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魔法少女は人殺し  作者: Takahiro
第一章 殺し合いの始まり

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10/11

アイギスの思惑

「3年前の第二地下鉄サリン事件、当然ご存知でしょう?」

「うん」

「あの事件で私は、両親を失いました。両親が買い物に出かけている時にあれが起こり、二度と家に帰ってきませんでした」

「そう、なんだ……」

「しかし、あれほどの事件を本当にただのテロリストが起こせるものでしょうか。しかも、犯人は未だ捕まっておらず、犯行の背景も不明。不自然な点が多すぎます」

「それは、そうだね。確かに、個人が毒ガスを製造してばらまくなんて、普通は考えられない」


 第二地下鉄サリン事件について、ネットでは常に陰謀論が囁かれている。米中露などの工作員による攻撃だとか、日本政府が黒幕だとか、しまいには宇宙人の仕業だとか、その説は枚挙にいとまがない。


 政府の公式見解は個人による犯行だが、それを信じている者はむしろ少数派だ。


「私は、あの事件には魔法が使われたのだと考えています。そうでなければ説明できません」

「それで、アルカロイドが犯人って?」

「実行犯かどうかはわかりませんが、広範囲にばらまけるほど大量の毒ガスを個人で製造できる存在など、アルカロイドの他に考えられません」

「可能ではあるんだろうけど……」


 毒ガスを大量に製造するには工場のような設備が必要不可欠だ。それが未だに露見していないのはおかしい。むしろ魔法によって製造されたと考えるのが自然だ。


 しかし、アシェンプテルとしては、その説明に納得できたわけではない。不自然な点も多い。


「あなたたちが初めて変身したのはいつなの?」

「私は4ヶ月前、アリアドネとセラフは3ヶ月前といったところです」

「私なんてつい一昨日だよ。アルカロイドが3年前から魔法少女だったっていうのは、不自然なんじゃない?」

「そういう魔法少女がいないことを証明することはできません。エリクシルさんなど、自分がいつ魔法少女になったか覚えてすらいないそうではありませんか」

「まあ、そうね」

「それはそうだけど……」


 アイギスの言い分はもっともである。最近変身した魔法少女の例をいくら集めても、アルカロイドが3年前に魔法少女ではなかったという証明にはならない。アシェンプテルにはアイギスを説得できそうになかった。


 アシェンプテルが俯いているところに、アイギスは柔らかな声で言う。


「安心してください。私はアルカロイドを殺そうとしているわけではありません。ただ真実を確かめたいのです」

「でも、もしもアルカロイドが犯人だったらどうするの……?」

「その時は……復讐もやむを得ません」

「復讐……」


 そんな言葉を本気で使う人物に出会ったのは初めてだ。アシェンプテルは怖気づいてしまった。だが、復讐のために人を傷つけることは、やはりアシェンプテルには許せなかった。


「ダメだよ。魔法少女の力を、人を傷つけるために使うなんて、私は許せない」


 一切迷いのない言葉であった。


「警察に引き渡せと?」

「どんな事情があっても、ルールの中で罰するべきだよ。ルールを逸脱するのは迷惑だよ」

「ええ、そうですね。私もそう思っています」

「本当に?」

「もちろんです。私はずっと昔、家が火事になって、消防士の方に助けていただいたんです。私はその方のように、この力を人助けに使いたい」

「そう思ってくれるなら……よかった」

「しかし、真実を確かめることは、邪魔しないでください」

「うん。わかってる」


 復讐のために傷つけるのでなければ、アルカロイドやマジカルバレットに真実を問いただすことは止めない。それがアシェンプテルとアイギスの間でついた折り合いであった。


 〇


「アイギスから、決闘の申し込みが届いたよ」

「決闘? はっ、面白いじゃねぇか」


 アイギスはマジカルバレットに決闘を求める伝言を送った。場所は奥多摩の山奥、時間はマジカルバレットに都合がいい日の夜中という条件である。また、誰を連れてきてもいいと言い添えられていた。


 マジカルバレットこと武蔵真銀(ましろ)は、アルカロイドこと相模慧理(さとり)に電話をかけた。わざわざ願望機の欠片を使って不便な伝言のやり取りをすることはない。


「――アタシは乗る気だが、慧理はどうする?」

『アイギスたちの目的がよくわからないから、即座には判断できないけど』

「目的? アタシたちを殺そうとしてるんじゃないのか?」

『確かに、その可能性が一番高いね。その場合、これは罠だ』

「けどよ、罠っつっても、何があるってんだ?」

『確かに、罠が得意なのはどちらかと言うと私たちの方だ。アリアドネには少々警戒が必要だけど』

「ならいいじゃねぇか。どうせあいつらはいっつも3人で固まってんだ。3人同時に相手することは変わりねぇ」

『まあね。それに、いきなりこんなことを言い出すのは気になる。ただ私たちを殺そうとしているだけではない気がする』

「何だそれ?」

『ただの直感さ。どうせ他に味方もいないし、最大限に警戒しつつ、乗ってみようじゃないか』

「了解!」


 マジカルバレットはアイギスに決闘を受諾するメッセージを送った。日付は今週の水曜日ということになった。

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