第五話 バラを手折る
申し訳ありません、第五話が抜けていました
俺たちと薔薇の戦いが始まる。
「薔薇っ‼︎」
俺は体に魔力を漲らせながら薔薇へと突き進んで行く。
「黒峰くん!」
魔使さんが俺の身体能力を強化する。
薔薇が俺を迎え打つために構える。
「行くよ、刀也、【鱗甲】!」
薔薇の腕が鱗のようなもので覆われる。
薔薇はその鱗で覆われた腕で俺に殴りかかる。
俺はその攻撃を避け、いったん距離をとる。
距離をとった俺に魔使さんが忠告をする。
「気をつけて黒峰くん、術木家の魔術師は固有の魔術を持たないけれど、独自の技術で魔獣の能力をその身に再現するわ」
なるほど、今薔薇の腕を覆っている鱗は何かしらの魔獣の能力ということか。
魔使さんの忠告を薔薇が肯定する。
「さすがは魔使家の次期当主、よく知ってるね。
そうだよ、僕たち術木の魔術師は固有の魔術を持たない。魔獣を捕らえ、研究することで肉体を魔獣に近づける術を編み出したんだ」
そして……と薔薇が魔力を高めながら続ける。
「そして、こんなこともできる」
薔薇は背中を丸めながら力む、すると、薔薇の背中から服を突き破って八本の触手が生えてくる。
「【触腕】伸縮自在、何度だって再生する触手さ」
そう言って薔薇は八本の触手を操って攻撃を仕掛ける。
速度はそこそこあるが、だとしても俺の魔術の敵ではない!
「【切断】!」
八本の触手は瞬く間に切られ、薔薇は苦悶の表情を浮かべる。
「ぐうっ⁉︎痛いじゃないか、刀也。でも、さすがだよ、僕の触手を一瞬で全て切るだなんて、何度だって再生するとはいえ痛覚があるからね。少しきいたよ」
そう言いながら薔薇は触手を再生する。
「じゃあこんなのはどうだい?【触腕】+【鱗甲】、【鱗甲腕】!」
薔薇の背中の触手が鱗によって覆われる。
「この触手は鉄よりも硬いよ。さっきみたいに切れるかな?」
鱗によって強化された触手が俺に向かって襲いかかる。
「黒峰くん‼︎」
魔使さんが心配の声を上げる。
「大丈夫です魔使さん、問題無く切れます」
先程と同じく、全ての触手が瞬く間に切られる。
これには流石の薔薇も驚いたようで、余裕を崩している。
「いやはや、驚いたよ。これでも鉄より硬いはずなんだけどね。それを全部切るなんて、それが君の魔術かい?」
薔薇の質問に答える。
「そうだ、俺の魔術で切れないものは無い。諦めろ薔薇」
俺の答えに薔薇が返す。
「確かに君の魔術に切れないものは無さそうだけど、それだけで勝敗が決するほど僕は甘くないよ」
薔薇は今だ戦闘意欲があるため戦うしかない。
次は俺から仕掛けることにする。
魔術を発動しながら一息で距離を詰める。
そしてそのままナイフを振り払う。
「はあぁ‼︎」
「おっと」
薔薇は俺のナイフをすんでのところで避ける。
攻撃の暇を与えないために連続で攻撃する。
「少し、動きが単調すぎるんじゃないか?刀也‼︎」
俺のナイフを避けた隙に薔薇はカウンターを放つ。
「ぐっ!」
ギリギリのところで避けたが距離を取られてしまう。
薔薇が続けて仕掛ける。
「僕はね、こんなこともできるんだ」
薔薇が大きく息を吸い込んで吐き出す。
「【煙幕】」
あたり一面が煙に巻かれる。
俺は薔薇を見失い、あたりを見回ることしかできない。
「僕はこっちだよ、【収束腕撃】!」
「ぐうぁっ‼︎」
唐突に現れた薔薇が腕に触手をまとわり付かせて放った強力な一撃によって俺は吹き飛び壁に叩きつけられる。
「黒峰くん⁉︎」
魔使さんが俺を心配している、なんとか立ち上がる。
「げほっ、ごほっ、くそっ、痛ってーな」
体中がものすごく痛い、どこかの骨が折れているのだろうか?いくらか出血もしている。
そんな俺を見て薔薇は驚く。
「まじか、今の一撃完璧に入ったから全身の骨が折れててもおかしくないんだけどまだ立てるの?
