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100 落とし穴

記念すべき100話です。連載から九か月です。ここまで続けられたのもみなさんのおかげです。

これからも応援よろしくお願いします。

「どうするんよ、おい!!」

「死ぬ気で走るしかない!!」

「先輩そろそろ僕は、ハァハァ」

「良し、そのまま倒れて犠牲になれ」

「先輩そんな!!そこは『諦めるな!!』とか言う所でしょう」

「お前が起こした騒動だ!!お前が犠牲になって当然だ」

「そんな~」


現在俺たちは森の中を爆走して鶏から逃げ回っていた。


チェイスと言うエルフが鶏を引き連れて俺たちとばったり会ってしまい、一緒に逃げることになったのだ。俗に言うモンスターを擦り付ける行為、トレインと言うものである。ただ今回は擦り付けた本人も逃げているのだが。


「どうするんだ?このまま村に帰ったら……」

「村が大変な事になる、村にっ....行くことはっ....出来ないな」

ガウルンが息せき切って答えてくれる。

「先輩、何か策は!!」

「あったらやってる!!」


「コケーコ!!、コケーコ!!」


背後から鶏の鳴き声が聞こえてくるが、さっきより距離が縮んでいるようだった。


「どうするんだ?さっきより距離が縮まってるぞ!!」

「分かってる!!」


このままじゃじり貧だ。どうする?猫の咆哮は地形を変えてしまう恐れがあるから使えない。


追えないようにしてみるか、まずは落とし穴で追えないようにしてみるか。


「おい、ガウルン!!精霊魔法で地面に落とし穴を開けてみてくれ」

「分かった、やってみる!!」

「先輩それなら僕がやります、こうなったのも僕のせいですし!!」

「絶対やめろ、お前がやると碌な事が無い!!」

「そんな~」

チェイスは情けない声を出しながら走り続ける。よくこんなに速く走りながらそんな情けない声を出せるなと内心関心しながら俺は背後の鶏たちを見た。鶏たちは興奮しきっていて、十匹近くが俺たちを追いかけるのを止めてくれそうにない。


「行くぞ、精霊よ、我の言葉を聞き、地面に穴を空けよ」


ガウルンが背後に目を向けながらそう唱えると地面に半径十メートルぐらいの大きな穴を空けると面白い様に鶏が全部落ちて行った。たぶん俺たちの事しか目に入っていなくって、地面が視界に入らなかったのだろう。


俺たちは足を止めて背後を振り返った。


「先輩やりましか?」

やめろ、それはフラグだ。

ガウルンはその言葉で、チェイスがいる事にハッとしたような表情をすると

「足を止めるなこのまま村まで全速力で走って帰るぞ!!」

ガウルンはそう言うと走り始める。チェイスがいるだけで大丈夫な状態でもとんでもない事になることがあるのだろうな。取り敢えずこの鶏から離れて、さっさと村に戻りて安心したいのだろう。






「ハァハァハァ、ハァー。ゴホゴホ」

「大丈夫か?」

「な、なんとかな」

俺たちは無事に村に帰ってくることが出来たが、本当に全速力で走って村まで帰って来たのでガウルンは咳き込んでいる。

「大丈夫ですか、先輩?」

一方その騒動を起こし巻き込んだ張本人はケッロとした顔をして、ガウルンに声を掛けて来る。良くこう言った事に巻き込まれるからだろうか、体力なんかには有り余っているのだろうか。


ゴンッ!!


そんなチェイスの頭を無言で殴るガウルン。

「痛ッ!!何するんですか先輩~」

頭を押さえて涙目でガウルンに抗議の眼差しを向けて来たが、ガウルンはそれを無視して質問をした

「でお前、なんであんなことになった?」

「え~と、その狩りに夢中で、鹿を狙って放った矢が外れて向こう側にいた鶏に当たってしまって……」

「バカ野郎!!狩りの時ぐらいしっかりと周りを確認しろ!!」

「ごめんなさい、先輩!!」

チェイスが首を竦めて謝る。

「まあ、今回はこれで済んだから良い物も……本当に気を付けろ!!」

「分かりました」





俺は一通り説教が終わった所で前足を上げて声を上げた。

「で説教が終わった所で質問があるんだが?」

「ん、なんだ?」

「そいつは誰だ?どうやら知り合いのようだが?」

俺がそう言って目を向けるとチェイスは何かに気づいたように手を叩いて口を開く。

「この喋る猫があの村長に村半分消してやろうと脅した猫ですか?へえ~、口は悪いですが綺麗な猫ですね。痛ッ、何するんですか!!」

チェイスが撫でようと手を伸ばしてきたので、俺は尻尾で思いっきり引っ叩いてやった。


「人の体を気安く触るな、それとそろそろ手を放してくれ、ガウルン」

「悪いな」

ガウルンはそう言うと俺を地面にゆっくりと下ろしてくれる。俺は地面に着地すると体を力いっぱい伸ばした。


「で、こいつは?」

「こいつは俺の仕事の後輩だ」

「後輩?」

「そうです!!ガウルン先輩の後輩です!!先輩はトラブルメイカーの僕を進んで面倒を見てくれたんですよ、ガウルン先輩は面倒見がよくて優しんですよ」

チェイスはそう言ってガウルンに親愛と尊敬の眼差しを一身に注いでいる。

「ふ~ん」

俺がそう言って横目でガウルンを見ると、ガウルンはその眼差しを居心地悪そうに受けていて、俺とは目を合わせずチェイスの方を見てさっさと帰るように言って、ここから追い返すように帰した。



チェイスが帰ってから、俺はガウルンの肉をアイテムボックスから出し始めた。

「それで?」

「それでとは?」

「あのチェイスの後輩話の真実は?」

「……くじ引きで負けて押し付けられたんだ。もう少し人懐っこく無かったら良かったんだろうな。あいつ自身には悪い所は特に無いから、ついつい面倒を見てしまってそのままズルズルと」

「へえ~」

ちょうどガウルンの話が終わった所で預かっていた肉を出し終わった。


「これでお前の肉は全部だな、それじゃな」

「何も言わないのか?」

「は?」

「いや、こんな話をすれば大抵の奴は何か言うから……」

「じゃあ、俺は大抵のやつじゃないんだろう、俺はもう行くぜ」

「そ、そうか。じゃあな」



俺は家に帰る道すがら油揚げを作ることしか考えていなかった。











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