第2話「沈みゆく客船と、卑弥呼の幻」
アナログ国家の末路とは、
まるで沈みゆく大型客船のようなものだ。
甲板のあちこちから声がする。
「あれぇ……船長はどこ?
どこ、どこ、どこ?」
操舵室は静まり返り、
羅針盤は埃をかぶり、
スピーカーからは妙にのんびりしたアナウンスだけが流れる。
そのころ国民はというと——
気づけばすっかり蚊帳の外。
万年床のように敷きっぱなしの政。
政策の貧困の果てには、
ブ~ン、ブン……。
どこからともなく蚊の大群。
気づけば刺されっぱなし。
かゆい。
とにかく、かゆい。
「これは……政府の無策という名の“天然かゆみ増幅装置”では?」
誰かがそうつぶやいたとか、つぶやかなかったとか。
危機意識の裏付けがない安穏さのなか、首相はひらひらと——
まるで蝶のように語った。
ひら、ひら。
ふわ、ふわ。
しかし言葉は、
人々のカタルシスを置き去りにしたまま、つるり、つるりと上滑り。
文章の最後に
ピリオドすら打てないまま
話はふわりと宙に浮く。
——さて。
日本の神話は今どこに?
伝説はどこへ行った?
日本人の美徳や美意識は、
まだこの国のどこかに眠っているのだろうか。
かつて輝いていた日本は、
いま、いずこ。
探しても、
求めても、
沈みゆく夕陽ばかりが
水平線の向こうに赤く滲む。
あれは現実か。
それとも——
万華鏡が見せた
一瞬の幻想だったのか。
そんな折。
どこからともなく、
風を切って現れた一人の影。
颯爽と。
その姿は、まるで——
卑弥呼。
幻想を現へと引き寄せるような
まっすぐな眼差しで、
彼女は
静かに前を見つめていた。
……さて。
この物語はいかなる展開に、……
この続きは、まだ誰も知らない。