もしかして、魔使の【使役】で契約して体が魔獣に近づいたりでもしたのかい?」
どうやら今の一撃は薔薇の中でもかなり強力な一撃らしい。なぜ立てているのかは俺にも分からないがまだ立てるのなら戦うしかない。
「ハッ、こんな一撃、屁でもねーよ、まるでマッサージかと思ったぜ」
強がってはみるが、かなりまずい、まだ動けるうちに薔薇を仕留めなければいけない。
「魔使さん‼︎」
魔使さんに声をかけ、ここで一気に仕留める気だと伝える。
魔使さん曰く、魔使家の魔術は契約した魔獣を強化する術があるが、その魔術は大まかに分けて二種類あるらしく、一つは強化幅が小さい代わりに持続時間が長い、普通の【身体強化】、そして、持続時間が短い代わりに強化幅が大きいもう一つの魔術の名前が――
「【瞬間強化】!」
俺の身体能力がさらにブーストされる。
残像が見える程の速度で薔薇に肉薄し、その首を狙う。
「ぐっ⁉︎」
薔薇の首から鮮血が吹き出すがギリギリのところで薔薇は首を傾けたため致命には至らない。
「くそっ!浅かったか!もう一度!」
すぐさま振り返り、もう一度薔薇の首を狙う。
「悪いけど逃げさせてもらうよ」
「なっ⁉︎」
薔薇は大きく飛び上がり空へと逃げる。
その背にはすでに触手は無く、代わりに大きな黒い翼が生えていた。
上空へと逃げた薔薇が話しだす。
「ねぇ、刀也、魔獣の成り立ちって知ってるかい?」
「はぁ?急に何言ってるんだお前⁉︎」
薔薇の突然の質問に意味がわからず聞き返す。
薔薇はそのまま話を続ける。
「魔獣は間界に溜まった魔力に人間の想念が結びつくことで生まれるんだ。つまり、たとえ表の世界で架空の存在とされている生物だったとしてもその生物の概念があるならば魔獣として存在することができる。
そう、たとえばドラゴンとかね」
薔薇の言葉に俺は驚く。
ドラゴン?まさか今薔薇の背に生えている翼はドラゴンの翼だっていうのかよ⁉︎
薔薇は滞空しながら話を続ける。
「僕はドラゴンをベースに誕生したと思われる魔獣の力を再現している。ドラゴンと言えばの攻撃方法もね」
そう言って薔薇は口を大きく開けて魔力を溜め始める。
「おいまさか!ドラゴンと言えばの攻撃って‼︎」
薔薇は上空を飛んでいる。近くの家を登れば近くことができるかもしれないが、少し上に飛んで終わりだろう。
つまり今できることはいつあの攻撃が発射されても逃げられるように準備することだ。
俺がそんな風に考えていると薔薇が話し出す。
「刀也、君を殺さないように加減するのは難しそうだからね。先に邪魔者を消すことにするよ」
薔薇のその言葉で俺は凍りつく。
まずい!あいつの狙いは魔使さんだ‼︎
「魔使さん!逃げて‼︎」
魔使さんも自分が狙われていると感じたようで走り出す。
「もう遅い‼︎【竜の息吹】!!」
巨大な熱と光の奔流、それは紛れもなく現代に存在せし、竜の咆哮。
躱すのは不可能、たとえ、魔力で強化した肉体であれどまともにくらえば骨すら残らない。
魔使優奈は己の死を覚悟した。
