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故に、青春とは脱出ゲームである。  作者: ナヤカ
【最終章】彼らはそれぞれの答えを語る
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ゲーム セーブ【7】

 友人が作った『脱出ゲーム』。それは、いまやその原型など忘れてしまったかのように『テーブルゲーム』へと変わっていた。

 そして、オセロで対戦をしている『ネット探偵』。それは、もはやプロ級の腕前をしており、ここ数日空いた時間に何度となく挑戦しているのだが、勝てずにいた。

 一度、接戦ともいえる勝負をしたのだが、最後には二石差で負けてしまい、それからは勝てる気配すらない。


 ……マジでクリアできるのかよ。


 そう思いながらも挑戦を続けていると、なん十回、何百回目なのか分からない対戦。そこで、僕は偶然よりも奇跡に近い戦況に気づく。


 あれ……これ、勝てるぞ?


 もはや戦略や戦術を諦め、適当に打っていたその対戦。惰性にも近い形でクリックし続けたマウス。そこで、初めて僕は『ネット探偵』に勝とうとしていた。


 六四マスの盤上で、黒からの先行で始まるオセロは、最後にマスを埋めるのは、パスさえなければ当然白。

 そして、その最後に打った一手で、盤上の黒が白へと変わる。

 その割合は、数えなければ分からない程の差だが、確実に白が多い。


「……勝った」


 まさか、勝てるとは思ってなかった僕は、そんな声を落とした。


 そして、画面上で勝利の文字が踊る。


――まさか、この私に勝つとは。……良いだろう。君に彼女の居場所を教えよう。


 感情が追い付かないまま、ゲームだけがストーリーを進める。


――彼女の居場所を手に入れた! 


 A、今すぐ会いに行く。

 B、やっぱり止めておく。


「こんなの一択だろ」


 そして、僕は『今すぐ会いに行く』をクリックする。


 すると。


――部屋から自分の意思で飛び出した。


 ようやくゲームクリアか、そう思い一息吐く。


 だが、この『脱出ゲーム』は、これで終わりではなかった。


――彼は部屋から飛び出した。だが、その部屋には鍵などかかっていないただの自室。だからこそ、彼は再び引きこもりになる可能性を十分に秘めている。さぁ、物語はクライマックス! 君は、本当に引きこもりから脱出できるのかっ!?


 これまでの雰囲気をぶち壊すナレーションが入った。……こんなの、今までなかっただろ。物語のストーリーを表現できず、苦肉の策で人称を変える駄作小説かよ……。


 取り敢えず、僕はそこでセーブして画面を戻した。


 なんだか、とても疲れた気がする。

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