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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
皇都編

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第百二十話 天才錬金術師は常識を知らない


──天才錬金術師は常識を知らない


黄金の門。


その隙間から伸びる黒い手。


世界核シエラ。


最後の番人レグルス。


始原の災厄ノア。


三人の表情から笑顔が消えていた。


ノアが震える。


「思い出した……」


「これ」


「これだよ」


「私たちが怖かったの」


アルマは首を傾げる。


「門の向こうの人?」


ノアは首を横に振る。


「違う」


「人じゃない」


その瞬間。


黒い手がさらに伸びる。


ギギギギギ……


まるで世界そのものを掴もうとしているようだった。


空間が軋む。


魔力が悲鳴を上げる。


レイナが剣を構える。


「総員戦闘準備!」


ゼクト。


「全軍展開!」


騎士たち。


魔導師たち。


全員が武器を構える。


しかし。


フィーネだけは苦い顔をしていた。


「無意味じゃ」


「相手が悪すぎる」


ガイゼル。


「そこまでか」


「うむ」


「千年前」


「神々ですら倒せなかった」


全員の顔色が変わる。


神ですら倒せなかった。


その言葉の重み。


そして。


黒い手の向こうから。


何かが覗いた。


巨大な瞳。


空より大きい。


海より深い。


理解不能な存在。


見ただけで頭が痛くなる。


バルト魔導師長が膝をついた。


「ぐっ……!」


ルナ。


「頭が……!」


シエル。


「気持ち悪い……!」


ミルも顔を青くする。


「……いや」


シエラは震えていた。


「また」


「また世界が壊れる」


レグルスも拳を握る。


『だから私は作られた』


『これを止めるために』


ノア。


「私は封印するために生まれた」


フィーネ。


「そうじゃ」


「世界核」


「番人」


「災厄」


「全てはこのためだった」


導師だけが狂喜していた。


「素晴らしい!」


「素晴らしいぞ!」


「世界の外!」


「未知の存在!」


「これこそ!」


「人類が到達すべき未来!」


ガイゼル。


「黙れ愚か者」


だが。


導師は笑う。


「分からぬか!」


「限界を超えねば未来はない!」


そして。


導師は門へ向かって走った。


「我こそ!」


「新たな世界の王となる!」


誰も止められない。


そのまま。


黒い手に触れた。


瞬間。


導師の体が止まる。


「……え?」


そして。


消えた。


音もなく。


悲鳴もなく。


存在そのものが。


全員。


「……」


沈黙。


赤い仮面。


青い仮面。


新帝国の者たちも青ざめる。


理解した。


相手は交渉できる存在ではない。


支配できる存在でもない。


ただの災害ですらない。


もっと根源的な何か。


その時。


アルマが前へ出た。


「アルマ!」


レイナが叫ぶ。


「危険です!」


しかし。


アルマは止まらない。


門を見る。


黒い瞳を見る。


そして。


不思議そうに言った。


「寂しいの?」


全員。


「え?」


黒い存在が動きを止めた。


アルマは続ける。


「あなたも一人?」


沈黙。


そして。


空間が震えた。


言葉にならない声。


誰にも理解できない。


だが。


アルマだけは聞こえた。


『……ひとり』


『……ずっと』


『……ひとり』


アルマは少し考えた。


そして笑う。


「そっか」


「みんな一緒だね」


フィーネ。


「何を言っておるのじゃ!?」


アルマ。


「シエラも」


「レグルスも」


「ノアも」


「一人だった」


「この子も一人なんだよ」


シエラが目を見開く。


レグルスも。


ノアも。


誰より孤独を知る三人だった。


アルマは両手を広げる。


「でも」


「一人じゃなくなればいい」


「友達になろう!」


全員。


「またそれか!?」


しかし。


その瞬間。


黒い存在の動きが止まる。


完全に。


世界が静まる。


黒い瞳がアルマを見る。


そして。


ほんの少しだけ。


優しい光が宿った。


『……ともだち』


アルマ。


「うん!」


『……知らない』


「じゃあ今から!」


『……できる?』


「できる!」


即答だった。


ルナが頭を抱える。


「お姉ちゃん本当に何なの……」


エリシア。


「常識がないにもほどがあるわ……」


フィーネは苦笑した。


「じゃが」


「だからこそなのじゃろうな」


その時だった。


アルマの体から光が溢れる。


黄金色。


暖かな光。


誰も見たことがないほど優しい光。


世界核が共鳴する。


レグルスが共鳴する。


ノアが共鳴する。


そして。


門が閉じ始めた。


ギギギギ……


黒い存在は抵抗しなかった。


ただ。


アルマを見ていた。


『……ありがとう』


最後に聞こえた声。


そして。


門は完全に閉じた。


静寂。


全てが終わった。



数日後。


帝国。


王城。


地下遺跡は封印された。


新帝国は解体された。


残党たちも投降した。


シエラは正式に仲間になった。


レグルスも皆を守る存在として残ることになった。


ノアもアルマたちと旅をすることになった。


相変わらず。


毎日騒がしい。


「アルマー!」


「お腹空いたー!」


「アルマー!」


「これ何ー!」


「アルマー!」


「ミルが寝てるー!」


アルマは笑う。


「みんな元気だね!」


ルナ。


「原因はアルマお姉ちゃんだよ」


シエル。


「うん!」


ミル。


「……すやぁ」


きゅる。


「きゅー♪」


フィーネ。


「平和じゃの」


ガイゼル。


「うむ」


エリシア。


「これからも大変そうだけどね」


空は青い。


風は暖かい。


世界は今日も続いていく。


そして。


遥か天上。


人々の知らない場所。


白い空間。


一柱の神が地上を見ていた。


長い長い時間を生きる神。


その神はアルマたちの姿を見ながら微笑む。


「やっぱり」


「間違いじゃなかったね」


かつて。


常識を知らない少女を。


その世界へ送り出した神。


神は楽しそうに笑う。


「世界を救うのは」


「強さでも」


「知識でも」


「権力でもない」


「ただ誰かを友達だと言える心か」


神は目を細めた。


地上では。


アルマがノアとシエラとミルとシエルとルナに囲まれて転んでいる。


「わわっ!?」


「アルマー!」


「大丈夫!?」


「……どじ」


「きゅー!」


神は声を上げて笑った。


そして最後に。


優しく呟く。


「これからも頑張ってね」


「アルマ」


その言葉と共に。


空を渡る風が吹いた。


それはまるで。


未来へ続く祝福のようだった。


──天才錬金術師は常識を知らない 完。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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