「間に……合えっ‼︎」
しかし、一つの影が魔使優奈を押し退ける。
黒峰刀也である。
「すいません、魔使さん」
そう言って黒峰刀也は光に飲み込まれた。
「はっ、ここは⁉︎」
見渡すとそこは教室だった。つまりは死んだのである。
鮮やかなピンク色の髪を持ち、教師のような格好をした女性が話しかけてくる。
「また会ったわね」
「あっ、ナビ子!」
「そうよ〜、みんなのアイドル兼先生のナビゲート・システムことナビ子よ♪」
前回は純白のドレスを着ていたナビ子は何故か、今回は教師の格好をしている。
「なんで教師の服?」
「ここは教室だからね。やっぱりドレスよりこっちの方がいいかなって思ったの」
そう言ってナビ子は見せつけるように一回転する。
「それじゃあ、黒峰刀也、あなたは死にました。ヒントを受け取ってリスポーンしますか?」
「ヒント?」
どうやらヒントをくれるらしい。
「えぇ、そうよプレイヤーが死んだ時にヒントを教えるのも私の役目なの」
「そうだったのか、じゃあヒントを教えてくれ」
「わかったわ。まず、あなたの死因である【竜の息吹】
だけども、結構タメがあったでしょ」
そう言われれば薔薇がブレスを溜め始めてから発射するまで、それなりに時間があった気がする。
「だから、術木薔薇がブレスを溜めている時に攻撃を加えられれば彼は自爆するわ」
どうやらあの技は結構繊細なものらしい。
とはいえ、上空の薔薇にどう攻撃を加えるかが問題だ。
「そしてもう一つ」
その後俺はナビ子に上空の薔薇に攻撃を当てる方法を教わった。
「それじゃあ、行ってくる」
俺は作戦を立てて、リスポーンすることにする。
「えぇ、行ってらっしゃい」
俺の意識はすぐに落ちていった。
「来なよ刀也、君は僕という毒を許しちゃいけない‼︎」
目が覚めるとそこは薔薇との戦いが始まった瞬間だった。
「行くよ刀也、【鱗甲】!」
手に鱗を纏わせた薔薇が俺に襲いかかる。
俺はその攻撃をすんでのところで避け、返す刀でその腕を切り落とす。
「はぁっ!」
「がっ⁉︎」
腕を切り落とされた薔薇はすぐに距離をとる。
「やるね刀也、でも僕は腕くらいなら何度だって再生するんだ」
そう言った薔薇の腕はその言葉通りに再生していた。
【竜の息吹】の対策は考えてあるが、撃たれないにこしたことは無い。
反撃の暇を与えずに攻撃を続ける。
「【触腕】!」
薔薇はそんな俺を触手によって迎撃しようとする。
しかし、その触手は尽く切り落とされ、俺の接近を許してしまう。
「終わりだ、薔薇‼︎」
俺は薔薇の首を目掛けてナイフを振るう。
しかし、薔薇も大人しくやられようとはしない。
「いや、まだだよ」
薔薇は先程切り落とされた触手を再生しながら回転する。
「うわっ⁉︎」
俺はたまらず距離をとる。再生しながらだったので範囲は小さかったが薙ぎ払い攻撃によって距離をとらされてしまった。
「僕の奥の手を出すしかないね」
そう言って薔薇は翼を広げ、空に逃げてしまう。
まずい、飛ばれた!またブレスを吐く気だ!
