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第四話 黄色いバラの毒

今日もまた朝ごはんを食べ、支度をして、魔使さんと共に学校へ行く。

 数日は戦闘訓練をするつもりなので今日もまた学校が終われば間界に行くつもりだ。



 午前の授業が終わり、昼休みになったので魔使さんと合流するために屋上へ行こうとする。

 その時、一人の女性が教室に入ってきた。

「すいません、黒峰先輩はいますか」

 自分の名前が呼ばれ、声がした方を振り向く、セーラー服を来た女子生徒は知らない人だった。

 俺のことを先輩と呼んだということは一年生だろうか?

「はい、俺が黒峰だけど、何か用?」

 とりあえず、俺を呼んだ女子生徒と話をすることにする。

 女子生徒が自身の用事を話し出す。

「あの、私、百合ちゃん……黒木さんの友達なんですけど、今日は何の連絡も無しに休んでるみたいで、黒峰先輩は

 黒木さんと仲が良いらしいですし、何か知りませんか?」

 百合が休み?俺の方にも何の連絡も入っていない。

 というか、兄が学校にいるのだからそちらに聞いた方がいいのではないだろうか。

「いや、俺の方も何も聞いてないよ。ていうか、薔薇の方に聞いてみたら何か知ってるんじゃないか?」

 俺は薔薇の方に聞くことを提案し、女子生徒がそれに答える。

「それが、最初に術木先輩に聞きにいったんですけど、術木先輩も今日は休んでるみたいで」

 そりゃあ、最初に薔薇に聞きにいくか。にしても、薔薇も休みなのか、確かにあいつなら昼休みになった途端に教室に来そうなものだし本当に休みみたいだな。

 ひとまず、何の情報も無いので女子生徒には帰らせることにする。

「わかった、何かわかったら連絡するから今日はいったん帰りな」

 俺がそういうと女子生徒は自分の教室に帰っていった。

 その後魔使さんが教室に来て屋上で話しながら弁当を食べることにする。


 

 弁当を食べながら俺は百合と薔薇が連絡も無しに休んでいることを魔使さんに話す。

「これ、どう思います?」

 俺の質問に魔使さんが答える。

「そうね、何か事件に巻き込まれている可能性はあるわね。問題はそれが普通の犯罪か魔獣や魔術師が関わる事件かってことね」

 魔使さんが続けて話す。

「普通の人が被害者なら事件に巻き込まれていてもただの犯罪の可能性が高いけど、術木薔薇は七大魔家の術木家、そして黒木百合は術木薔薇と兄妹なんでしょ?ということは魔術師の一族、たとえ本人が魔術を使えなくても何かしらの魔術事件に巻き込まれている可能性が高いわね」

 やはり、魔使さんも薔薇と百合が何かしらの魔術的事件に巻き込まれている可能性を疑っているらしい。

 俺は一つ疑問が浮かび、魔使さんに質問する。

「今思ったんですが、警察って魔獣や魔術師が関わる事件って捜査できるんですか?」

 俺の質問に魔使さんが答える。

「いえ、魔術事件では警察は捜査できないわ。正確には捜査していくなかで魔術が関わっていると判断されると警察の管轄から魔術組合の管轄に変わるわ」

 なるほど、魔術組合は魔術の世界での犯罪を取り締まる役目もあるのか。

 とはいえやはり心配だ。なので魔使さんに一つ提案をする。

「あの、魔使さん、俺たちで二人を探しませんか?」

 俺の提案に魔使さんが答える。

「はっきり言うと、私たちが探す必要は無いわ。

 警察や組合が捜査をするでしょうし、なんなら何も事件に巻き込まれていなかったなんてことがあるかもしれないしね」

 そうだ、魔使さんの言葉は正しい、それでも俺が、黒峰刀也がそうしたいと思っている。

 俺が魔使さんをじっと見つめていると、魔使さんはけれど……と続けて言う。

「けれど、あなたがそうしたいと思ったのでしょう?

 ならばそうするべきよ。それに、心残りがある状態で訓練をしても身にならないしね」

 どうやら協力してくれるらしい、俺は魔使さんにお礼を述べる。

「ありがとうございます魔使さん」

 魔使さんは少し、気恥ずかしそうにしながら今後の計画を立てる。

「そ、それじゃあ、二人を探すならまずは聞きこみね、二人のクラスメイトに聞いてみましょうか」


 俺たちは午後の授業を終えた後、聞き込みを開始することにした。

 まず最初に聞き込みをしたのは、昼に俺に百合の行方を聞きにきた女子生徒だ。

「百合ちゃんの昨日の行動ですか、いつもなら部活にいったり、部活が無ければ一緒に帰ったりするんですけど、

 昨日は部活が無いけど、お兄さんと一緒に帰るからって一人で出ていったんです、その後のことは知りません」

 どうやら百合は昨日、薔薇と共に帰ろうとしていたらしい。もしかしたら、薔薇を狙った犯罪に百合も巻き込まれたのかもしれない。


 続いて聞き込みをしたのは薔薇のクラスメイトだ。

 だが、薔薇は彼のクラスとはあまり仲良くはないようで、

 あまり情報は得られなかった。

 しかし、最後に聞いた男子生徒が一つ気になることを言っていた。

「そういえば、術木のやつ、帰りにすれ違った時に

 『百合の話って何だろう?』って言ってたなぁ」

 これはつまり、百合が薔薇に何か話をするために共に帰ろうとしたということだ。

 一体百合は何を薔薇に話そうとしたのだろうか?

