お邪魔虫
「最高位たちはきっともっと違うところでいろんなものを守ってくれてた。だから髪くらい……」
髪ぐらいとはいうが、その髪はファウが褒めてくれてから伸ばしていたのだ。
キョウの中でもまだ割り切れてない部分があった。
そんなキョウに、ファウは愛しい気持ちがこみあげる。
「……わかった」
ファウは立ち上がりキョウを抱きしめ、その頭をなでる。
「ムカつくけど、許す努力をする」
「それと、きっと、リゾとレンがあの場所を守ってくれてたんだよ、そんな気がするんだ……」
* * *
フライパンの上で卵が焼ける音と匂い。
――美味そうなにおい……
起きたクスナが見たものは、仲睦まじくキッチンで食事の準備をするキョウとファウの姿だった。
二人は楽し気に「卵が焦げそう」だの「おにぎり作ってみたい」だの「形が難しい」だの、新婚さんのようなやり取りをしていた。
昨夜、クスナは、リゾが雨を降らせるためのサポートをした。
体力と魔力ともに疲労が激しい。
朝になって起きたが、まだ頭がまわっていない……
――ここは? キョウの家……?
キョウが夜の砂漠を歩いて、自分をおぶって運んでくれたのは覚えてる。
その途中で眠ってしまったようだ。キョウに家の運びこまれたんだろうけど、なぜここにファウがいるのだろう?
そこでクスナは自分がとんでもないお邪魔虫なんじゃないかと思い至り、焦る。
「あ、起きた」
と、キョウがクスナに気づいた。
「私はこれで」
クスナはベッドからさっと起き上がる。
そのまま帰ろうとすると、ファウに止められた。
「このままいてくれ。昨夜のことが聞きたいから」
と、ファウ。
「朝食すぐできるから」
と、キョウ。
二人は仲良くテーブルに食器を並べていた。
クスナは居心地が悪いながらも、そんな二人を見守るしかなかった。
* * *
朝食は大根のスープに、おにぎりと卵焼きだった。
「で、導師はなぜ、あの場所に行ったの?」
おにぎりを食べながら、ファウがそんなことを聞いた。
クスナは困った。
ケイに口止めされている。