第四十一話 ヒロイン集結
刻との戦いの翌日
俺は頭痛に苛まれながら起きた。
「う〜ん、やっぱり魔眼を使うと頭が痛くなるのがなぁ」
俺が嘆いていると刀也が話しかけてくる。
「こればかりはしょうがないだろう。力に代償はつきものだ」
まぁ確かにそうだ。仕方がないので頭痛に耐えながら学校へと行く。
校門で祈闘さんと優奈さんに出会う。
「二人ともおはようございます」
「おはよう」「おはようございます」
俺たちは話をしながら歩いていく。
「それにしても刻の奴、かなり丈夫でしたね」
「はい、まさか共舞を喰らっても少しの間気絶するだけとは思いませんでした」
「起きてすぐにリタイアして一人で帰っていくくらいだもんね」
刻はあの後5分ほどして目を覚まし、素直に負けを認めてリタイアした。
俺の攻撃で体をざっくりいかれているはずだが、前回も使っていた回復の魔術で応急処置をして一人で帰っていった。
「そういえば黒峰さん、あなたが昨日切ったあの式神のことなんですが……」
祈闘さんが呪禍の式神について話そうとした時、一人の少女が話しかけてくる。
「先輩!おはようございます!」
「あぁ、百合!おはよう。元気だったか」
短い黒髪と浅黒く焼けた肌が活発な印象を思わせる少女、黒木百合だ。
「最近は学校に来てなかったみたいだけど元気だったか?」
人から聞いた話なのだが、百合は薔薇との戦いから学校に来てなかったらしい。
自分を殺そうとしたとはいえ兄が死んだのだからショックを受けたのだろうとそっとしていたのだが、今日は学校に来たようだ。
「はい、兄さんの葬式とか何やらで少し忙しくて……」
薔薇との戦いから約一週間、ようやく落ち着いたということか。
「お父さんから決議について聞きました。先輩たちは今大変な戦いをしてるんですね」
彼女の両親は離婚していて彼女自身は魔術師ではないが、父親が七大魔家、術木家の当主なため、決議について聞いたらしい。
「まぁ、大変ではあるが俺も、みんなも頑張ってる。負けはしないさ」
慢心はするつもりはない。しかし、弱気になることはない。
ただ全力でこの戦いに勝つだけだ。
「そうだ先輩、前に言っていた記録会。今度の日曜日なんで、絶対に見に来てくださいね!私、頑張りますから」
意気込む彼女はとても眩しく見える。
俺も負けてられないな……。
「あぁ、必ず見にいく」
予鈴が鳴った。
俺たちはそれぞれの教室へと入っていく。
教室に入って少しするとチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
「よーしお前ら席に着いたな、今日は午後から写生大会があるからな、ちゃんと用意してあるかー?」
そういえば今日は写生大会がある日だったか。
さて今回ではどうするか……。
午前の授業が終わり、昼休みになる。
いつも通り屋上で二人とともに弁当を食べる。
弁当を食べていると優奈さんが話し出した。
「そういえば、今日は写生大会があるわね」
来たな……!もしまた勝負をすることになったら祈闘さんの不器用を晒してしまう。
流石にそれはまずいだろう。
ならばここは無難に話を終える!
「そうですね。授業時間中は学校の周りを自由に歩きまわっていいらしいですけど、何を描くか迷うんですよねぇ」
頼む優奈さん、ここで話を終わってくれ……!
「それならみんなで勝負しないかしら。一つお題を決めて誰が一番上手く描けるか競うの」
な、何ぃ⁉︎優奈さんから勝負の提案だと⁉︎まずい、前回は俺から勝負を仕掛けたから今回は俺から勝負を持ちかけなければいけると思ったがまさか優奈さんから持ちかけてくるとは……!
「なぁ刀也、どうしよう?このままではまた祈闘さんが恥をかいてしまう!」
俺と刀也は脳内会議を始める。
「落ち着け、まだ手はある。ここは冷静に勝負は嫌だと言うんだ。そうすれば勝負は行われない筈だ」
確かにそうだ。優奈さんも誰かが嫌と言えば無理に勝負しようとしない筈……!
