#11 朱莉
授業中、いつも薫が仏頂面なのは、朱莉にとっては日常である。
だが、今日のそれは、いつもと違っていた。普段の不機嫌さが、諦めているようなそれなら、今日の仏頂面は、何かに悩んでいるようだった。どこか上の空なのだ。
――ますます分かんないなぁ……。
先週は折り鶴を教えて欲しいと言い、なにかあったのかと思った矢先にこれだ。朱莉としては、薫の事が少し心配だ。
「どう思う?」
昼休み、朱莉は美羽に相談した。今日の薫は、昼食を済ませた後、ふらふらとどこかえ消えてしまった。
「確かに、様子が変だったわね。人の話を真面目に聞かないのはいつものことだけど、今日は何か、思いつめている感じだったし」
やはり、美羽も同じように感じていたらしい。朱莉は心配を共有できた安心から、捲くし立てるようにして喋る。
「やっぱり、相談に乗ってあげた方が良いかな?」
どうかしら、と美羽は朱莉の言葉の真意を理解した上で、否定的な見解を述べる。
「あの人にだって、あの人なりの悩みがあるのよ」
「それはそうだろうけど……」
朱莉にだって、人に言えない悩みの一つ二つはあるし、薫にそれがあるのも、承知しているつもりではあった。
「だから、少し様子を見て、良くなりそうに無かったら、声を掛けてみたら?」
「……そうだね」
美羽の意見は最もだと思い――朱莉は、了解した。
手遅れになってはいけない。けれど、あまりにも一々心に触れるのは、それはそれで厚かましい。あくまで助言は『相手に良くなって欲しい』という思いでやるべきだ。『相手が自分の影響で良くなって欲しい』という自分勝手な都合でやるべきではない。
最善は、薫自身が、自分の力で解決することなのだから。




