42…何かが始まる
「そっカ、あナたの言ウ通りよ、皇城に行ケば良いノよ。エッケンノマ、ね……」
「え? 誰を連レて行クの? ソう、わカった。スぐ行こウ」
マリルは魔剣所有者にしか扱えないという、瞬間移動を使って、アキラの眠る部屋へ移った。
アキラは強固なシールドで守られていて、回復と保護をかけられているように魔法石が置かれている。
それを覗いて、マリルはニタッと笑った。
「あハは! あキラ様ハ、私の婚約者なノよ」
「? ぐウぜんカ? サあ……そレは、わカらないケど」
「早ク、早く、オ姉様を負かシたい」
強固にされているシールドをいとも容易く破り、マリルはアキラを掴んで、一緒に瞬間移動で消えた。
コガヤ公爵の元に、マリルの部屋とアキラの部屋を監視していた従者が来て、2人が消えたことを伝えた。
従者が出ていった部屋で、コガヤ公爵か独りで喋り始めた。
「第一皇子を連れて行くのは想定外だったが……これで皇城は混乱するだろう。後から連絡を入れよう。急に錯乱したオウカ公爵令嬢が現れて連れて行かれたと」
冷静に見えるが、全てが自分の思う通りになっているこの状況を楽しんでいるかのようだ。
「そして、オウカの勢力が弱まれば尚良い……ああ、魔剣を援護するよう手配をしなければ」
コガヤ公爵は電波魔法であちらこちらに連絡を取り終え、スモス子爵も指揮に向かわせた。
そして、今は激しく雨の降る景色を静かに見ている。
コガヤ公爵は不気味なまでに、普通に何事もなかったかのように執務に戻っていった。
その頃、顔色の悪いセイチが何かを決心して皇城へ入っていった。
「皇太子殿下に、ご挨拶申し上げます……」
セイチはなかなか頭を上げられない。不安で、どうしたら良いのかまだわからない。
父親が謀反を企んでいるということを知ってから、どう振る舞えば良いのか、父の味方でいるべきか、止めるべきか。
自分は何なのか、色々と考えた結果が、今だけれども。
例えどちらに反旗を翻しても、自分の未来が崩れてなくなってしまうだろう……ならば、知らない体で居るのが良いのではないか……
セイチは最近この事ばかり考えていた。
「父と、コガヤ公爵、魔剣の、ことについて、お伝えしたいことが、ございます」
でも、何よりも、堂々と人前にリリー様の前に立てないことが一番嫌だ。
セイチは、真っ直ぐユウを見据えた。
◇
「ちち、っ皇帝、陛下、早急にお話があります。人払いを。オウカ公爵を、あとリリーも呼んで下さい」
ユウが急いで皇帝の元へやってきた。セイチもいる。
「? どうした……お前は確か、スモス子爵の」
「はいっ、皇帝陛下に、ご挨拶、申し上げます」
2人共走ってきた所為で息が切れて、セイチは緊張もあり上手く話せない。
皇帝は2人の様子を見て、直ぐオウカ公爵へ連絡させ、ユウから話を聞いた。
「スモス子爵令息よ、よく言ってくれた。それが本当なら最悪だが……早く知れたので対応が出来る。助かった。礼を言う」
セイチは涙ぐみながらお辞儀をするので精一杯だ。
「君の後々は心配しなくて良い。悪いようにはしない。ただ、申し訳ないが、皇城内で監視下に居てもらうことになる」
セイチは頭を下げたまま声を絞り出した。
「ありがとうございます。勿論、どんな処遇でも受ける所存です」
◇
オウカ公爵邸では、リリーがどうにかアキラの所へ行けないかと直談判している。
リリーに激甘なオウカ公爵だが、今回ばかりはコガヤ公爵邸へ近付けることは出来ないと、否を貫いている。
「だったら、お父様も一緒に行きましょう。旅行みたいで楽しいかもしれないわ」
うぐ……
愛娘と一緒に旅行とは非常に楽しそうな響きだ。
いや、ダメだダメだ。
後一押しだろうかと、リリーはオウカ公爵の顔色を見ている。
そんなやり取りをしていると、皇城からの2人への召喚の知らせが届いた。
オウカ公爵が急に表情を変えたので、リリーは何か起こり始めていることだけは、わかった。




