43…招かれざる客
オウカ公爵家に連絡がいき、直ぐにオウカ公爵とリリー、2人の護衛としてパクツが皇城に到着した。
クレス騎士はタツァックの護衛として公爵家に残った。
今は皇帝とユウと5人で話をしている。
セイチが見てきたオウカ公爵家からの奪取した物、その時の人物、そこから何処へ行ったか……
「とりあえず魔剣を封印しないとまずいな」
このユウの話を受けて、リリーは説明を始めた。
「やり方は、先日聖剣から聞きました。最も簡単なのは、叩き折ることですって。複雑なのは……聖剣が覚醒してから少ししか経っていないので、今は無理だそうです」
「そうか。魔剣が出た時点で、リリー嬢に頼んでも良いか? すまないな。コガヤ公爵家にアキラがいるから下手な事ができない」
オウカ公爵は、何を言っているんだかという顔をして皇帝を見ている。
「"皇帝"は簡単に謝らないで。とりあえず、コガヤ公爵が得ようとしていた物はわかったけど、最終的にそれを使って何がしたいのか未知な今は、幾つかの予想に対して備えるしかないんだよね……」
オウカ公爵が予想しているコガヤ公爵の目的は、皇城の壊滅、もしくはオウカ公爵家の衰退のどちらかだ。
もしかしたら、両方かもしれない。
「アキラは連れ戻せないのか? そうすれば動きやすくなるだ」
「 見 ツ け タ 」
マリルの声が響いた。
瞬間、全員が青褪めて声の方へ目をやった。
ユウの真隣だ。
5人で話していた部屋は、防音と防魔の魔法がかけられているため、簡単に入ってこれる場所ではない。
誰もこの現実を受け止めきれていない。
マリルは満足そうに辺りを見回し、リリーが居ることに気付きニヤリと笑った。
そして、ユウを掴んで、一瞬で消えてしまった。
「嘘?!! ユウ!! ユウ!!!!」
リリーは顔面蒼白になって手が震えている。
「マリル!! 待ちなさい!!!!」
瞬時に部屋を飛び出そうとしたが、直ぐに反応したパクツに止められた。
オウカ公爵や皇帝では、リリーを止ることは出来ない。
「嫌っ! 離して!! ユウがっ! ユウ!!!!」
バタバタしながら叫び続けているリリーを、パクツは抱きしめるようにしてやっとのことで抑えて、耳元で小声で宥める。
「待て! 何処に居るかの情報を得てからだ。すぐ来る。体力の無駄使いはすんな」
パクツに抑えられていても、リリーは感情が昂ぶりすぎて、息も乱れ、涙も溢れている。
「大丈夫だ。あいつは弱くない。信じろ」
リリーは嗚咽しながら、震える手でパクツを強く抱きしめ返して頷くしかなかった。
パクツは自分の呼吸を整え、自分から離れず蹲るリリーを抱きかかえ、ゆっくりとソファに座った。
リリーには何時間にも感じられたが、それから数十分後に、マリル達は謁見の間に現れたとの連絡が入った。
やっとリリーが冷静になれて、パクツの腕から顔を上げた頃だった。
付近に騎士達が居たため、ユウと共にいるらしい。
「こっちは部隊を整える時間も無いし、即席の部隊よりパクツだけの方が絶対に良いから……少数精鋭で、僕とパクツとリリーで行くよ」
皇帝は残って外側の指示をすることになった。
「すまないな……任せた」
「僕は危ない橋は渡らないから。僕が行くってことは、大丈夫ってこと。だから安心してて……皇太子殿下を迎えに行ってくるよ」
皇帝は頷き、3人が部屋から出ていくのを見守った。
リリーは髪飾りを解呪して、聖剣を持って向かっている。
一連の流れを髪飾りになって見ていた聖剣は、黙って様子を伺っている。
◇
謁見の間に入るための階段が見えてきた時、階段付近に人混みができているのが、3人の目に入ってきた。
お互いを認識した途端に、向こうは臨戦態勢に入ったので、きっと味方ではないということは分かる。
それにしても、階段下の広間を大半は埋め尽くすくらい、なかなかの人数が居る。100人近くだろうか。
それなりの腕のある者もいるようで、パクツは小声で「こりゃ軽くは無理だな」と苦笑いしながら呟いている。
囲まれながら、穏やかにオウカ公爵はリリーに話しかけた。
「リリ、参戦を許可しないよ」