 この疑問はひとまず事件に関係なさそうなので、頭の隅に留めておく。



 俺たちは聞き込みを終えて、ひとまず校庭のベンチで休憩することにした。

 俺たちは捜査が行き詰まっていることを実感し、途方に暮れていた。

「やっぱり、俺たちが捜査をするなんて無理があったんですかね、せめて行方がわからなくなった最後の地点が分かればいいんですが」

 俺の弱音に魔使さんも同意する。

「そうね、二人の帰宅ルートを辿っていけば何か分かるかもしれないのだけれど」

 魔使さんの一言を聞き、俺は元気を取り戻す。

「そうだ!それですよ!魔使さん‼︎二人の帰宅ルートを辿っていけばいいんだ‼︎」

 魔使さんは急に元気を取り戻した俺に困惑しながら言葉を返す。

「えっ?あなた二人の帰宅ルートを知っているの?」

 魔使さんの言葉に俺は当然とばかりに返す。

「えぇ、俺は二人の家にも何度か行ったことがあるので二人の帰宅ルートも知っています」

 ()自身は二人の家に行ったことは無いが黒峰刀也の記憶には二人の家までの道のりが残っている。

 そんな俺に魔使さんは叫ぶ。

「それをっ‼︎早くっ‼︎言いなさいよ‼︎」

 そんなわけで俺たちは二人の帰宅ルートを辿ることにした。



 二人の帰宅ルートを辿りながら俺は魔使さんにルートを説明する。

「二人は隣の愛知県から電車で来ているんです。なので、ひとまず最寄駅まで辿っていきましょう」

 俺の説明に魔使さんは納得したように返す。

「なるほどね、確か術木家は中部地方の担当だったわね。なぜ三重の学校に来ているかは謎だけど」

 そんな風に俺たちは二人の帰宅ルートを辿っていく。

 しかし、別段おかしな点は見当たらない。

「う〜ん、何も見つかりませんねぇ。二人が失踪したのは愛知県に入ってからなんですかねぇ」

 俺がそんな風にぼやきながら帰宅ルートを辿っていると、ふと、視界の端に見慣れた黄金色の髪が目に入った。

「薔薇!魔使さん、薔薇がいました!」

 俺の言葉に魔使さんが反応する。

「術木薔薇が⁉︎いったいどこに⁉︎」

 俺たちは薔薇のもとに駆け出す。

 薔薇はセーラー服を着た女性とともに路地裏へと入っていく。

 女性は東神高校の生徒だろうか?

 そして何故薔薇は学校にも来ず、あの女子生徒と路地裏に入ろうとしているのか、ともかく、それらは薔薇に直接聞けばいい話だ。

 今は薔薇を追いかけることに集中する。

 薔薇を追いかけながら魔使さんが俺に話しかける。

「黒峰くん!術木薔薇はひょっとしたらあの女子生徒と共に間界に行くつもりなのかも」

 魔使さんの推察に俺は驚く。

「えっ⁉︎間界⁉︎ってことは、あの女子生徒は魔術師ってことですか?」

 俺の言葉を魔使さんが訂正する。

「いいえ、正確には魔術師が側にいれば間界には魔術師でなくとも入れるわ。要は間界への扉を開くのに魔力が必要ってだけだしね」

 魔使さんの言葉を聞いて一つの考えが()ぎる。

 もし、あの女子生徒が魔術師でないならとても嫌な予感がする。

 薔薇はすでに間界へと入ったようで、俺たちも続いて間界へと入る。



 先程までの街並みにそっくりだが、空は赤黒い。

 いつも通りの間界だ。

 間界に入ってすぐの場所には薔薇が見当たらず、あたりを見渡す。

「くそっ!薔薇のやつどこに行ったんだ?」

 その時、どこかから女性の悲鳴が聞こえた。

「魔使さん!」

 俺は魔使さんの方に振り返って呼びかける。

「えぇ、聞こえたわ、すぐに向かいましょう」

 俺たちは悲鳴のした方に走り出した。


 俺たちが悲鳴の聞こえた場所に辿り着いた時、そこには信じられない光景が広がっていた。

 薔薇の腕が女子生徒の胸を貫いていたのだ。

 信じられない光景に俺は動揺するが、なんとか声を絞り出す。

「そう……び?お前、何やってんだよ?」

 薔薇は俺の声を聞いていつものようにに返事をする。

「あれっ?刀也じゃん。こんなところでどうしたの?」

 薔薇の言葉に俺は声を荒げる。

「どうしたもこうしたもねぇよ‼︎お前こそ何やってんだよ‼︎」

 薔薇はやっと質問の意味を理解したようで、一度地面に倒れた女子生徒を見下ろした後答える。

「あぁ、これね。()()()()

