変化②
エイミーはエイミーらしく、結構照れが残った状態で必死にアピールしてきた。
燐が郁人を襲った日の夜はエイミーが隣で寝ることになっており、、燐の事もあったため、今度はこそは、と郁人も警戒していた――はずだった。
しかし、目が覚めた原因は口の中に入る違和感。
鼻で呼吸は出来るがそれでも酸素が足りず、苦しくなって、目を開けると、
「んむっ!?」
目を開けると目の前にはエイミーの顔があった。
そこでキスされていると分かる。
普通のキスではなく、恋人同士がやるディープキスだと分かると、郁人はエイミーの肩を掴み、引き離す。
「エイミーもかよ」
「むっ! 私だと嫌なのですか? 昨日は燐にばかりあんなことさせておいて……」
「あれは無理矢理だろ?」
「でも羨ましいのですわ。だ・か・ら・つ・づ・き」
エイミーは顔を真っ赤にしながら、郁人に再びキスする。
そして躊躇わずに郁人の口の中に下を入れて、郁人の舌を玩ぶかのように自らの唇を動かす。
郁人もそれに身を任せるようになってしまい、エイミーのキステクに翻弄されてしまい恥ずかしくなってしまう。
昨日の燐とは違う気持ちよさが伝わり、口の中から聞こえる唾液の混ざる音が妙に艶かしく聞こえ、胸の高鳴りが押さえきれなくなる。
二人に悪いと思い、突き放そうと思っていても、なぜか突き放す事は出来なかった。
「はぁ……大胆過ぎましたか?」
息がもたなくなったらしく、エイミーが唇を離す。
郁人は自分の唇とエイミーの唇から繋がっている唾液の糸に動揺し、慌てて唇を拭う。
「あ、酷いですわ。一生懸命頑張ったのに……」
「ご、ごめん。俺には刺激が強すぎたからさ。でも気持ちよかったのは確かだって!」
「ふふっ、まさかあなたからその言葉が聞けると思わなかったので、嬉しいですわ。ねぇ、今度はあなたからして欲しいですわ」
「えぇ!?」
エイミーからおねだりするのは珍しい事なのでしてあげたかったのは山々だが、さっきのキスしてる場面を思い出すと躊躇ってしまう。
今までされる側だったので、いきなり言われてもどんな風にキスをしたらいいのか分からず、郁人が悩んでいるとエイミーがクスクスと笑い始める。
「分かってましたわ、出来ない事は。ごめんなさい、意地悪言って」
「ごめん」
「良いですわ。やっぱりあなたは私から襲わないといけないのかしら?」
エイミーは顔をさらに赤くさせながら、郁人の首筋にキスする。
ただ触れるだけのキスだったが、郁人にはそれでも身体を跳ねさせてしまう。
「可愛い」
そのまま舌を首から顔の方へと舐めあげていく。
くすぐったくて、郁人はゾクゾクと身体を震わせた。
声が出そうになるのを必死に耐えるも自分の口から熱い息が軽く漏れてしまう。
くすぐったくて止めて欲しかったが、その行動を突き放す事は出来なかった。
エイミーも郁人が反抗しないことを良いことに、そのまま舌を這わせて耳の付け根までもって行き、口を離す。
そして耳元で、
「もっとシて欲しいで――うぷっ!!」
エイミーは言葉の途中で燐の方へと吹っ飛んでいった。
郁人は訳が分からなくなり、その原因である人物――メアリーを見てみると眉間に怒りマークを出しいてた。
なぜか頬を人形に引っ張られて痛いらしく、涙目になっている。
右足が伸びている事から、昨日のエイミーのように蹴飛ばしたらしい。
「痛いですわね! というか、なんで起きてるんですか! 魔法……なんでもないですわ!」
「ふっふっふ、現在のエイミーちゃんは油断できないからね~。こっそりと人形に頼んでおいたんだよ。お兄ちゃんが変な風になったら、強制的にでも起こせって」
その人形の命令を解いたらしく、引っ張られていた頬を痛そうに撫でながら答えた。
郁人からすれば、そこまでする必要はないと思ったけれど、それでも助かったので攻める事は出来ない。
「っていうか、エイミーはそんなことまでして、俺とイチャつきたかったのか?」
「当たり前ですわ! そうでもしないと二人に取られてしまうのですから!」
エイミーは指を鳴らすと、燐も目を擦りながら起きたことから、魔法を解いたらしい。
どうやら燐はメアリーのように対策は取ってなかったようで、今頃のん気そうに身体を起こした。
寝惚けた頭では状況が分からないらしく、エイミーとメアリーを交互に見つめて、
「ふぁあああ……なんかあったのか?」
大欠伸をしながら尋ねた。
「なんでも――」
「エイミーちゃんがお兄ちゃんを襲おうとしてた」
「ちょっ、メアリー!」
「昨日のお返しぐらいは燐ちゃんもしたいでしょ?」
まるで無垢な少女のようにメアリーは笑い、燐を挑発する。
燐は耳をピクンと動かすと寝起きの顔から怒りの顔に変わった。
「ほほう、メアリーの言うとおりじゃな。昨日のお返しはさせてもらおうかのう?」
燐は手をポキポキと鳴らして、早速戦闘態勢になる。
「俺死んでいいなら、ここでしろ」
「心配しないでいいよ~。ちゃんと外でするから」
「そうじゃ、安心せい」
「くっ、かかってこいですわ!」
「そっか、じゃあ外に行って来い」
三人はその言葉に従い、窓から飛び出す。
しばらくして郁人が初めて爆発音などを聞いたが、気にしないことにした。
変に巻き込まれたくないからだ。




