表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一般人遠方より帰る。また働かねば!  作者: 勇寛
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/366

3-0 紫煙 のち 朝飯

「あ、石島さん。こんなとこにいた……。サボりっすか?」


 ぷかぷかと煙草の煙をくゆらせながら、警察署内唯一の喫煙スペースに設置されている野ざらしのベンチに腰かけた老刑事、石島を見つけた後輩の加藤はそう声を掛けた。


「バッカ。俺は今、このすがすがしい朝日を浴びながら、今日一日シャカリキで働くために体の隅から隅までニコチンを充填せにゃならんのだ。もうちょっとで満タンになるから、ちょっと待っとけ」

「いや、普通にサボりじゃないっすか」

「貫徹した定年間近の爺にいうセリフじゃねえよ」


 笑いながら同じくベンチに腰かけた加藤が、上着の内ポケットから潰れた煙草の箱を取り出し、1本口に咥える。

 小脇に抱えていたファイルを膝の上に置くと、ぱんぱんと体中をたたいて、自分のライターを探す。

 だが、ふと思い出した。

 さっき車のキーを机に放り出した時に一緒に机に転がり出てそのままにしていたのだということに。


「……たく。ほら」

「うす、すんません」


 いつまでも火をつけない後輩の様子からなんとなく状況を察した石島がライターを投げてよこす。

ぽいと投げ渡された100円ライターを受け取り、加藤も煙草に火をつけ吸う。

ふぅぅぅぅ、と大きく線を引く紫煙を吐き出すと、借りたライターを石島に返した。


「そんで?俺を探してたんだろ?何の用だ」

「ああ、トゥルー・ブルーの関係者一覧。向こうの国がようやく詳細な情報開示してくれましたよ。国内の調査を優先させるってお題目でしたけど、本当かどうだかわかりませんが」

「腹は立つがしゃあねえだろ。なんせあんなテロ起こしたのが自分のとこの環境保護団体がスタートって話じゃな。急いで伝えたいこと、急いで隠したいこといろいろあるわな」

「俺たちホントは薬物関連の仕事のはずなんですけどねぇ……」

「絡んじまったモンは仕方ねえさ。船の荷からあんだけのクスリ出てきちまったらな。だがその関係でヤクザ事務所の関係施設にもガンガン調査に入れるしな。行きがけの駄賃に徹底的に調べてやらぁ」

「さっきガサ入れされたヤクザの顧問弁護士から別件逮捕での調査だ、警察権力の横暴だ、って朝一だってのに物凄いクレーム言いに来てましたよ」


 へへへと、悪い笑みを浮かべる石島。

 警察官という仕事の人間が見せていはいけないような、悪い笑顔である。


「いやいや、こっちはキチンと段階を踏んで捜査活動をしていますんでね。違法薬物の捜査を進める過程で七狼組(ナロウグミ)の幹部には逮捕状が出ていますし、銃火器の取引についてもの関与の可能性が出てきていましてね。いやあ、それがまさか今大騒ぎのテロに使われた銃器だなんて、驚くばかりですなぁ」

「……それとほとんど同じ内容で課長がオブラートに包みまくって七狼組の弁護士のセンセーと話をしていましたよ。テロ云々が出た瞬間に少し勢いが弱くなりましたし。結構あのセンセーの事務所にも“善意の第三者”から無言電話、来てるみたいですね」

「一応どんなアホでも極悪人にも弁護士を雇う権利ってのはあるしなぁ。でもよ、“テロリスト”を弁護するってなると根性の入れ方が桁違いでないととても勤まらないだろ、そりゃ」

「確かに、そうでしょうねぇ。ご愁傷様ですね」

「そういうこった」


 根本まで煙草を吸いきると、加藤の膝の上にあるファイルを手に取る。

 ぱら、と中を開くと石島が渋い顔をする。


「おい、加藤よ」

「なんすか、石島さん」

「俺ぁ、こういう横文字のアルファベットが並んでる紙ってのは全部洒落たパン屋の包み紙とおんなじにしか見えんのだが」

「英語って難しいですよねぇ。俺も読めません」

「じゃあ、なんでコレ持ってきてんだよ?馬鹿か、お前」


 ぱんといい音をさせて軽く加藤の頭をファイルではたく。

 おおっとおどけた加藤が、ファイルを受け取り後半部分を開く。


「実は後半部分は日本語訳済みでして」

「なんだその無駄なつくり。紙の無駄だろ?」

「原本と、その訳でワンセット。そういうことらしいです」

「ふぅん……。そういうもんかねぇ」


 どかりと腰かけファイルをぱらぱらとめくる。

 読み進めていくがあまり面白い情報はない。


「創設者並びに創設メンバーは既に鬼籍に入ってるのか……。初期の構成メンバーも別の環境保護団体に宗旨替えしたか、活動からは離れ、全く違う生活を送っている、か」

「設立当初は森林保護と無計画な開発事業への反対運動から始まったらしいですね。そんで徐々に海洋汚染、産業廃棄物問題、火力・水力・原子力発電へのアンチテーゼ。まあ地球上のありとあらゆる経済活動へと警鐘を鳴らすグループへと拡大。ちょっと過激なグループにってマークはされてたらしいです。……20年前までは」

