冒険者登録
俺達はビスケトルに到着した。
リーリアによるとビスケトルは付近にいくつものC、B級ダンジョンが存在しており、新米冒険者や中級の冒険者が多くこの町に訪れているそうだ。
日が暮れ始めていたので、宿を取って明日にギルドに行き、冒険者登録をしようと思ったのだがそこではっと気付いた。
金が無い。
五百年前の金なら腐るほどに持っている...が、恐らく使えないだろう。
「むぅ、これはいかんな。」
「どうしたんですか?」
「金が無くてな、宿が取れん。」
「キルスパイダーの素材はかなり高く売れるので、丸ごと一匹売れば多少豪遊しても1ヶ月は持つくらいのお金が得られますよ!」
実はキルスパイダーの素材をスキルの「運び屋」を使って回収していたのだ。
「運び屋」には、他に昔に討伐した魔物や武器防具、金銀財宝など多くの物を収納している。
「冒険者でなくとも魔物の素材を売却できるのか?」
「可能ですよ、ついでに冒険者登録もしてしまいましょう!」
ギルドは2階建ての立派な建物だった。
日暮れどきというのもあって中に冒険者はあまりいなかった。
ギルドの内装を見回しながら、素材の売却を受け付けている職員に話しかけた。
「魔物の素材を売りたいのだが。」
「了解しました。冒険者標をお見せ願えますか?」
「これから冒険者登録をするところだ。」
「左様でしたか。では素材の売却額から2人分の冒険者登録費用で銅貨20枚分差し引かせていただきますね。」
「それで売りたい魔物というのは?」
「キルスパイダーだ。ここで出すには少し場所が悪い。」
「珍しい、運搬系統のスキルをお持ちなんですね!確かにここでキルスパイダーを出すには狭いですね、こちらにどうぞ!」
珍しいものなのか、リーリアも驚いていたし、昔は割と皆持っていたスキルなんだがな。
そして俺達はギルドの地下一階の広い空間に案内された。
ここでサイズの大きい魔物の素材の鑑定をしているらしい。
鑑定と素材の測量、売却額の計算をする為に5人ほど職員が集まってきた。
「ではキルスパイダーを出してください。」
そして俺はキルスパイダーの死体を取り出した。
「!!何だこの美しさは!」
「体が綺麗に両断されている、ここまで美しい断面は見たことがない!」
「足を切り落とさずそのまま両断したのか、とんでもないやつだな...。」
今までキルスパイダーの素材がここまで綺麗な状態で売却されるケースはなかったらしい。
外殻は砕け、足も切断されバラバラになった状態のものがほとんどらしい。
まぁ定石通りの方法を取ればそうなるのは当たり前だな。
「で、いくらになるんだ?」
「あぁ、細かい鑑定はまだだが、かなり良い金額になるぞ。少し時間が掛かるからその間に冒険者登録をしに行くと良い。」
「ではそうしよう。行くぞリーリア。」
「はい!」
俺達は鑑定を待つ間、冒険者登録をする為に一階へと向かった。
「冒険者登録をしたいのだが。」
「分かりました。こちらに名前の記入をお願いします。」
俺はベリトと記入した。
余計なトラブルを避ける為だ。
「では冒険者になる為の試験をしていただきます。試験内容はギルド職員と対戦です。今すぐ始めますか?」
「あぁ、すぐに頼む。」
「かしこまりました。ではこちらにどうぞ。」
俺達はギルド地下二階に案内された。
中は広く、壁には結界が張られている。
「ではどちらから試験を受けられますか?」
「リーリア、行ってきなさい。」
「分かりました。頑張ってきます!」
「防御行動はその防具が勝手に行う。攻撃だけに集中するんだ。教えた通りにやれば負けることはない。」
「はい!」
そしてリーリアとギルド職員の戦いが始まった。
相手のギルド職員は大した相手ではない、すぐに終わるだろう。
開戦の合図が出された瞬間、相手はリーリアの元へ飛び込んでいった。
直後、防具の専用スキル「ブラックマジック」が発動された、一時的に相手の視界を奪うスキルだ。
相手は怯んだ、今がチャンスだ!
「リーリア、今だ!」
「はい!はあぁぁ!」
「風魔法 スカイフォール!」
魔法によって発生した突風は相手を持ち上げ、空中で一回転させた後、結界が張られた壁に叩きつけた。
職員は伸びてしまっている。
「勝者 フロトリン・リーリア!」
やりすぎている気もするが、まぁ良いだろう。
「やりましたよ!ベリト様!」
「あぁ良くやったな。次は俺の番だな。」
「ベリト様の戦い、勉強にさせていただきます!」
「一撃で終わらせるから、勉強にはならないと思うが...。」
対戦相手と向き合う。
やはり彼も大したことはない。
すぐに終わらせよう。
「待て!」
「?」
「お前の相手は俺がやる!」
「ギルドマスター!?」
どうやらキルスパイダーの件を聞いてここに来たようだ。
「お前があの獅子蜘蛛を持ってきた男だな?」
「そうだ。」
「クク、強い気配を感じる!昔の血が騒いじまうな!」
「さぁ来い!俺が相手だ!」
ギルドマスターはかなりの実力者のようだった。
この町で見かけた冒険者と比べても、比にならないほどだ。
だが、俺には誤差の範囲だった。
開始の合図と共に、ギルドマスターの鳩尾に拳を打ち込み、ギルドマスターは結界が張られた壁にめり込み、気絶した。




