105_思念束縛
「どうやら ミカエルちゃんはラストやナバの試練の会場に僕の過去の記憶を選んだようだ・・・・・・」
アルミちゃんはうつむいてふぅとため息をつき話を続けた
「ラスト・・・・・・この姿は僕の転生前の姿だ ラミス様がまだ魔王であった時 四柱と呼ばれる カンナ ナベンナ サキ そして僕はインキアスの言霊によってあやつられ反乱をおこした魔族たちと戦っていた・・・・・・その後僕はこの魔族たちに捉えられインキアスによって洗脳されたあとラミス様と敵対していた神の軍勢へ一人でツッコミ殺されてしまった 今思考が正常であることから考えるとこの世界の時間は僕が魔族にとらわれる前の時間ではないかと考えている・・・・・・この試練は君たちと共に僕が僕を取り戻すこと・・・・・・いや それに乗じてラスト達に何らかの効果を期待してのものだろう・・・・・・とにかく僕はこの世界での過去を変えたいと思っている・・・・・・協力してくれ・・・・・・ラスト ナバ」
「だいじょうぶだでぇ ナバさんがおるからにゃあ アルミちゃんには指一本ふれさせんでぇ」
「ああ 僕もだ」
「はは 心強いな・・・・・・だがくれぐれも無理はしないでくれ 怒りで我を忘れたり精神の錯乱を起こせば試練の外の粘土たちにも影響を及ぼしかねないからね・・・・・・ん? おい ラスト ナバ」
アルミちゃんは麓から何らかの気配を感じ僕達に伝える
祠から静かに這い出た僕達は岩陰から眼下の山林に目を向けるとそこには小さな松明の明かりと思われる光が散在し一方向へと向かって進んでいた
その方向は僕らがこの祠へやってくる途中にあった小さな小屋があった
「さすがは アルミちゃんだなぁ うちだったら速攻であの小屋に逃げ込んどったわぁ あぶねぇ あぶねぇ」
ナバはそう言って眼の前で額の汗を拭う素振りを見せながらふぅとため息をついてみせた
「うん だが あそこに追手がやってきた以上ここも安全ではなかろう 道は暗いが月明かりもある・・・・・・すぐここを立ちこの山の反対側を目指そう」
アルミちゃんはそう言って背中の大剣の位置を胸のベルトで調整した
僕達は静かに岩を離れそのまま山の頂を目指すこととなった
・・・・・・
薄暗い月明かりの中僕達は山頂を目指し進んでいる
周りには精霊たちが飛び交い幻想的な風景を演出していた
「なにか・・・・・・いる」
僕達が山頂近くに到着したときアルミちゃんが静かにつぶやく
周りをみるとさっきまで華やかにとんでいた精霊たちが急ににいなくなってしまっていた
「なにか って なにぃ?」
「わからない・・・・・・だが この気・・・・・・危険だ」
気配が感じられないナバは若干楽しそうにアルミちゃんにそう聞いたが確かにぴりぴりと張り詰めたこの空間の気は僕でも危険だとわかるレベルだ
「ニンゲンドモ コレイジョウ チカズクコト マカリナラン」
思念へと直接語りかけられているであろう声が僕達に降り注ぐ
その姿を探そうと僕らはキョロキョロと周りを見渡す
「あそこにおるぅ!」
ナバが岩の上を指差すとそこにはグレモにそっくりな女の子があぐらをかいて座っていた
「グレモ?」
僕が近づこうとしたその時 岩の上からずんとした強烈な重圧が風となって襲ってくる
「グッ」
とっさに魔法により障壁を自分たちのまわりにはりこれを凌いだが僕達はこの重圧だけで戦闘になれば無傷ではいられないであろうことを悟った
「ニンゲンドモ チカズクナ ナニユエ コノ ヤマニワザワイヲモタラソウトスル・・・・・・」
「グレモちゃん・・・・・・ あんたぁ なに言ようっだぁ うちらぁのことわからんだかぁ?」
(おい ナバ ここはアルミちゃんの”過去の世界”だぞ たとえあそこにいるのがグレモでも僕達のことは知らんだろう・・・・・・)
「ウサギ・・・・・・オマエハワタシノコトガ ワカルノカ? ワタシガナゼ ココカラウゴクコトガデキナイノカ・・・・・・シッテイルトイウノカ」
