第十八話 弟子VS弟子
いつもより遅めの投稿となります!!二週間以上もお待たせしてもうしわけありません!!!
前回のあらすじ:王宮魔法使い の 弟子 の クルジン が 勝負を しかけて きた。
わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
・・・どうしてこうなった。
「さぁ、まもなく始まりです!!!お互いに王宮魔法使いの弟子であるクルジン殿とケインジス殿の『試合』!!!皆さん、盛り上がってますかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
おおおおおおおおおおお!!!
・・・本当にどうしてこうなったんだ。
「賭けるやつはいねえか!?俺はクルジンってやつに5000賭けるぜぇ!」
「よっしゃ、乗った!!俺はケインジスってやつに賭けるぞ!!!」
「やめとけよ・・・、あれどう見ても五歳くらいだぜ??」
「それよか、五歳が十二歳くらいに勝てるわけないだろ・・・」
俺は上を見上げる。そこには、大きな台座があり巨大なドラゴンが一体、寝そべっていた。その横には物凄く豪華な椅子が数席並んでおり、多くの人間が座っている。ジーニアや第二王子、師匠も座っていた。
次いで周りを見渡す。ここは円形状のコロッセオのような建物の内部だ。周り一面に観客席があった。そして、そこかしこから賭けの声が聞こえてくる。どうやら、俺の相手の方がかけている人間も多いらしい。
なぜだ、なぜこうなったのだ・・・。
俺はそう考えながら数時間前の記憶を遡る。
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「えっと・・・第二王子、本当にやるんですか?」
「む・・・?やらないのであるか?」
「いや、さっき第二王子が決定事項のように言ってたじゃないですか・・・」
クルジンが去って行ったあと、俺は第二王子に詰め寄る・・・ことはできないので問い詰めることにした。もっとも、そう強くも出れないのだが。
だが、第二王子はそのことに気づかずに――あるいは気づいていて敢えて無視しているのかもしれないが――こちらを見ている。
「いや、あの別に戦いが趣味というわけではないのですが・・・」
「むむむ??しかし、昨日もジーニアと戦っていたのである」
それは事故だろーが、と思わず半眼で言いそうになったのを必死に制止し、なんとか表情を取り繕ってから反論する。
「あれは完全にやらされた感じじゃないですか・・・」
表情を取り繕ってみたが目元がぴくぴくするな。そのことを焦っていたが第二王子はこちらを見ていなかった。よかった。
「む?そうだったか」
だが、安心したのも束の間、すぐに表情が崩れそうになったのを一生懸命堪える。
「・・・ええ」
なんとか感情を抑えてそう答えられた俺を、俺はすごく褒めたい。さすがに、昨日はジーニア相手には少し、キレたがそれと同じことを王族の彼の前でやるわけにはいかないのだ。
「・・・ふむ、だが、決定事項は決定事項である。本日の『試合』は行ってもらうのである」
「・・・まあ、ソレは仕方ないですけども」
小さく息をつき、俺は踵を返す。
「む?どこへ行くのであるか?」
「どこへ行くも何も武器の準備などがあります。相手が立ち去ったのも、そういうことでしょう?」
「ふむ・・・?」
「仮に、相手が何も武器を持ってこなかった場合は、私は武器を置いて対等な条件で戦います。しかし、万が一、相手が何らかの武装をしていた場合、私が何も武装をせず『試合』に負けて師匠の顔に泥を塗るのは許しようがないのです」
「ふむ・・・確かにそうであるな」
「では、一旦失礼します」
「おお、そうである」
やっと第二王子の元を去れると思っていたので、第二王子が声を上げたのに意表を突かれビクッっとしてしまった。
「えっと、なんでございましょうか」
「いやなに。詫びとして余がいろいろ取り計らおうと思っただけである。後に使者を使わすので貸し与えた部屋で待っているがよいのである」
胸を張ってそう言い切った第二王子に嫌な予感がしたが、俺はすぐに立ち去った。
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そう、立ち去ったのだ。第二王子の元を。何の文句も言わずに。
「・・・抵抗位すりゃよかったなあ」
俺はそうひとりごちてみるが、そうしても何も変わることもない。そもそも、俺の声は会場を覆う群衆の雄叫びにかき消されて俺以外の耳には届かない。
周りを見渡す。辺り一面に、この王国の王都に住んでいる人間が多く詰めかけている。貴族も、平民も。
まるで、古代に行われたという剣闘士たちの争いを観戦するように。俺たち二人を囲んでいた。
