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122 バトル、バトル、そしてバトル その1

バトルとか連呼しておきながら、まだバトルに入りません。ごめんなさい。


今回は猫バージョンです。

三人のお供を連れて歩くことによって、移動速度は落ちたので丁度良い感じに時間がかかりそうだ。最悪こいつらを置いて、自分だけ行けば良いしな。

「良いか、これは人間の拠点に忍び込んであいつを救い出すことが目的のスニーキングミッションだ。だからー」

「これがエリカの彼氏か……何だか頼りないわ」

「すいません」

「ちょっとお姉ちゃん!!クシア君を苛めないでよ」

「別にあたしはイジメてなんかー」

「少しは緊張感を持って静かに行動しろよ!!」

俺の叫びで三人は言い合いを止める。

「これから敵地に向かうんだぞ、もう少し緊張感を持ってくれよ」

「は~い」

「分かりました」

「うん」

三者三様の返事を返すが、その声に真剣みが無かった。こいつら本当に分かってんのか?

俺はそんな不安な思いを胸に抱きながら、三人を引き連れていった。人間の拠点が目に入る前に、横が正面にになるように大回りをする。これで移動してぶつかることは無いだろう。目的のマリアを確保したんだ、すでに移動していてもおかしくないと考えていた。


しかし拠点に付くと移動するどころか移動の準備の気配すらしていない。

一体どういうことだ?それに人の気配を感じるが人数が少なすぎる、四十人もいる拠点の中だと思えない。残りはどこに?目的のマリアを確保したんだ、出かける理由は無いはずだ。


何だか、胸騒ぎがする。


「お前らはここにいろ、俺だけで助けに行ってくる」

「はい」

「分かりました」

「うん」

今度はちゃんと緊張感をもって返事をしてくれる。さすがに敵地に近づいたことで緊張し始めたのだろう。素直に返事をしたところを見ると大人しく待っていてくれそうだ。



俺は体を低くして、地面を這うようにして拠点に入っていった。中はやはり十人ほどの人間しかいなかった。


この鎧見覚えがある、教会?少しデザインが違うが、たぶん教会関係者だ。異種族に対して排斥的な教会がわざわざ話し合いのテーブルを用意するか……疑問だな。

俺は適当なテントに頭を突っ込んで、マリアを探し回った。俺が頭を突っ込んだほとんどのテントが無人か、物資のテントだった。俺が拠点の中心あたりに行くと驚くべき光景を目にした。戦闘の跡と崩壊したテントだ。テントは一部血で染まっている。


「ここで戦闘が……」



その戦闘跡近くの地面に穴が開いている。穴を覗き込むとエルフの屍が幾重にも重なって捨てられている。生きているエルフはいないようだった。その屍の中にはあの会議で俺に掴み掛ったエルフの姿もあった。しかし、変だな。人間の死体が無い、一つも無い。エルフだって黙って殺されるわけが無い、抵抗があったはずだ。不意打ちでも殺せる数には限度がある。いや、エルフの死体と一緒に捨てて無いだけか?

いや、そもそも殺されてないだけかも。ケガ人はほぼ確実に出ているはずだ。まあ、考えても仕方ないマリアをさっさと救出しよう。崩壊したテントからいくらか離れた所にもう一つテントがある、そこにマリアは縛られて捕まっていた。見張りはいなかった、不用心だな。


「おい、マリア、マリア」

俺が小声で話しかけると、マリアは驚いたように顔を上げ周りを見るが、猫の俺を見たこと無いマリアには俺が喋っていると言う事が分からないようだ。マリアともう一度呼ぶとさすがに気づいたようで、俺のことを目を見開いて見てくる。まあ、猫が喋れば驚くよな。マリアの背後に歩み寄って、縛られているロープを歯で噛み千切り始める。

「何であなたがマリアを助けに?それとなんで猫?」

「……さあ、何でだろう?」

マリアの問いに答えることが出来なかった。特に理由があって助けている訳でもないし、まあいいか。なんで猫かの問はスルーすることにした。

「取り敢えず、お前をここから救い出す」

噛み千切れた。

「行くぞ」

「はい」



マリアが立つと、俺はテントから顔を出してあたりの様子を伺った。やはり人数が少ないこともあって人の姿は目に入らなかった。

「見張りがいないうちに行くぞ」

「はい」

マリアは俺の後ろをしゃがみながら付いて来る。拠点内の茂みに体をひそめながら外に向かって歩いていく。


拠点から外に出ると、俺たちはリリアナたちが待っている場所に向かった。




「待たせたな」

「「「ひゃあ!!」」」

俺が茂みに顔を突っ込んで脅かすと、三人とも同じように驚いて飛び上がる。

「脅かさないでください、アルビオンさん!!」

「いや~しっかりと留守番をしていて良かった良かった。じゃあ、行くぞ。まずは川を見つけてそこを辿っていく」

「分かりました」

「はい」



俺たちはそこから十分ほど歩いた所で川を見つけて、川を辿って行った太陽は天頂に差し掛かろうとしている。そろそろお昼だ。このままいけば丁度良い時間に到着できるだろう。





「お主たち来たな」

爺さんが俺たちに気づいて、声を上げる。近くにはしっかりと船が到着している。そして爺さんと共に俺たちに視線を向ける。俺はそいつを知っている、あの人間に見覚えがある。あいつはー


