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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第四章 希望の挑戦者
36/63

その1 雑賀と噂と放課後と

 最近学校で噂になっている事がある。

 転校生が『破滅の女王』を落としたという話だ。

 噂に違わず二人は食堂で一緒に食事を取るようになり、下校も一緒に帰るようになった。

 今まで誰も寄せ付けず、孤高を誇っていた女王をどうやって落としたのか問いかける者もいた。

 君は落とし神の能力(ちから)を持つのかと問いかける者もいた。

 そんな問いに雑賀はこう答えた。

 「普通に話をして、一緒に遊んでいたら自然と友達になっただけだよ」

 その答えを聞いて、デイジーと友達になろうとした生徒が門前払いを喰らったという噂もまた流れた。

 そんな噂を渦中の二人は気にも留めなかった。

 そして四月最後の水曜日、学校の玄関でデイジーは雑賀を待っていた。

 この国では土日は休日、水曜日は半ドンである。

 今日の午後も二人は一緒に過ごす予定であった。

 「雑賀君、今日もデイジーさんの所に行くの?」

 授業が終わり帰宅の準備をしている雑賀に朝顔が声を掛ける。

 「ああ、そうだよ。朝顔さんも一緒に行くかい?」

 雑賀はにっこり笑って朝顔を誘った。

 「いや、あたしにはちょっと敷居が高いかなー」

 両手を胸の前で振って朝顔が拒絶の意を示した。

 「ずっと思っているんだけど、デイジーは皆が言うような怖い人じゃないよ、素直に友達になりに行けば良いと思うよ」

 「はん、みんなお前のような能天気野郎じゃないのさ」

 横から天野が口を挟んだ。

 「リン、そう言うお前はどうなんだよ。お前からもデイジーは怖く見えるか」

 「怖くはないさ、だけど私はそんなお友達関係に付き合う暇がないのさ」

 フンと横を向いて天野は答えた。

 「竜ちゃんは今日もバイト?」

 「ああ」

 朝顔の問いに素っ気なく天野が答える。

 「バイトって、この国は中学生からバイトして良いの?」

 今までの環境との違いに思わず雑賀は問いかける。

 「んー正確にはボランティアかな。お金にはならないけどポイントが貰えるの。ポイントはお金になるから結局はバイトと同義って事ね」

 天野の代わりに朝顔が答えた。

 「ああ、そういえばマドレーヌと一緒に聞いた記憶がある」

 雑賀は先日の補習の際に鳳仙先生から聞いた内容を思い出した。

 この国では未成年でもボランティアと称されるバイトでポイントが貰えるという事を。

 「そういうこった。お前達も遊んでばっかいないで少しは将来の事を考えな」

 そう言って天野は颯爽と教室を出て行った。

 「リンって結構素っ気ないよな」

 朝顔の方を見て雑賀は言う。

 「うーん、ちょっと違うかな。あたしの見立てだと雑賀君は自分が心の内を素直に出す事が得意なので、逆に他人の心の中を探るのが苦手なのかな。だから竜ちゃんの事をそう思っちゃうんだよ」

 「その言い方だとリンは実は情熱的で友情に厚いヤツみたいだな」

 「うん、そうだよ。竜ちゃんに助けられた子って結構いるよ。人望も結構厚いんだから」

 「そうなのか、じゃあデイジーと気が合うかもな」

 「うーんどうだろ。あの二人、心の奥底は似てても環境が結構ちがうからね」

 雑賀はそう言う朝顔の姿がちょっと寂しそうに見えた

お読み頂きありがとうございます。

久々に主人公の話です。

今回の小ネタは「落とし神の能力」が神のみぞ知るセカイですね。

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