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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第三章 汚泥の帰宅者
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その7 報復の傍観者

 ディジー邸は学校から少し離れた丘の中腹にある。

 その門の前に天野は立っていた。手には一通の紙が握られている。

 決意を込め、天野は呼び鈴を鳴らす。

 音は聞こえない。門から館までの距離があるからだ。

 数秒も経たず天野の目の前に壮年の男性が前触れもなく姿を現す。瞬間移動(テレポート)で現れたのだ。

 「こんにちはお嬢さん。わたくしはこの館の執事を務めておりますパーカーと申します。本日はどういった御用でしょうか」

 「私の名は天野、デイジーに届け物だ。この果たし状をな」

 天野はその手に握った紙をパーカ―へ突き上げる。そこには『果たし状』と筆書きされていた。

 「これは古風な。確かに承りました」

 仰々しくパーカーはその果たし状を受け取る。

 「あと、大変申し訳ないのだが、決闘の立会人を頼みたい。あなたに」

 「わたくしでございますか!?」

 「ああ、公平はジャッジを期待する」

 パーカーは天野の顔をじっと見る。その眼からは決意に満ち勇気を持って立ち向かう意思が感じられた。

 「わかりました。お嬢様に報告の上、了解を得られたらの話ですが」

 「頼みます。あと、デイジーに伝えてください。『せいぜい、めかしこんで来るんだな』と」

 「確かに承りました」

 パーカーは一礼をする。そして、上体を再び起こして言った。

 「ところで天野様はお嬢様のお友達ですかな」

 「違う! 宿敵(ライバル)だ!」

 そう言うと天野は後ろを向き、その場から走り去った。

 

 

 「という次第です。お嬢様」

 デイジーの居室に移動し、果たし状を渡すとパーカーは玄関前の顛末を伝えた。

 「そうですの、彼女も身の程をわきまえておりませんのね」

 デイジーは果たし状に目を通す。そこには『賽投川(さいとうがわ)の河原、第一野球広場に十五時にて待つ』と記されていた。

 賽投川とは第二中学校とデイジー邸との間にある川である。河原にはいくつかの運動場があり、決闘場に指定されたのは、そのひとつである。

 「それと、当日のジャッジは不肖ながら、このパーカーに務めるようお願いされました」

 「それは、彼女にとって不利なのではなくって」

 「第三者からみればそうでしょうな。ですがこのパーカー、たとえお嬢様の闘いであろうと審判に私情を挟む事は致しません。いかがでしょうか、お嬢様」

 「よくってよ。わたくしも贔屓されようとは思いませんわ」

 「あと、伝言がございました。『せいぜい、めかしこんでくるんだな』との事です」

 その言葉にデイジーの眼光が鋭くなった事をパーカーは見逃さなかった。

お読み頂きありがとうございます。

すみません、今回は少し短めです。

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