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四十二話目

 

 ザッドの街から出て、1時間ほどが経ちアルメリアとの会話の話題も尽きた頃。

 馬車は所々に木が生えている、見通しがいいわけではない草原の中の道を走り始めた。 


 「盗賊が出たぞ!」

 

 という声が戦闘の馬車から聞こえた。


 見れば60メートル程先に、盗賊が1人で武器を構えて立っていた。

 本当に1人だけならば、止まらずに馬車で突き抜けたほうが早いような気もする。


 そんなことを思いながら傍観していると、馬車は律義にスピードを落とす。


 「おい冒険者!何ボケっとしている!周りに隠れている盗賊を探せ!」


 そして、こんな声が俺に掛けられる。

 

 この見通しが悪い中でどうやって探せば……

 

 「あ、そういや【神眼】あったんだった……。」

 

 使わない期間が長くて忘れてたな……。まぁ【神眼】で見通せるかは分からないが。


 いつだか暗視を使えるようになった時同様、一旦目を瞑り集中する。

 この場合敵意を見れるようになった方がいいのかもしれないがそれだと近衛騎士団たちにも反応してしまうかもしれない。

 ……それでもいいか。

 

 目を開ける。


 すると俺に怒号を飛ばした男が、サーモグラフィーのように、全体がうっすらと赤く見える。

 背丈の低い木の裏のほうに目を向けると、人型の赤い輪郭が見える。輪郭は…6つか。

 

 「……って6人もいるのか?」

 

 ……わざわざ止まらないで進んでいた方がよかった気がするな。

 

 俺の驚いて上げた声に反応したのか、木がガサガサと揺れる。

 

「おい!無視をするな!」


 盗賊に向かおうともせずに、俺にばかり構ってくる近衛騎士は放っておく。

 アイテムボックスの中から、ドラゴン討伐の時にもらった槍を取り出して軽く(・・)投げる。


 ……次の瞬間にはクレーターができ、盗賊は衝撃で1~2メートル程飛ばされた。


 「…なんだ!?何が起きた!?おい、説明しろ!」 


 …もう近衛騎士は放置でいいか。

 盗賊は飛ばされたところから一向に動こうとしないので、恐らく気を失ったのではないだろうか。


 まぁ、あの木陰だけで6人ってことは、もっといなきゃおかしいよな。


 一旦目を閉じてからまた目を開ける。すると今度は、すこし距離がある木の影に隠れているような、輪郭が見える。その人影は等間隔に並んでいる。まるで……というかまんま円状のように。


 「……囲まれてる……のか?」

 

 万が一に備え、一旦アルメリアが乗っている馬車を障壁の箱で包む。

 

 「おい!アルメリア様の馬車に何をした!答えろ!!」

 「黙れ。剣を向けるべき相手は俺なのか?」


 近衛騎士が無視されたことに対して怒り始め、とうとう俺に剣を向けた。

 魔力を6000ぐらい叩きつけ、正論を言うとすぐに、木々のほうに走って行った。

 

 他の近衛騎士達を見てみると、手当たり次第に木々の葉を剣で切っている。

 

 槍を投げて、当たってしまうのは避けたいので、仕方なくその場から駆け出し盗賊を殲滅することにした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 盗賊は結局、俺が9割近く殺し、残りの一割を近衛騎士団が捕縛していた。その捕縛された人数が10人だから……全体で100人近くいることになるだろう。捕縛された盗賊は空きの馬車に乗せながら進んでいる。


 先ほど同様、俺はアルメリアが乗っている馬車の外側にいる。屋根の上といったほうが正しいかもしれないが。


 「……その、1つ聞いてもいいですか?」

 

 顔は見えないが、不安なのは分かりやすく伝わってくるか細い声で、アルメリアは話掛けてきた。


 「なんだ?」

 「チヒロさんは、盗賊を殺す時にどういう思いで殺しているのですか?」

 

 ……随分と、急な質問だな。

 

 「近衛騎士団の方々にも、気になって聞いてみた時があって聞いてみたんです。その時は皆口をそろえて言いました。職務であるから、王女様を護衛するためであるから。……誰1人として、私情で答えることはありませんでした。」

 「…………それで、俺個人としての感想を聞きたいと?」

 「はい。」 

 「……俺も、仕事だから、としか言いようがないな。もしも、この盗賊が辛い思いをして盗賊にならざるを得なかったとか、そんな事を考えると、殺すのに躊躇してしまう。」

 「じゃ、じゃあ……盗賊を殺さなくてもよかったんじゃないですか?」

 「……人の物を盗む。それは卑劣なことだと思うんだ。物によっては、思い出が詰まってるものだってあるだろうし。価値のあるなしに関わらず、物に愛着があるはずだ。膨大な時間をかけて作り上げられたものを、正当な価格で買った。それを何の苦労もせずにただ人を脅したり、最悪殺したりして奪う。卑劣だとは思わないか?」

 「それは……そうですが……。」

 「だからこそ、俺は殺す。冒険者としての仕事として。あくまでも仕事だからな……捕縛しろという指示がでたらそりゃあ捕縛するさ。」


 一瞬の沈黙の後、少し明るくなった声でアルメリアはこう言った。 

 

 「では、チヒロさん。今後は盗賊を見つけた場合、捕縛のみにしてください。報酬は、盗賊の盗んだ物全てです。」

 「分かった。」

 

 馬車は、木の一切ない草原の中の道を走り始めた。


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