「知らん 知らんけど あんたがグレモちゃんっちゅうことはわかっでぇ」
「ック ヨマイゴトカ タチサレィ」
グレモの言葉と共にまた強大な重圧が襲ってくる 僕はもう一度魔法の障壁を作りこれを防ぐ
「タチサ・・・・・・レ」
グレモがつぎの重圧を繰り出そうとしたその瞬間いつの間にか僕のとなりからいなくなったナバが岩の上のグレモの背後からグレモを抱きしめていた
「あんたぁ そんなことしたらいけん(だめ)って ナバさんなんべんも言ったでなぁ? だいじょうぶだけぇ ナバさんが助けてあげるけぇ なぁ そんなこと したら いけん」
「ナバ!」
(やばい・・・・・・ ナバとグレモの力の差は歴然今のグレモが本気になればナバはひとたまりもなく切り刻まれることになるだろう)
僕とアルミちゃんは身を固めてナバとグレモを凝視した
・・・・・・
「グス ホントウナノカ オマエハワガ タマシイヲ・・・・・・コノチカラヲカイホウシテクレルトイウノカ?」
(あれ急に重圧が解けて来たぞ・・・・・・うそぅ)
「まぁ ナバねえさんにまかせんさい やれるだけのことするけぇ なぁ ラスト」
「お おう」
「ラスト この化け物を恭順させた ナバの手腕は見事だがいったいナバはどうするつもりなんだ?本当に策などあるのか?」
僕がナバに受け答えると隣のアルミちゃんがそう囁いた
「えーっとなぁ まずは・・・・・・」
「おーい ミカエルちゃーん おるかぁ どっかで見とるだろう ちょっとでてきてぇなぁ」
(あはは これはチートでしょ しかしナバらしい・・・・・・)
空が急に暗くなり雷鳴を轟かせたあと壮大な鐘の音が鳴り響く
そして一筋の光が階段状になりナバとグレモの前に至った
「わが力を欲しているのはだれだ・・・・・・」
その階段を静静と降りてくるミカエルちゃん すばらしい演出だ
(このパターンは・・・・・・)
「あ」
ガタタタタ
「ぎゃん ヒン や あん」
階段の途中まで来たミカエルちゃんはまたもやドレスの裾を踏み盛大に下まで転げ落ちる
(あちゃ やっぱり・・・・・・)
「いてててぃ なに? ナバちゃん? なに?」
ミカエルちゃんは尻をさすりながらナバとグレモの方を向いた
「あんなぁ ここになんでかグレモちゃんがおるだけど なんか束縛されとるみたいで動けんだって・・・・・・助けてあげてえな」
「ナバちゃんそれはルール違反・・・・・・でも今回だけ助けてあげちゃうね ミカエルちゃん大サービス てへ ・・・・・・あれれれれ おかしいな その子・・・・・・束縛なんかされてない 確かに手枷 足かせはついてるみたいだけど・・・・・・どこにもつながってないよ」
「ええっ? どういうことだぁ?」
ミカエルちゃんの受け答えにナバが首をかしげた
「たしかに昔束縛を受けた形跡はあるみたい・・・・・・けれど今グレモちゃんがここから動けないのはその束縛が原因じゃないみたい・・・・・・あ ごめーん ナバちゃん ミカエルちゃんはあまりこの世界にいられないの というわけでドロンさせてもらうわね ドロン」
(ドロンって・・・・・・)
そういってミカエルちゃんはその場で煙となって消えてしまった
(そんな消え方もあるんですね)
ミカエルちゃんはグレモはここに縛られてはいないと言った
しかしグレモはここから動けないと言っている だとすればここから動けないのはグレモ自身の選択ではなかろうかと考える だとすれば僕らができるのはグレモがそこから動いても安全であるということを証明してやることだけだろう
「グレモちゃん ミカエルちゃんはグレモちゃんがここから動いても大丈夫って言っとるで・・・・・・」
「ソンナ コトガ・・・・・・」
「な ナバ姉さんといっしょにあっちに行く? みんなといっしょに行く?」
「行こう」
ナバはグレモを抱きしめた腕を解きその手でグレモの右手を引いた
その時グレモは緊張で身体を固くした