「ジャック!!」


ジャックはその昔に俺をザスーラ国に送り届けてくれた船乗りだ。人生は楽しむためにある、と言う自論を持っている。ジャックは昔と変わらず丸太のように太い腕と髭を生やしている。

「おお~!!久しぶりじゃねえか。オズワルド」

ジャックも俺の姿を視認すると手を挙げて挨拶をしてくる。まさか、こんな所で再会するとは思わなかった。

「オズワルド?」

「俺の昔の名前だ、気にするな」

俺はエリカの質問を軽く流すと、小走りに駈けて行った。


「久しぶりだな、ジャック。元気してたか?」

「おう、してたぞ。まさかこんな所で再会するとは思わなかった」


「何じゃ、お主ら知り合いだったのか?」

「まあな」

「俺の船に乗せた客だ」

爺さんの質問に二人で返事を返す。

「ジャックと言うかお前、エルフの村だけで無く魔族の国にも出て入り出来るのか?」

「ああ、その昔に船が難破してな。それで魔族と知り合った。たまに魔族の国の品をこっちに輸入したりしているぞ」

「へえ~」

ジャックってもしかして色んな所に伝手持ってる?まあ、すごいな、ジャックに入れない所は無いんじゃないのか?

「船が方向を変えるまで、少し時間がかかる。それまで少しここでお喋りしようじゃないか。それとこの子を魔族の国まで連れて行けばいいんだな」

ジャックは俺の後ろに来ているマリアを指さして聞く。

「ああ」


俺たちは船の方向が変わるまで、少しの間雑談をしていた。今までどんな事をしていたとか、そんな世間話だ。



「そう言えば教会の方で何かあったか?今回少し教会が絡んでいるのだが?」

「教会?あ~あ、あったぞ。教会が勇者と協力してドラゴンを倒したんだが……その時に教会が大量のドラゴンの血を入手したと言うことだった」

「ドラゴンの血?どう使うんだ?」

「ドラゴンの血は飲むと肉体を強化してくれるんだ、摂取量によるが体が段々とドラゴンのようになっていく。肌の下には鱗が出て来て拳は岩をも砕く」

さすがドラゴンから入手できるアイテムと言った所か、それを飲めば飲むほど強くなれると言うことだ。俗に言うブースタードラックだろう。

「ドラゴンの血が手に入ればかなりの人数が強化できるじゃないのか?」

「ところがどっこいそうは行かない。ドラゴンの血には適性があってな、適正レベルが低いと体が変化に耐えられなくて死んでしまう、さらに早々何度も飲めるものでも無い、そして効果時間も長くは無い」

そこまで美味しいアイテムでも無いみたいだ。強い力には副作用があると言うことだろう。



その時、エルフの村の方で大きな爆発音が鳴り響く。全員が音の発生源の方向に目線を向ける。

「何ですか?」

「あっちにはあたしたちのの村が……」

「あの煙は……」

「……」

エルフの村があると思われる方角からいくつもの黒い煙が立ち昇る。

「あの拠点にいなかった人間がどこに寄っていたから分かったな」

俺の言葉にエルフ全員の視線が集まる、いや唯一爺さんだけが気づいたようで俺に視線を向けていなかった。

「アルビオンさん、まさか?!」

クシアは察しが良くてすぐに気づいたようだ。

「ああ、今奴らはエルフの村を襲っているんだ」

俺の言葉に顔を真っ青にして呟くエリカ。そして俺の顔を何か言いたそうに見つめるリリアナ。

「嘘でしょう……?」

「本当だ」

俺の無慈悲な言葉にエリカは泣きそうな顔になる。クシアはそんなエリカのそばに近づくと、そっとエリカの手を握った、エリカはそんなクシアにありがとうの笑みを浮かべている。……こいつら俺たちがいなかったら抱き合ってるのではないだろう。



「アルビオン!!今すぐに村に行って!!」

リリアナが突然悲鳴に近い声で俺に言ってくる。

「どうしてだ?」

俺が冷静に聞き返すと、信じられないような目で見てくる。

「ふざけないでよ!!今エルフの村が襲われているのよ、今すぐ助けに行ってよ」

「そんなに急ぐ必要は無い、言ってただろう会議でも」

「確かに会議では襲われても大丈夫だと言ってましたけど、もしそのドラゴンの血を使っていたら!!」

俺は少しの間沈黙して、そうなった場合の被害を冷静に考えだした。

「村の半分は死ぬな」

俺の冷静なコメントにリリアナは、俺の首を持って持ち上げる。

「分かってるなら助けに行ってよ!!」

「俺にエルフの尻拭いをしろと言うのか?」

「え?」

エリカは先程とは違い気の抜けたような声を出す。

「今回のようなことになったのは、どっかの馬鹿エルフが独断行動を取ったからだろう?はっきり言ってエルフの問題はエルフで解決しろ。しかも今回は村が滅ぶならともかくな。一人のエルフが勝手に行動すると村が滅ぶかもしれない。いい勉強になっただろう」

「まあ、そうじゃな。確かにこの問題はエルフの里の問題じゃ」

「言いたいことは分かるけど!分かるけど!!」

エリカは目の端に涙を貯めながら、崩れ落ちて俺を地面に落とす。



その時、俺の本能と危険察知が反応する。これは……


「前言撤回だ」

俺の言葉にエリカは俺を見る。

「村が滅ぶぞ」


俺の言葉にエルフ一同が絶望感に染まる。

久しぶりに懐かしいキャラを出してみました。(^o^)/

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