思った通りに薔薇は口を広げて魔力を溜め始める。
だが、先程までの俺とは一味違う。
「魔使さん‼︎」
俺は魔使さんにさらなる強化を願う。
「【瞬間強化】‼︎」
俺の意思を汲んでくれたようで魔使さんからさらなる強化を施される。
「薔薇っ!」
俺は薔薇の近くの住宅の壁を駆け上がり薔薇の近くまで
跳び上がって切りかかる。
「おっと危ない」
当然薔薇はさらに上昇して俺の攻撃を避ける。
「残念だったね刀也。君の攻撃は当たらない」
魔力を溜めながら薔薇が俺を憐れむ。
「いや、そうでもないぜ」
「なに?」
唐突に笑った俺を薔薇は怪しむ。
「ここまで近づけば簡単に当たるぜ‼︎」
俺は魔力で強化したナイフを投擲する。
狙うのは翼、これにより薔薇は飛行能力を失い、墜落する。
「ぐぅあっ⁉︎」
制御が乱れたので薔薇の溜めていた魔力が暴発し、薔薇がダメージを負う。
俺が地面に降り立ったすぐ後に薔薇が墜落してくる。
「がっ、はっ。刀也、まさか、そんな作戦があるとは、体の中でも脆い部分を狙ったんだね」
そう薔薇の言う通り俺は翼を狙った。
ただ魔力で強化したナイフでは同じく肉体を強化している薔薇の体に刺さるかどうかは五分だった。
刺さればいいが、確実にダメージを与えるために
飛行能力の中心であり、肉体の中でも脆い部分であろう翼を狙ったのだ。
薔薇は全身に火傷を負い、再生も遅くなっている。
「今度こそ終わりだ薔薇」
俺は薔薇に近づき、その首にナイフを突き立てようとする。
「ふふっ、残念だけど、まだだよ」
「えっ?」
薔薇のその言葉を聞いた瞬間、首筋にチクリとした痛みが走った。
「あっ?えっ?」
俺は前に倒れ伏し、体を動かすことができない。
「黒峰くん⁉︎」
魔使さんも何が起こったのかわからず困惑する。
薔薇は立ち上がり、ただ一人、事態を理解していた。
「指ひとつ動かせないでしょ。かなり強力な麻痺毒だからね。もし刀也に毒の耐性があったらどうしようと思ったけどちゃんと効いてくれてよかったよ」
薔薇は完全に傷を治しきり、魔使さんへと近づいていく。
「それじゃあ、刀也。今から君を唆した悪い魔女を殺すとしよう」
「あ……え……ろ」
麻痺毒によって呂律が回らず、ただ拳を握ることしかできない。
薔薇は魔使さんへとゆっくり近づいていく。
魔使さんは逃げながら薔薇を迎撃しようとする。
右手を前に出し、詠唱する。
「その属性は炎!その形を矢に限じ、敵を撃て!【火矢】!」
三発の火矢が薔薇を襲う。しかし、薔薇には傷一つつかない。
「子供が魔力操作を覚えるための基礎魔術で肉体を強化した魔術師に傷を負わせられるわけないでしょ。
まぁ、膨大な魔力を込められれば話は別だけど」
そう言って薔薇は右手を構える。
「それじゃあ、死ね。【鱗甲】」
薔薇が右手を突き出し、鮮血が舞う。
魔使さんは目を見開き、疑問を口にする。
「なん……で」
薔薇の手は俺の胸を貫いていた。
「ごほっ、なんとか、間に合って、よかったです」
本当にギリギリだったが動ける程度に毒が抜けて間に合うことができた。
俺の胸を貫いた薔薇が絶叫する。
「刀也‼︎どうしてそんなやつを庇ったんだ‼︎
こんな……あぁ……あぁ‼︎」
自分が油断したせいで魔使さんが死ぬのはごめんだったからなんとか間に合って良かった。
意識が薄れゆく中俺は薔薇に言葉をかける。
「次は……勝つ」
そして俺はまた死んだ。
「はぁい、ずいぶんと短いお別れだったわね」
目が覚めるとそこは例の教室だった。
「あぁ、油断してまた死んじまった」
ナビ子が俺がどうして死んだのかを解説する。
「あなたは術木薔薇が隠し持っていた麻痺毒の針を首に打ち込まれて動けなくなった。そして魔使優奈を庇うためになんとか動いた結果、死亡。わかってるわよね」
俺の記憶とナビ子の解説は一致しているためうなずく。
「でもまぁ、薔薇のやつもあれが本当に奥の手って感じだったから次こそは勝てるな」
そんな俺にナビ子が忠告する。
「確かに術木薔薇の手札は今までの戦いでほとんど見尽くしたでしょうけど決して油断しないようにね」
