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アシャは満足していた。
もたらされる結果も、それによって噛み締める後悔も、考えることなく、初めて自分の全ての力を解き放った。
世界を破滅させるための兵器と化した自分は、魔性にしか過ぎない。
けれど、その自分を確実にユーノが屠ってくれる。
最後の一滴まで力を搾り出し、ボロ切れのようになったらユーノを探せばいい。
ユーノの剣の下に頭を垂れれば、速やかで安らかな死を導いてくれる。
何という安堵。
向かってくる気配に容赦なく炎を放つ。焦げ崩れる姿を何度も焼き払う。
『太皇』の積み重なる記憶の中でさえ、アシャのような存在はいなかったらしい。『人』の姿を模した天の雷、終末を知らせる炎を溜め込んだ体を、あえてかつての記憶で探すなら、天空に浮かんでいたと言う巨大な道具だろう。
その道具は空も地上も、『人』も太古生物も分け隔てることなく、凄まじい熱量で貫き灼いたと言う。
放て、放て。
これが終焉、美しく輝かしく、世界に君臨した『ラズーン』の末路。
黒く焦げた大地に、命の燃え滓が灰色の塊として積もる光景の中、アシャは微笑みながら彷徨っている。
何も残すな。
この後の世界は、ユーノ達『人』の世界となる。
ぎりぎりで生き延びられる数しか残っていないだろう。
未来を脅かすような存在は、今ここで全て消滅させておかねばならない。
ユーノを護る。
ユーノが守ろうとする『人』を護る。
遠く彼方に自分を呼ぶ声がした。
懐かしい、甘い、切ない、愛おしい、大切で、かけがえがない、声。
『違うっ! そっちじゃない、こっち! 私だ! 私に向かって撃って、アシャ!』
ああ、ユーノ。
何と正しく的確にアシャの本分を望んでくれるのか。
「もちろんだ、ユーノ」
微笑み頷く。
ユーノのためなら、骨が折れ、肉を突き破り、ただの血肉の塊となろうとも、敵を屠ろう。
全開にしたのに、ほんの僅かだが力が絞り切れなくて、アシャは煙る世界の中で立ち上がる。自分の中に燻る悪夢の炎を使い尽くそうと、内側から自身に炎を放とうとし……体から力が抜けた。
ミネルバのように『運命』狩に世界を巡るはずだったのに、自身への過大評価だったのか。命が揺らぎ細く頼りなく小さくなっていくのが分かる。
『っ、アシャ!』
ユーノの声が耳元で聞こえる。
「随分優しいじゃないか」
自分を生み出した存在に苦笑いする。
「命の最後を、彼女の声で送ってくれるとは」
満足感がなお広がる。
深く柔らかく、重く静かな闇。
アシャは微笑みながら沈んで行った。




