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魔法少女は人殺し  作者: Takahiro
第一章 殺し合いの始まり

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欠片の機能

 アシェンプテルたちと交戦してすぐ後のこと、マジカルバレットとアルカロイドはマンションの屋上に寝転がっていた。


「アタシの魔法、案外ハズレだったりすんのか……?」

「まあ、今のところ3連敗中だからね」

「負けちゃいねぇよ! 殺しきれなかっただけだ」

「殺すことが目的で襲ったんだから、殺せなかったら負けじゃないかい?」

「……引き分けだ、引き分け!」

「はいはい」


 アルカロイドは子を諭す親のようにマジカルバレットを宥める。アルカロイドは現在高一、マジカルバレットは中三であった。


 と、その時であった。巨大な鳥のような影が二人のもとに落ちた。マジカルバレットはほとんど反射的に跳ね起き、九九式軽機関銃を作り出して構えた。


「お前ら、また魔法少女を襲ったんだって?」


 気怠げに話しかけてくる、腰から巨大な翼を生やした少女。その服装はやたらと露出が多く、首と腰に巻いた金色の飾りから最低限の布が伸びているに過ぎない。


 何よりの特徴は、その見た目から想像される通り、空を飛ぶことができるということだ。


「殺されに来たのか、フリューゲル?」

「ニュースになってたから、見回りに来ただけだ」

「連れの2人はどうした?」

「見回りって言ったろ。戦うつもりがないんだから、わざわざ連れて来るか」

「じゃあ、とっとと失せろ」

「お前ら……いつまでこんなことを続ける気だ?」


 魔法少女フリューゲルは溜息を吐いた。


「魔法少女を全員殺すまでに決まってるだろ!」

「本気で殺す度胸もないクセに……」


 やれやれと首を振る。


「てめぇ、舐めてんのか! アタシはやれるぞ! さっきだって、魔法少女の頭を吹き飛ばしてやったんだからな!」

「……そうなのか? 死体は出てないみたいだが」

「相手は不死身の魔法少女だったからねぇ。頭を20mm弾で吹き飛ばしても再生されたんだよ」

「何だ。そういう奴だと知ってたからじゃないか」

「アタシは殺す気で撃った! お前も今ここで殺す!」


 マジカルバレットは軽機関銃の引き金を引き弾丸をばらまく。だが、フリューゲルは空中を隼(はやぶさ)のように飛び回り、軽々と回避した。


「やっぱり、本気で狙ってないじゃないか」

「てめぇがちょこまかと逃げ回るからだろ!」

「はいはい。じゃ、またなー」

「おととい来やがれ!」


 フリューゲルは新幹線のような勢いで飛び去り、あっという間に肉眼では捉えられなくなった。


「クソッ……。アタシ、やっぱり向いてないのか……?」

「真銀(ましろ)は根が優しいからねぇ」

「テキトーなこと言いやがって」


 マジカルバレットは武蔵真銀に、アルカロイドは相模慧理(さとり)に戻り、日常に帰っていった。


 ○


「お姉ちゃん、新しい奴はどうだったの?」


 赤い和服を身にまとい、狐のような耳と尻尾が生えた魔法少女、クラミツハは、姉に尋ねた。


 姉のツクヨミも、赤い和服をベースにした衣装を纏い、妹と同じ長い茶髪だ。ただ、耳や尻尾のような目立った特徴はなく、魔法少女姿のままでもギリギリ市井に紛れ込むことができそうだ。


「アシェンプテルの掃除が上手くなる能力は、探知能力として優秀よ。意外に厄介かもしれない」

「でもでも、私たちの敵じゃないよね!」

「ええ。けれど、どんな化学物質でも作り出せるアルカロイド、あれは思ったより厄介かもしれない」

「毒ガスは見えないから?」

「それもあるわ。やはり、先手を打つこともやむなしね」

「みんなで行く? それとも誰かに任せる?」

「機を見て、チェシャーの魔法で奇襲をかけるわ。今はまだその時ではないわ」

「さっすが、お姉ちゃん!」


 ツクヨミとクラミツハの傍には、まだ3人の魔法少女が控えていた。


 ○


「今夜は初めての同衾ね。どこまでしようかしら」

「何もしないから……。床に寝させたりはしないけど、変なことしないでよ?」

「アシェンプテルが言うなら、ええ、わかったわ」


 記憶がないこの少女を、エリクシルと呼ぶべきか橘花と呼ぶべきか。とにかく彼女は、月花のことをアシェンプテル以外の名前で呼ぶつもりはないらしい。


 月花は彼女のことを橘花と呼ぶつもりである。


 と、その時であった。


「月花、連絡が入ったよ」

「連絡……? え、欠片ちゃんにそんな機能があるの?」

「うん! テレパシーみたいなものかな。魔法少女アイギスより、ご挨拶の連絡だって」

「そんなメールみたいな感じなんだ」


 魔法少女アイギスと名乗る相手から『危険な魔法少女に対抗するべく早いうちに合流しよう』との伝言が届いた。願望機の欠片が届いたメッセージを読み上げる。


「そんな奴、放っておけばいいわ。私がいれば何も問題はないもの」

「せっかく仲良くしようって言ってくれてるんだし、会ってみようよ。いや、私は会うから、嫌なら橘花は来なくていいよ」

「そんな素性の知れない連中のところに、アシェンプテルを一人で行かせられるわけないでしょ」

「一番素性が不明な方に言われましても……」

「返信する?」

「うん。お願い」


 そういうわけでアイギスに連絡を返したところ、すぐに返事が来た。そして今夜、というより今すぐ、顔を合わせようということになった。

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