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魔法少女は人殺し  作者: Takahiro
第一章 殺し合いの始まり

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12/15

落ち着かない平日

 帰ってきた月花は色々なことがありすぎて疲れており、すぐに布団に入った。そして橘花が添い寝するのを気にする余裕もなく、あっという間に眠りについた。


 翌朝。カーテンが思いっきり開かれ、月花は起こされた。


「起きて、アシェンプテル。朝よ」

「おはよう……」


 ――何だろう、もう完全に同居するつもりでいるよね。


「……あれ、もう7時!? 学校間に合わないって!! もっと早く起こしてよ!」


 月花は飛び起きるが、橘花は泰然自若としている。


「心配はないわ、アシェンプテル」

「いや、何が!?」

「朝ご飯は私が用意しておいたから」


 橘花は恍惚とした笑みを浮かべた。


「えっ……あ、本当だ」

「我ながらだけど、美味しくできてると思うわ」

「う、うん……」


 テーブルの上には朝食が用意されていた。トーストや牛乳など質素なものではあったが。


「ありがとう。けど、橘花は食べないの?」

「アシェンプテルの食費を使うわけにはいかないわ」

「いや、いいって、そのくらい……」


 そう言うと、橘花は目を輝かせた。


「いいの!? じゃあ今夜は一緒に食べましょう!」

「う、うん」

「用意しておくから、待っててね。アシェンプテルは何もしなくていいわ。同棲させてもらうんだから、家事は全て私がやっておくわ」

「同棲していいとまで言ったつもりはないんだけど……」


 橘花は高校に行くつもりなど全くなく、月花の家で掃除洗濯その他をやってくれるらしい。月花はもう橘花の好きにさせてやることにした。


「じゃあ、高校行ってくるから。16時くらいには帰ってくるよ」

「行ってらっしゃい、アシェンプテル!」


 橘花に笑顔で見送られながら、月花は高校に向かった。


 ○


 月花は家を出てすぐ、カバンに仕舞ってある願望機の欠片に尋ねた。


「橘花を家に置いて、大丈夫だと思う?」

『彼女が月花を守りたいのは本気だろうし、大丈夫だと思うよ。月花のものを物色されるかもしれないけど』

「全く否定できない……。けど、万が一にもエリクシルを敵に回すわけにもいかないか」


 月花にもある程度の打算はある。絶対の不死という強力な固有魔法を持つエリクシルを用心棒にしておけるなら、部屋を物色されるくらい安いものだ。


 ○


 ――まあ、あんなことがあった日の翌日に、マトモに授業に集中できるわけないよね。


 月花の頭の中では昨日の出来事が繰り返し蘇り、とても授業に集中できる状態ではなかった。マジカルバレットが襲いかかってくるのではないかと、何度も窓の外を見てしまう。


 加えて、精神的にも肉体的にも疲れており、眠気も抜けない。


 ほぼ公式を適用するだけの等比級数の問題を解くよう指名されたが、案の定全く手が出ず、恥をかいてしまった。


「月花、大丈夫? 夏風邪でも引いた?」

「ああ、乃愛(のあ)、別にそんなんじゃないよ。大丈夫」


 この明らかに陽キャの少女は足立乃愛という。部活や生徒会といったコミュニティに全く属していない月花にとって、数少ない友達の一人だ。彼女からすれば、月花は数多くの友達の一人に過ぎないのだろうが。


「じゃあ寝不足? めちゃくちゃ眠そうだけど」

「まあ、そんなところかな……。夜更かししちゃったから」

「スマホいじってたの?」

「ま、まあ……」

「怪しいなぁ。何かよからぬことでもしてたんじゃないの?」

「してないよ、そんなこと!」


 月花はむしろ事件に巻き込まれた被害者なので、少しだけ腹が立ってしまった。月花が声を上げたのが予想外だったのか、乃愛はほんの少したじろいだ。


「ムキになって否定するのはいかにも怪しいけど……言いたくないなら言わなくていいよ」

「う、うん……」


 ――ミスった……。気をつけないと。


 結局のところ、高校では何も特別なことは起こらなかった。


 〇


「ねえ、私が知らない魔法少女と連絡を取ることってできないの?」


 帰り道、月花は願望機の欠片に尋ねた。


『知らない魔法少女を指定してメッセージを送ることはできないね』

「じゃあ、私が知らない魔法少女の情報を教えることはできる?」

『それは機密保持の観点から不可能ってことになってるね。魔法少女名だけでも、教えることはできない。ごめんね』

「謝らなくていいよ。むしろ、勝手に私の情報が他の魔法少女に渡ってないなら、安心した」


 〇


 家に帰ると、橘花が当然のように出迎えてきた。


「夜ご飯は私が作るから、アシェンプテルはゆっくりしてて」

「う、うん。ありがとう……」


 ――これは、よくない気がする。


 他人に夜ご飯を作ってもらう楽さに慣れるのはよくないと思いつつ、昨晩の疲れが抜けず、橘花を手伝う気力も湧かなかった。


「私のアシェンプテルへの愛がこもった料理よ。めしあがれ」

「うん、ありがとう。いただきます」


 ――本当に美味しい。料理上手いのは羨ましいな。


 橘花があまりにも愛を囁くので、まだ出会ってから24時間余りしか経っていないのに、月花はもう気にしなくなっていた。


 アイギスとマジカルバレットの決闘まで48時間を切った。

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