「……今は、どうなんだ?」

「創設者が病死。その後のリーダーシップを取れる人材が居らず、活動が縮小。自然と人が離れ休眠状態に。そこでほとんどノーマークになったみたいで。……そんで久しぶりに現れてみれば、外の皮だけ剥ぎ取られて中身はそっくり別人に変わってた、ってことらしいです」

「正直外の皮だけしか必要じゃなかった、ってことか。捕まえた皆さまもそんなご高尚なお考え、もってなさそうだしな」


 ファイルをぱたんと閉じて加藤へと返すとぼりぼりと頭を掻く。

 胡麻塩頭を掻きながら大あくびする彼を横目に加藤が、追加情報を与える。


「ただ、一つ気になるトコがあるんですよ」

「ああん?」


 目線だけを加藤にやり、続けろと無言の催促をする。


「休眠に繋がった引き金ってのがですね、次期リーダーがどうもオカルトだか変な宗教だかに走って資金を流用したからってのが理由に書いてありまして。どうもそこが……」

「オカルトでも宗教でも、ハマって馬鹿をしたのはごまんといるぞ。珍しいことじゃないだろうに」

「……その流用先が、新世界オラクル。いまは会社化されてオラクル・パワーズっていう名前になってるんです」

「たしか非合法で人体実験してたとこか?一昨年か去年かにアメリカで強制査察が入って現地の代表が捕まった?」

「代表は肩書だけの男で、黒幕は別の男ってなってるそこです。設立の目的が、“人類全体の種としての底上げに寄与するため、従者としての新たな生命体の創造を”。動物への過度の虐待と、安全性を担保できない実験をしてていま黒幕が国際指名手配されてます」

「……生物化学兵器、新型薬物の売買。日本にも協力者がいるかもって話でワイドショーも騒いでたな」

「船で見つかった大量の薬物。そしてあのデロデロな気色わるいアレ。生物兵器っていうか“従者としての新たな生命体”。……字面にはぴったりですね」

「朝からお前、冴えてんなぁ。どこぞの推理作家も真っ青だぜ」


 ぽりぽりと頬を掻く加藤の表情はどこか困惑気味である。

 その様子にどこかおかしなところを感じた石島が尋ねる。


「なんだ、そのしゃっきりしてない感じは?どうした、加藤」

「ははは、種明かしをしますと。俺の意見じゃないんですよ。ほら、これ」


 すっと出した加藤のスマホには、何かの文章がずらずらと書かれている。

 石島は老眼の進んだ目を細めながらその画面を読み進めると、得心した様子でおおきく頷く。


「ああ、そりゃあそうか。お前の脳みそ、俺とさほど変わんないもんなぁ……。そんなスラスラ言葉が出るわきゃないな」

「いやあ、当たり前ですよ。というか石島さん、スマホ机に置いてったでしょう?つながらないからって俺のとこに送ってきたんですよ」


 馬鹿みたいに大口を開けて笑う部下を軽く小突くと、石島がスマホを取り上げる。


「そんで?お前の個人アドバイザーの火嶋教授様はなんだって言ってるんだ?」

「オラクル・パワーズに入れ込んだトゥルー・ブルーの元後継者の男。こいつは5年前に病気で亡くなってるようです。ただしそいつの血縁者の中で現在行方が全く分からないのが2名。長男の娘、マユミ・ガルシア16歳。二男の息子マサキ・ガルシア22歳。共に日系人です。幼少期は日本で生活していたようですが、近年は欧州・北米を転々と。ただ、3か月前に入国管理局に記録があるそうで。……出国の記録は無いらしいので警察で捜索できないかと依頼がありまして」


 スマホをスワイプすると、2名の顔写真が出てくる。

 監視カメラの荒い映像からキャプチャしたもののようだ。

 他の物も幼少期の写真や、おそらく小学校の卒業写真のアルバムを切り取ったものだと思われる。


「……無茶言ってくれるな。あのセンセも。若ぇ奴らだと髪の毛染めたり、化粧一つで結構印象変わっちまうってのに」

「……ですがやるんでしょう?」

「仕方ないだろう?」


 ベンチから立ち上がり、大きく伸びをする。

 ごきごきっと腰が鳴る。


「客船ではクスリの手柄、丸々こっちに譲ってくれたんだ。借りはきっちり返しとかねえとな」

「ですね」


 加藤も立ち上がり、火の消えかかった煙草を灰皿に押し付けて立ち上がる。


「だが、まあどうやって探すかを考える前に。とりあえず朝飯だ。加藤、立ち食いソバと牛丼、どっちがいい?」

「こういう時は牛丼ですね」

「残念、俺はもうそういう重いのは朝からは受け付けないんだよ。ソバだ、ソバ!!」

「じゃあなんで聞いたんですか?」

「ははは、一応の礼儀ってやつだよ!」


 二人の刑事が連れ立って朝飯を食いに歩きだす。

 今日も朝からいい天気であった。

ハロウィンかぁ……。

田舎の人間にゃ関係ないなぁ……。

何か絡めて書こうかなと思ったけど周辺にそんな気配がまるで無いんだよなぁ。

と、いうわけでオジサン2人で始めてみました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