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《第3部完》幽霊の花嫁修行  作者: 三條 凛花
第3部 - 弥生
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15.誤解(2)

「あの、――小説を読むの、お好きなんですか?」


 ダイニングテーブルにあった読みかけの本を目にして、梅室さんはおずおずと尋ねた。


「小説はあまり詳しくないんだけど、友だちがおすすめの小説を貸してくれたり、贈ってくれたりするので、いつも楽しく読んでます」

「これは夢咲フユカ先生の『なずなの恋』ですよね。今度、実写映画にもなるらしいです。実写化するのって、うれしい反面、キャストが理想とかけ離れているとがっかりしてしまうので、今すごくドキドキしています」


 梅室さんは、普段の表情のない感じとは違い、ころころと笑いながら言った。


「私はとても小説が好きで。作家さんのSNSもフォローしたり、サイン会がある場合は並ぶくらいなんです」

「なにかおすすめはありますか?」

「そうですね……。今読んでいるのは、海月賀津也先生の『闇姫の祈り』です。幼いころに神隠しにあった女の子の話で、戻ってきた彼女はすっかり人が変わってしまっていた――というものです。シリーズのすべてを集めているのは、朱原楼先生の作品で……。それから、夏目花純先生の『泡沫の夢、金色の獅子』も捨てがたいです」

「友人がすすめてくれたのと一緒です。最後の作品だけは、違うタイトルだったような気がするけれど……」

「『妖精女王の二度目の人生』ですか? そちらが代表作だと思います。そちらも大好きなんですが、『泡沫の夢、金色の獅子』はバッドエンドなのに美しさがあって、私はそこに惹かれるけれど、好みが大きく分かれると思うんです」


 梅室さんが買ってきてくれたお惣菜は、彩り豊かなたくさんの野菜おかずに、がっつり食べられそうなお肉とバリエーションも豊富だった。せっかくなので大皿に出して並べたら、さながら小さなパーティーのようだ。


「キャロットラペが入ってる。うれしい」

「お好きですか?」


 花夜子はうなずく。


「このキャロットラペは、りんごが入ってるんだね。薄切りのりんごがサクサクしておいしい」

「本当ですね。実は、今日いろいろ買ってきたけれど、食べ慣れているものではないから、どれがおいしいのかわからなかったんです。喜んでいただけたならよかった」


 ドライトマトとスモークサーモンのムースに、バルサミコ酢の風味が効いたひと味違う唐揚げ、ミックスピクルス……。どれもおいしくて、花夜子は目と舌で、料理をしっかり記憶しておくことにした。


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