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#17 薫
迷いは無い。銀色と茶色。二羽の鶴を折り直して、病院の屋上へ。
あの時と同じ夜風は気持ち良かった。それが、元気に笑って、はしゃいでいた瞬を思い出させてしまい、喉の奥に圧迫感を覚えた。嗚咽を堪える。
同じ手順を踏んだ。
チャックの袋を開ける。次にリップクリームを、爪楊枝に塗る。リップクリームを塗った爪楊枝を、袋の中に入れて、捻るようにして絡みつける。
向こうからでも、よく見えるかなと、薫は夜空を仰ぐ。広がる夜空には、いくつも星があって、どれが瞬かは、分からなかった。
ペンチで爪楊枝を摘む。そして、小さなライターで火をつける。
さようなら――最後の花火を点火する。
火が灯る。木の爪楊枝に。銀に輝くアルミニウムに。
バチバチと火花が散る。けれど、それは、ほんの少しの間だけ。
オレンジの火花が散る。音を立てて。暗い夜の視界に、橙色の閃光は、よく映えた。
その全てが、彼の作り出した願いだった。消えるまで見つめ、消えた後も、薫は折鶴と一緒に、オレンジ色のそれを、いつまでも見続けていた。
18章との同時投稿となります。
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