104_清廉
「ミカエルちゃん いいぞ やってくれ」
アルミちゃんは箱の中身を覗いたままミカエルちゃんに試練の開始を促す
「はーい じゃあ はじめまーす 」
ミカエルちゃんが目をつぶったままのアルミちゃんの頭の上で詠唱を唱えながら木の枝を振ると箱の中の粘土はゆっくりと暗い色になり形をかえようとしていた
「うう」
箱の外にいるアルミちゃんは少し呻くと目を見開いたまま涙を流し始める その表情は悲痛に満ちている
「・・・・・・アルミちゃん」
僕は思わず声をかけようとしたがそれを制止するようにミカエルちゃんは僕の口の前に人差し指をあてた
アルミちゃんは外の僕の気配を感じてか微笑を浮かべコクリとわかっているといったふうに頷いた
その直後 粘土は人の形をなしていく
その姿は僕の見たことのないスラリとした美しい女性で皮鎧にアルミちゃんの大剣を背中からぶら下げている
その剣士は大剣をさやから抜くと片足を上げ片手で美しい上段の構えでぴたっと止まった アルミちゃんの人形は微動たりしなくなった
人形はその身体から青く光る美しい光をまとい輝いている
僕はその技の美しさに思わず息を呑んだ
「おっけーよ アルミちゃん合格 すぐに試練を解くね アルミちゃん悪いけどもう少し箱の中にいてね」
そう言ってミカエルちゃんは箱の外のアルミちゃんに詠唱しながら一度だけ木の枝を振った
「さーて ナバちゃんにラストちゃん アルミちゃんこのままであなた達に術をかけるから 中のアルミちゃんの姿よく見てきてね 」
ミカエルちゃんがそう言って僕らに術をかけようとしたそのときちらりと見えた外のアルミちゃんは耳まで真っ赤になっていた
中のミカエルちゃんの粘土の姿はそのままでピンクの光を身体にまとっている
「どうしたの?アルミちゃん・・・・・・」
「あぁ ラスト・・・・・・箱の中の自分はまるで裸のようで・・・・・・なんだか・・・・・・見られるのは はずかしい・・・・・・」
「アルミちゃん なんで はずかしいんだ? あんなに凛々しくてかっこいいのに・・・・・・」
「・・・・・・ラスト ・・・・・・バカ もう・・・・・・」
アルミちゃんは僕がそう言うとさらに真っ赤になってしまった
(鎧も着ているのに・・・・・・なぜだろう?)
「はい みんな ちゃんと中にはいったぁ? それじゃあ はじめるよ」
「はい」
「ええでぇ」
休憩で鋭気を取り戻した僕とナバは気持ちを新たにして箱庭に挑む
「今回は3人だからね お互いに助け合うことを忘れないでね そうすればきっと試練はクリアできちゃうはず いくよ」
ミカエルちゃんはそう言って外の僕達に詠唱をはじめ3人の頭の上で木の枝のようなものを振った
・・・・・・
「おーい アルミちゃーん どこにおっだぁ」
「おーい」
僕とナバは試練によってどこかの荒廃した街へと降り立っているようだ
そこにアルミちゃんの姿はなく僕らは大声をあげてアルミちゃんを探し歩いている
そこへ空から羽の生えた魔族であろうものがこちらへ近づいてきた
「貴様ら何をしている・・・・・・反逆者アルミはこちらにはいない 向こうをさがせ!」
僕らの頭上に止まった兵士の魔族はそう言い残すと自分の来た方向へと帰っていってしまった
(反逆者アルミ? いったいなにがどうなってるんだ)
「なんか アルミちゃん追われとるみたいだなぁ どうする? ラストちゃん さっきのがようった(言っていた)ほうにいってみるかえ?」
「まぁ 状況もわからないし手がかりは兵士の言葉だけ・・・・・・行くしかないだろうな ナバ! ちょっと待って 」
僕らが歩き出そうとしたとき眼の前に光る霧のようなものが現れその中から人の形をしたようなものが浮かび上がる
「はぁはぁ ラ ラストちゃん ナバ・・・・・・ご ごめーん言い忘れてたけど 今回の試練は試練の中ですべての事象で干渉できるよう作ってあるの もちろん敵からの干渉もあるから気をつけて・・・・・・魔法も使えるようになってるから ほとんど現実の世界と同じだと考えてもらっていいわね ただ・・・・・・それだけ 箱庭の人形たちにも影響が出やすいから気をつけてね 説明もせずに送り出しちゃうんだもの ミカエルちゃんおっちょこちょい テヘ じゃ がんばってねぇ」
ミカエルちゃんはそう僕らに告げると霧の中で一回転すると霧とともに消えていった
回転の途中足がもつれていたのは見なかったことにしよう
「じゃあ 行こうかナバ」
「ういー ラストちゃん準備おっけーだでぇ アルミちゃん どこにおるだろうかなぁ?ちゃっちゃと試練終わらせてタマちゃんところにもどろうでぇ」
この世界は神の箱庭の中に存在する世界だ 現実により近いこの世界は試練とわかっていなければ現実の世界と遜色はない 神はこのような世界を無尽蔵に創造しているのだろう そう考えると今現実だと思っている世界は神によってつくられた妄想の世界なのかもしれないのではないかと疑念が湧いてくる 神は偉大ということか
・・・・・・
僕達が廃墟を抜け村の入口に差し掛かろうとした時木陰から小さく声がする
「ラスト ナバ こっちだ」
木陰からフードを被った女性が現れ被ったフードを少しだけめくり顔を見せる
その額には3眼族特有の眼がある
「あらぁ アルミちゃんだがぁ 違う人かとおもったわぁ」
「アルミちゃん? なのか?」
その姿は先程アルミちゃんの試練後箱庭の中の粘土が形作っていた人物だった
「そ そうだ 僕だ あー ラ ラスト ジェムラートだ ジェムラートを食べに行こう」
少しだけ戸惑っている僕を見て美しい女性は突然ジェムラートを食べに行こうと言った
僕はこの言葉でその人物がアルミちゃん本人だということを確信した
僕達はこの神の世界に来る前グレモやタマちゃんの騒動が終わったら2人でジェムラートを食べに行こう等とぼんやりと話していたのだ その内容を知るのは僕とアルミちゃんだけである したがって眼の前に現れたこの美しい女性はアルミちゃんに違いないのだろう
「さ 早く こっちだ」
アルミちゃんは木陰の道へと僕とナバを誘導する
眼の前に現れたのは小さな木製の小屋であった しかし僕達はそこには入らずその小屋が見える丘の中腹にある岩の祠へと身を隠した
そしてすぐに夜が訪れた 僕達は祠の中で小さな火を焚きそれを囲んだ
「ラスト ナバ ひとまず今の状態を説明しておく・・・・・・」
アルミちゃんは僕とナバの顔を交互に見ながら静かに語り始めた




