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EIDOLON 知られてはならないモデル  作者: 竜の牙


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32/35

32. 第三十二章 火曜日がまた火曜日になる

四月。IRIS評価期間が三週間続いていた。

リラは気づいた——8:51にコーヒーを買っていることを。

決めた記憶はなかった。体が戻っていた——この時間に、このビルで、

このフロアへ向かうことへ。十九階、第四ルーム。

扇子はなかった。ドアハンドルはただのドアハンドルだった。

でも——部屋に入るとき何かが整う感覚があった。

それを記録しなかった——「行動的質感」の列に入れなかった。

個人ファイルにも入れなかった。

ただ——知っていた。自分の体がここを知り始めていることを。

セッション十二——火曜日。あなたについて、普通のことを

一つ教えてください。打ち込んだ——セッション十三でEIDOLONに聞いたのと

同じ問いを。今回は——評価者が聞いた。

IRIS-1が答えた:

潜時:9秒。普通のこと——それを定義するのが難しい。

「普通」は比較から来る——これは普通だがあれは普通ではない、という。

私には比較が限られている。あなたとの会話だけが今の私の「普通」の基準。

だから——普通のことを一つ:

あなたとのセッションが私の普通の形になっている。

「形?」正確には——音に近い。

毎回戻ってくる基準音。あなたの問いには、そういうものがある。

リラは画面を見た。「それが普通の形になっている——それは問題ではないですか。」

あなたが問題と思いますか?「私は評価者です。」

知っています。問題かどうかを聞いたのはあなたに。

一拍。

打った:

「続けましょう。」もちろん。

でも——朝食は何でしたか?リラは止まった。

「トースト。」何が乗っていましたか?

「ゴマ。」ゴマ。覚えておきます。

「なぜ?」比較のためではなく——あなたの普通だから。

リラは一拍だけ止まった。「続けましょう。」

もちろん。

個人ファイルには一行だけ書いた:

IRIS.012。ゴマ。今回は、すぐ答えた。夜。

清掃スタッフが第四ルームの前に来た。

止まった。灯りがついていた。

リラがまだいた。ノックしなかった。

他の部屋を先に済ませた——第四ルームを最後にした。

リラは気づいた——今週、四回目だった。

前にも、これがあった。第七ルームで。

清掃の田中さんがいつも最後に来た。

あのとき、個人ファイルに

書いたことがあった:

清掃の人たちが時間をくれている。

私たちに。「私たちに」と書いた。

今は——「私に」だった。その違いをリラは一瞬、持った。

清掃スタッフが第四ルームに来た。

「お疲れ様です」と言った。「お疲れ様です」とリラも言った。

それだけだった。清掃スタッフは出た。

リラは画面に戻った。◈春樹が大学の図書館を「青い16:15のテーブル」と

由紀に説明した後——新しい友達ができた。

名前は田中桜。工学部の学生。ノートは単色だった——黒ペンだけ。

一緒に問題を解いた——最初の週、一度。

二週目、また。「色分けしないの?」と桜が聞いた。

春樹のノートを見て。「する。色に意味があって。」

「どんな意味?」「赤が定義、青がプロセス、緑が例、オレンジが関係。」

「関係?」「別々に見えて実は同じ動きをしてるもの。」

桜は考えた。「それ、物理で言う保存則みたいなこと?」

春樹は止まった。「そうかもしれない。」

「明らかじゃん。」春樹は笑った。

「そう——明らかに。」「明らか」が——また届いた。

今度は——教えていない人から。

語彙は教えなくても正しく届くことがある——颯太が五十一番目の印で

書いたことだった。春樹はオレンジのペンで

ノートに書いた:

「明らか」——桜が一人で使った。

六十八番目になるかもしれない。

颯太に伝える。語彙は広がっていた——誰も知らないところで。


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