「あぁ、決して油断せず、今度こそ確実に勝つ」
俺が油断していないと理解したナビ子は俺を送り出そうとする。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
俺の意識は落ちていった。
すでにに二度も見た光景。薔薇が右手を鱗で覆って襲いかかってくる。
前回と同様に攻撃をギリギリで躱し、腕を切り落とす。
その後薔薇は距離をとろうとするのでそのまま距離を詰める。
「なっ⁉︎」
動きが読まれていると感じたのか薔薇は驚く。
そのまま首を狙うが薔薇は飛び上がり、空に逃げる。
「流石だよ刀也。でもこの攻撃は特別だよ」
薔薇が魔力を溜め始める。
しかし、先程と同じく住宅を使って跳び上がり、薔薇の翼を傷つける。
「ぐうぁ⁉︎」
大きな爆発が起こり、薔薇は墜落する。
薔薇は全身に大きな火傷を負い、息も荒くなっている。
俺はゆっくりと薔薇に近づく。
「終わりだ薔薇」
そう言って薔薇の首にナイフを突き立てようとする。
薔薇は前回と同様、薔薇は俺が薔薇を仕留めようとして
油断した瞬間を狙う。
「悪いがそれはもう知ってる」
しかし、飛んできた針は俺の片手に掴まれる。
「なっ⁉︎」
薔薇が驚愕の表情を浮かべる。
まさか防がれるとは思っていなかったのだろう。
俺は薔薇の首にナイフを当てて質問する。
「お前が決議を降りて、罪を償うと言うのなら殺さない。さぁ、どうする」
本音を言えばたとえ、人殺しだとしても殺したくはない。そうすれば、自分の都合で人を殺したこいつと同じになってしまいそうだからだ。
薔薇は目を見開いて驚く。
「驚いたよ。まさかここまできて僕を殺さない選択肢があるとはね。刀也、君のその優しさは美徳だけれども今後も決議に参加するのならその甘さは捨てた方がいいよ」
確かに薔薇の言葉には一理ある。こちらだけが相手を殺さないようにしていては一方的に不利になるだけだからだ。それでも、できる限りは殺したくない。
自分だけはこの世界で本当の意味で死ぬことはないのだから。
何も言わずじっとしている俺を見て薔薇が質問する。
「ねぇ、刀也、君は今まで人を殺したことはあるかい?」
「いや……無い」
俺は黒峰刀也の記憶は断片的にしか持っていないが
憶えている限りでは人を殺したことは無いはずだ。
そんな俺の返答を聞いて薔薇は笑う。
「ふふっ、そっかまだ殺したことは無いんだね、
それじゃあ君の初めてになれる」
薔薇の言葉の意味が分からず戸惑っていると、突然
薔薇が首を動かし、自分からナイフを突き刺した。
「おい⁉︎お前、何やってんだよ⁉︎」
首から大量の血を流しながら薔薇は笑う。
「げほっ、ごほっ、ふふっ、これでもう僕は助からない。
僕は君が殺した初めての人になれる。……これから君は
また人を殺さなくちゃいけない時がくるだろう。
……初めては僕がもらったし、
二回目以降なら殺しやすいだろう?」
薔薇の息がどんどん荒く、弱くなっていく。
薔薇の勝手な態度に怒りが湧いてくる。
「ふざけんなよ!生きて罪を償え!逃げるんじゃねぇ‼︎」
そんな俺を見て薔薇は笑う。
「ふふっ、残念だけど、そのお願いは聞けないなぁ。
……じゃあね僕の愛しい人、あぁどうか君の両手が真紅に染まろうとも君が僕を助けてくれた君のままでいれますように」
そう言って、薔薇は事切れた。
……俺は術木薔薇との思い出は無い、むしろ身勝手な理由で人を殺したこいつを憎んでいるくらいだ。
それでも目から涙が溢れるのはこの体には確かに親友との思い出が刻まれているからだろうか。
「黒峰くん……」
魔使さんが心配そうな声で近づいてくる。
「すいません、大丈夫です。これで終わりましたね」
こうして俺たちの初めての候補者との戦いを幕を下ろした。
この戦いは候補者の一人が事件を起こしていたことも相まって、他の候補者たちにも知られることになった。
そして、俺たちの活躍を聞いて、動き出した者たちがいた。
「えぇ、お嬢様は未だ決議に参加しているようです。やはり一度連れ戻しますか?旦那様」