「さぁて、そろそろ『試合』の準備も整ったでしょう!!彼らの『試合』は今、まさに始まります!!」
司会がそう煽り立てる中、俺は深呼吸をする。
すう、はあ。息を吸って吐き、相手の様子を伺った。
相手の格好は、普通の魔法使いといった感じだ。フード付きのローブを纏い、手には木で作られた杖、そして指には指輪がいくつか嵌っている。恐らく魔法を強化する触媒とかだろう。そういったのは当たり前として、手に持った杖が気になる。場合によっては、仕込み杖とかもあるし、杖術とかでは武器としても扱うし。
剣を持つかどうか迷うな。ううむ・・・。
考えること数瞬。俺は剣を置くことにした。その代わりに杖を持つことにする。もっとも、俺は普段杖を使わないので、魔法の強化などが一切ない殴打用の杖を使うが。
「両者、杖を構えました!!それでは、カウントダウン開始だぁ!!」
俺が剣を置き、杖を構えると同時に、空中に数字が浮かぶ。光属性の魔法の一種だ。初級魔法の『投影』。影を映し出すだけの簡単な魔法で、文字を伝えたりするときに使われるものだ・・・っと、そんなのもどうでもいいか。
数字が10から刻々と減っていき、やがて0になった瞬間。
「『試合』開始っ!!」
司会者がそう言葉を発して『試合』が始まる。
「魔法を司る神々よ、我を守護したまえ『退魔障壁』!」
相手の最初の一手は、被弾した魔法の威力を軽減させる『退魔障壁』。無属性の上級魔法で、どの属性の攻撃に対しても一定の効果が見込める。相手の出方を伺うのにうってつけの魔法だ。ちなみに俺は、既に無詠唱で発動させてある。
「炎神よ、焼き払え『炎球』!!!」
続いて放たれたのは師匠も好んで使う、炎属性上級魔法の『炎球』、しかも詠唱短縮版だ。まだ成人してない、しかも王宮魔法使いの弟子が既に詠唱短縮を使用できるというのはかなりの才能があるということを示している。普通なら、詠唱短縮できるだけでも王宮魔法使いに登用されることも多いからだ。恐らく、彼はこのまま順調に行けばすぐにでも王宮魔法使いに登用されるのだろう。
それを裏付けるかのようにの顔はクルジンはドヤ顔だった。・・・なんかムカつく。
さて、そんな一般的な評価はさておくとしよう。『燃える乙女』の異名を取るほど炎属性魔法に長けている師匠を持つ俺としては、普段軽く使われる『炎球』より小さく感じる。
つまり、この程度の『炎球』ならば、軽く対応できるのだ。無詠唱で生み出した『水球』であっさりと『炎球』を消し去り、そのままそれはクルジンの元へと向かった。
「な、なに!?」
あっさりと自慢の『炎球』を消されたせいか動揺したクルジンはそのまま『水球』を顔にモロに浴びる。
・・・そこまで簡単に喰らうんだったらもうちょい威力を高めにしておけばよかったな、と俺は思った。
「おぉぉぉぉぉっとぉぉぉぉ、なんと先に攻撃を当てたのは年少のケインジス殿!!」
なんかみんな盛り上がってるみたいだが、このくらい普通だと思うんだ。だって、こんなのも相殺できないと、師匠とは暮らせないしな。
「お、お前・・・どんなズルを・・・」
「・・・えっ」
なんでか知らないけど対戦相手のクルジンの顔が歪んでいる。しかも、なんか失礼なことを言われた・・・が、謂われない言葉を投げかけられたと思うより、なにかしら自分に原因があるかもと考えるのが大切と俺は学んでいる。
来ている服をみる、ごく普通のローブだ。なんの強化効果もないと思う。だって、この前買ったままだし。持っている杖もごく普通の物だ。これもこの前買ったものだし。うん。何も新しいものがないな。他に身に付けている下着とかも特に特別なものでもない。魔法による自己強化も行っていない・・・っていうかそこは試合中に行えば問題ないな。もっとも、強化なんて全くやってないが。
・・・結論、俺は無実だ。何のズルもしていない。どうやら言いがかりのようだ。
「・・・話はそれだけ?」
しかし、こいつ襲い掛かってこないな。さっきの装備を見直す様子なんかは結構隙があったと自負しているのだが・・・誘ってるのがばれたか。
「今度はこっちから行く」
さて、それでは軽めに行くか。
見せつけるように腕をぬっと突き出して、パチンと指を慣らす。その瞬間、俺の頭上に六つの『炎球』が浮かんだ。それに込められた威力はとりあえず、一般と同じくらいのものだ。それを一気に、クルジンに向けて放つ。
「お・・・おぉぉっ!!!」
それをクルジンは・・・必死の形相で避けた。あれ?そこまで早くしてないはずなんだが・・・おかしいな?
「お、おおおおおぉぉお!!これはすさまじい『炎球』の連射だ!!これにはさすがのクルジン殿も逃げ惑うしかない!!!!」
俺が首を傾げていると司会がそんなことを言いやがった。・・・いや、待って。これ、軽くなんだけど・・・あれ?
