。


『お前もなかなかやべーな』


 そう言われて、ははっと諦めたように笑う。


「あー、リリ達が優勝かな。よし、満足した!!」


 もうこれ以上ここに居られないと思い、勢いよく立ち上がって腰に手を当てた。

 リリーから目が離せられないようで、ずっと見ている。



『どーせまた寝顔を見に行くんだろーが』


「……本当煩いな」



 そのまま跡形もなく消えていった。


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