 薔薇はなんでもないかのように答えた。

 そんな薔薇の回答の意味がわからず、俺また質問をする。

「はぁ?ゴミ掃除って、お前がやったのは人殺しだろ⁉︎

 なんでこんなことをしたんだよ⁉︎」

 俺の続けての質問に薔薇は少し考えた後答える。

「んー、そうだね、少し長くなるんだけど。刀也は僕との出会いを覚えてる?」

 薔薇の言葉に一瞬フリーズしたがすかさず俺も答える。

「あぁ、覚えてる。俺とお前がまだ小学校に満たない小さな頃、お前が誘拐されそうになって、俺が大声を出して周りに知らせたら誘拐犯はお前を置いて逃げていった」

 この記憶は黒峰刀也の中でも大事な記憶なようで、俺にもしっかりと受け継がれている。

「あぁそうさ、優しかったお姉さんが唐突に僕の手を引っ張り出して、すごく怖くって、君がもしあそこで僕を助けてくれなきゃもし、無事に帰れたとしても僕は人間不信になってただろうね。それから少し君と仲良くなって、小学校は別々だったけど中学校で再会できた時は運命だと思ったよ」

 薔薇はまるで酔っているかのようにうっとりとした表情で話し続ける。

「あの日から君は僕にとってのヒーローなんだよ。優しくって純粋なヒーローなんだ。」

 薔薇はそこまで言った後、先程までと打って変わって

 能面のような表情になる。

「でもね、それじゃダメなんだよ。君のその優しさは勘違いした()()まで引き寄せてしまう。

 君の優しさという蜜を吸うためにね。僕が君の側にいれば大抵の奴は僕の方に寄ってくる。でもいくらかは君の方にすり寄ってしまう。君の価値が理解(わか)るという意味では見る目があると言えるけど、君に近づこうとするなら誰だろうと容赦はしない。たとえ、実の妹だろうとね」

 薔薇のその言葉に俺は固まる。

「おい、お前、実の妹でも容赦しないってまさか⁉︎」

 俺の言葉に薔薇はなんでもないかの様に答える。

「そうだよ、僕は百合を殺した」

 信じたがたい言葉に俺は疑問を口にすることしかできない。

「どうしてっ⁉︎」

 俺の質問に薔薇は答える。

「どうしてって、そりゃあ、百合が君に近づこうとしたからさ。百合はね君のことが好きだったんだ、昨日僕に君への告白をどうしたらいいかって相談してきてね、妹だから君と一緒にいることを許してたけど告白すると言うなら容赦するわけにはいかない。もし、君が誰かと結ばれれば君が(けが)れてしまう。だから殺した。実の妹を手にかけるのはとても辛かったけどね。ついでに前々から君にすり寄ろうとしていた奴も殺すことにしたんだ。この女もその一人だよ」

 薔薇はそう言って足元の女子生徒を指す。

 はっきり言って今すぐにでもこいつを殺してやりたいが、それでもこれだけは聞いておかなければならない。

「薔薇、一つ質問だ。罪を認めて投降する気はあるか?」

 俺の質問に薔薇は首を横に振る。

「いいや、もし僕をここで殺さなければまた僕は同じことをするよ。にしたって、まだそんなことを言うだなんて君はやっぱり優しいね。百合を殺したことを言えばすぐにでも僕を殺そうとするかと思っていたよ」

 薔薇はそう言った後、少し思案して話す。

「そうだ、まだ決心がつかないなら君が僕と戦う理由を増やしてあげるよ」

 そう言って薔薇は自身の右手の甲を見せながら魔力を込める。

「これな〜んだ」

 そう言った薔薇の右手には魔使さんと同じ太陽を模した紋様が浮かび上がっていた。

「それは⁉︎候補者の⁉︎」

 俺は驚いて思わず叫ぶ。

 そしてすぐに自分が魔使さんは候補者だとバラしてしまったと理解する。

「あぁ、やっぱりそこの魔使は候補者だったんだね。

 これで戦う理由が増えたよ、どうする、刀也?」

 もはや戦いは避けられないと分かっているが、それでも最後にもう一度だけ聞く。

「最後にもう一度だけ聞くぞ。罪を認めて投降する気はあるか?」

 薔薇は少し嘆息しながらも答える。

「はぁ、ごめんだけど刀也、僕は変わる気はないよ」

 その言葉を聞き、俺は戦う覚悟を決める。

「薔薇っ‼︎」

 俺の叫びに薔薇が答える。

「来なよ、僕の刀也(ヒーロー)‼︎君は僕という()を許しちゃいけない‼︎」

 こうして俺の初めての候補者同士での戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

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