「う〜ん、すいません魔使さん。あまり自信が無いので勝負はやめときます」
「あらそう?残念ね。まぁ、無理強いはしないわ」
よかった優奈さんは素直に引いてくれた。
そして祈闘さん、こっそりと仲間を見つけたと言わんばかりの視線を向けないでくれ。
心が痛い……!
昼休みが終わり、午後の授業、写生大会が始まった。
「それじゃあ、各々好きなように描くということで」
「えぇ」「はい」
俺たちはばらばらに散っていった。
勝負ではないが一応授業なので真面目に描くとしよう。
それなりの時間が経ち、もうじきチャイムが鳴る。
俺は校門まで戻ってきていた。
絵は前回描いたものを刀也とともにさらに手直しをした。
やはり生まれた時から魔眼の世界を見ていると見る目が鍛えられるらしい。
俺がさっさと先生に絵を提出しようとしたその時、祈闘さんが俺を見つけた。
「あぁ黒峰さん、絵は描けました?絵を描くのって大変ですよね」
違うんだ祈闘さん!俺ら別に下手じゃないし、あなたを傷つたくないから勝負しなかったんだ。
そんな仲間を見るような目で見ないでくれ!
「そうだ、お互いに絵を見せ合いません?そうすれば笑い話しくらいにはなると思うんです」
「え!あーいや、俺のはほんとに見せられないんで、いや本当に」
俺は絵を隠しながら後ずさる。
まずいぞ!正直この絵はめちゃくちゃ上手い。こんなの祈闘さんが見たらショックを受けてしまう!
「いいじゃないですかお互い下手同士、傷を舐め合いましょう?」
祈闘さんが近くに合わせて俺も後ずさる。
しかしその時、強めの風が吹いて絵を落としてしまった。
絵は地面に落ち、祈闘さんの目に止まる。
「あ」
「え?」
祈闘さんが固まる。
「トテモ……ジョウズナ……エデスネ」
「祈闘さん⁉︎」
祈闘さんの言葉がカタコトに⁉︎
「ワタシ……テッキリ……クロミネサンガヘタナノカト……」
「祈闘さん⁉︎戻ってきてください。祈闘さーん!」
祈闘さんはしばらくカタコトから戻らなかった。
放課後、俺たちは黒峰家に集まり次の戦いについて作戦会議を開いていた。
今回は祈闘さんの言葉から始まった。
「次に戦う候補者なのですが、私は呪禍桔梗を勧めます」
「それはどうして?」
優奈さんの疑問に祈闘さんが答える。
「前に私たちが刻 印と戦った時黒峰さんが何かを切ってましたよね。黒峰さん、それは紙でできてませんでしたか?」
「はい。あの日切った物体は紙でできてました。漫画とかでよく見る式神ってのに似てましたね」
「そうですか、ならばやはり私たちは呪禍桔梗に見張られていましたね」
祈闘さんはやはりすでに気づいていたらしい。
俺は前回の戦いで呪禍があちこちに候補者を見張る用の式神を飛ばしていたことを知っていたため切ることができた。
おそらく祈闘さんも式神につけられていたことを知って自分たちが見張られていたと気づいたのだろう。
威嚇のためにも、こちらの手札がなるべく悟られないようにするためにも、式神を切ったが、そうすることで呪禍にこちらのことを警戒されただろう。
そうなれば時間を与えれば与える程奴にとって有利になる。
ならば、できる限り速く奴を叩かなければならない。
「あれは呪禍家の技術によって作られた式神という魔道具です。紙に魔力を込めることで自由に操作できるようにして攻撃や偵察に使います。黒峰さんが呪禍の式神を切ったのでこれ以上こちらの手札がばれることはありませんが、相手も警戒するようになったはずです。時間を与えない方がいいでしょう」
「わかったわ、なら次の相手は呪禍家当主、呪禍桔梗ね」
「それじゃあ、作戦を立てましょうか」
三重県 間界 某所
夜闇の中、呪禍は一人高笑いをしていた。
「フハハハハハ!これなら勝てる!少々リスクを負うことになったが、これであの小娘を叩き潰せる‼︎」
俺は知ることになる。
たとえ一度倒せた相手だとしても相手の全てを知っているわけではないことを。
俺たちが今まで七大魔家の当主を倒せていたのはひとえに相手の油断があったということを。
俺は二周目に入って初めて死を味わうことになる。




