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第12話

笑いを収めたフレディはこの国の事を知りたがった。

ここはなぜこんなにも穏やかなのか。

どうして王族なのに働いているのか。

なぜ、他国と関わりをもたないのか。

さまざまな事を聞いてくるので私はそれに答えた。

フレディは驚く事も、眉間にしわを寄せる事もあり、なんて表情豊かに動くんだろうって思った。

だって、それまではずっと眉間にしわが寄ってたから。


「・・・・ふーん。それで、この国は独立した様になっているのか。でも・・・」


フレディはそこまで言って言葉を切った。


「なに?」


「・・・いいや、なんでもない。それにしても、いい国だな。争いなどまったく無縁な国があるなんて信じられないよ」


困ったように笑うフレディに私は首をかしげた。


「フレディの国では争いがあるの?」


知識では知っているが、実際に争い事がある場面を見た事がない私にはそれは物語の様な話だった。


「そう・・・・だな。醜い争いだ。本当にバカバカしくなるよ。何が悲しくて身内に命をねらわれなきゃいけないんだ・・・・・」


ポツリとつぶやいた言葉に私は目を丸くした。


「家族に命を狙われるの!?」


私の言葉にフレディは、顔をしかめた。


「い、いや!私じゃない。我が国の王族の話だ!!」


慌てて否定するフレディに私は再び目を丸くした。


「王族が争いをするの!?」


私には信じられない話だった。

私たち家族は、王族であるが争いなどない。そりゃ、お父様とお母様が喧嘩をする事はあるけれども・・・・馬鹿らしくなる様な理由での喧嘩だし。

きっと、そんな話ではないのだろう。


「・・・・あるさ。王の椅子をめぐって身内だろうが兄妹だろうが争いが絶えない。そんな事誰も望んじゃいないのにな」


悲しそうな目をしてそう呟くフレディに思わずフレディの背中をさすった。


「そう。そんな王族の元にいると国民まで悲しい思いをするのね・・・。どうして、それに王様は気付かないのかしらね・・・」


フレディの悲しそうな表情に思わず、フレディの国の王様を非難してしまう。


「そうだな・・・・」


フレディは私の言葉に同意をしてくれたものの悲しそうに笑うだけだった。

少しの沈黙の後、これ以上フレディに悲しい顔をさせたくはなかった私は、唐突ともいえる話題転換を試みた。


「そういえば!!フレディの国に私の知り合いがいるのよ!!」


いきなり意味のわからない事を言いだした私に、フレディは首をかしげた。


「あのね!ネイルの・・・フレディも会ったでしょう?あの男の子のお父さんがいるのよ」


「へぇ。あの男の父親か。出稼ぎか何かか?」


「ん~・・・。出稼ぎではないのだけれど・・・・」


なぜと聞かれれば、答えようがない。なぜかなんて私も知らない。ネイルが生まれてすぐに彼の父親はフレディの国へ行ったのだと聞かされていただけだったから。


「・・・まぁ、どんな人かは知らないしな。いると言われても我が国は広い。知り合いではないだろうしな」


私が口ごもったのを見たからか、フレディはそういうと話を終わらせてくれた。


「そうだね・・・・。ねぇ、フレディの国の名物ってなに!?どんな野菜!?」


再び質問を投げかける私にまたもやフレディは笑った。


「ぶはっ!!野菜限定なのか!!」


その言葉にきょとんと首をかしげる。


「・・・他に何かあるの?」


くっくっと笑うフレディは笑いを収めながら答えた。


「あ、あるとも。俺の国では、絹が有名だよ。絹と言ってもただの絹ではない。色を染めてそれを使って色々な物を作る。たとえば、ドレスだったり、リボンだったり。男でも使えるように髪紐にしたりもする」


その答えになるほど、と私は思う。


「そっかぁ・・・。うん、そうだよね。野菜以外にも物はあるもんね・・・」


うんうんと一人納得するように頷けば、またフレディの方が小刻みに動きだす。


「・・・・ぅ・・・っく・・・・・」


無言ではあるが確実に笑っているだろう彼をみてまたもや私も頬を膨らます。


「もうっ!!一体何がおかしいのよ!!」


そう声をかけた途端、抑えていた笑いを声に出して笑う。


「はぁっ・・・・。ほ、ほんと、面白いな。こ、こんなに笑ったのは久しぶりだ」


気が済むまで笑い続け、息を整えた所で、私の問いかけには無視して意味が分からない事をつぶやく。


「本当に、失礼ね!!私、なにもおかしい事なんてしていないじゃない!」


ふんっと、そっぽを向けば、フレディは困ったように笑う。


「ごめん。だけど、絹が有名だって言えばそれならば、とドレスをねだられたりしてたからね。まさか、野菜と比べられるとは思わなかったんだ」


思いだしたようにくすくすと笑うフレディに、私は目をまるくする。


「そ、そんな高価なものをプレゼントするの!?」


「ん?・・・まぁ、する時もあるけれど俺がやりたくてやってるわけではないかな」


ふと、フレディの笑っていた表情が無表情の様になった。


「ふぅ~ん。あげたくもないのに、あげるの?・・・・フレディってやっぱりお金持ちなのね」


その言葉に、ハッとフレディは顔を上げた。だが、すぐにまた笑って首を振る。


「いや、お金持ちってわけでもないよ。人よりすこし贅沢ができる環境ではあるけどね」


その言葉に、やっぱりフレディは世に言う貴族様なのだろうと私は思った。

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