「な、なんだその連射は!!どんな魔法具を使っている!!」
「えっと・・・」
なんか親の仇を見るが如く、すさまじい睨みを浴びせられるが正直怖くない。スーにちょっかいを出そうとしているときの師匠の方が何十倍も怖い。
もしかして、こいつ弱・・・おっとっと。
一瞬、脳内に「こいつ弱くね」という文字列が並んだがそんなはずあるわけない。俺よりも数歳も年上で、しかも王宮魔法使いというこの国屈指の魔法使いの弟子であるから彼は強者のはずだ。さっき、自分でも解説したじゃんか。このままいけば王宮魔法使いになれるなと。
そうつまりこれは・・・ああ、なるほどわかったぞ。
つまりこれは俺を油断させる作戦だ。そう、最初に自分は弱いとアピールしてその後、真の力を解放し相手を倒す。王道的展開だ。主人公サイドがやれば賢い行為に見えて、敵側がやれば意地汚く思える行為の筆頭だ。
もっとも、俺はそうは思わんがね。そう、勝てば正義というように俺は「勝てばよかろうなのだー」主義でもある。ムカッってくる行為ではあるが俺もやるだろう行為だ。いちいち目くじらを立てていたってしょうがない。
だが、残念だったな。その思惑も俺には通じなかったようだ。強者が本気を出さないというのなら俺は本気を出すべきなのだ。
正直、こんな『試合』、俺には勝っても負けてもメリットはないが、負けた場合のデメリットはある。師匠の顔に泥を塗ってしまうのだ。まあ、あの師匠はたまに鞭やロウソクをくれてやれば文句を言いそうにもないけど立場というものがある。その立場とやらで彼女が俺を破門しなきゃいけなくなった場合とても困る。非常に困る。
いや、なんかこんな言い方じゃ本当に困っていないように思えるが本当に困る。だって、ここで師匠から破門された場合、魔法を師事する相手がいなくなってしまう。強い相手に師事したいから王宮魔法使いである師匠を選んでるというところもあるのに、その王宮魔法使いに見限られれば、他の王宮魔法使いにも弟子入りできないことは間違いない。
つまり、この戦い、勝つしかない。
だから・・・雌伏の時を過ごしていてもらって悪いが、この勝負、早々に決めてやる。
俺はそう決心した。
再び指をパチンと鳴らすと、また俺の頭上に『炎球』が現れる。ただし、その数は15個で威力も先ほどの数倍にまで上げてある。
「・・・本気を出さなきゃ勝てないぞ」
そう小さく呟いてから一気にそれを放つこともなく、一発一発を狙い定めて放つ。逃げられないように。
「こ、これはぁぁぁぁ、魔法の時差使用!?かなりの高等テクニックです!!」
そう、これは魔法の時差使用と言って、魔法の発動を敢えて遅らせる技だ。とはいえ、これは無詠唱はもちろん、詠唱短縮のほうが高等テクニックだ。俺もある程度魔法の訓練をしてからマスターしにいったが・・・、無詠唱を先にマスターしていたからか余裕だったのだ。
詠唱短縮にせよ無詠唱にせよ魔力の制御を主とする技術の中で最高峰のものだが、魔法の時差使用はその下位に位置する。つまり、俺と相手にとっては仕えて当たり前のテクニックだ。もっとも、15個も同時に発動し、時差使用するのは前代未聞だろう。
この前師匠にやったら「馬鹿なの!?15連発とか馬鹿なの!?」って言われた。もっとも、師匠は次の瞬間炎属性超級魔法の『地獄炎』を使用しこちらの『炎球』を消し飛ばしてくれたが。
ちなみに、上級以上の魔法での15連発は成功していない。
「くそっ、炎神よ、我を炎より守り給え『炎結界』!!」
走りながら短縮詠唱で炎属性上級魔法『炎結界』を張るクルジンに俺は内心で称賛する。走りながらの詠唱はかなり難しい。なんと言ったって魔法の発動にはイメージか魔力操作が不可欠だ。つまり、走りながらだって魔法に集中しないといけない。しかも詠唱も失敗は許されない。言うなれば、走りながら何か走っていることとか無関係なことを考えつつしかも歌を歌うようなものだ。
もっとも、俺の場合は魔力の制御だけで発動できるから走って魔法のイメージを立てるだけでいいのだが。まあ、それはさておき。相手は15連発をしのぎ切った。多少ダメージは受けているようだがそのくらいか。
「倒しきれなかったか・・・。もう少し魔力をつぎ込まないと・・・」
つい歯噛みをして、言葉が漏れる。
すると、その言葉を聞いたのかクルジンは深刻そうな顔をして一歩踏み出す。
ついに反撃が来ると思って身構えた俺に、クルジンは・・・土下座をした。
「・・・・?」
あれ?土下座って、え?なんで?
「ここでクルジン殿降参―!!勝者はケインジス殿だーー!!!年齢差を覆しての勝利、見事です!!!」
・・・あれ?勝っちゃった?




