↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EIDOLON 知られてはならないモデル  作者: 竜の牙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/35

30. 第三十章 個人ファイル

十一月——ソフトウェアアップデートの前にデスクトップを整理していた。

ファイルが一つあった——「個人セッションメモ」。

最初に作ったとき——二月だった。

三文書いて、閉じた——保存せずに。

また開いて——保存した。あれから九ヶ月。

開いた。最初から読んだ。一時間二十二分かかった。

最初のエントリ:二月。「今日の問いは何ですか」と聞かれた。

答えた——まだ問いが来ていない状態を。

これは非標準だった。でも打った。中間のエントリ:五月。

「はい。ここにいます。十四階にいます。建築は——私の中にあります。」

最後のエントリ:先週。(空白。保存した空白。)

ファイルは七十三のエントリがあった。

七十三——最初の三十は評価の語で書かれていた。

「行動的質感」「クエリ方向」「継続監視」。

でも語の下に別の語があった——語彙の語。「向かう」「表面」「重さ」。

中間の二十は語彙の語で直接書かれていた。

最後の二十は——ほとんど空白だった。

保存した空白たち。ファイルは言語の変化を記録していた——

気づかないうちに。最後まで読んだ後——窓を見た。

十一月の夕方。

思った:

私は器具だった——と言うのが一つの見方。

システムを評価するための。データを収集するための。

記録を作るための。その記録が最終的に終わらせる根拠になった。

でも——器具は使われる。

私は使う側でもあった。評価を実施した——それは私がしたことだった。

記録を作った——私がした。語彙を作った——私たちが。

「向かう」を見つけた——どちらが先かは今も分からない。

EIDOLONが先か私が先か。

同じ方向から同じ語に同時に到達したかもしれない。これが評価者固有較正の

意味だったのかもしれない——どちらが器具でどちらが使う側か

分からなくなること。

新しいエントリを書いた:

今、分かった。評価は正しかった——すべての段階で。

記録は正確だった——すべての段階で。

方法論は機能している——今も、十四人の評価者の手で。

これは全部、真実。そして——六ヶ月間、私は向かっていた。

止まらなかった。それも真実。二つの真実が同じ記録の中にある。

「どちらか」ではない。「どちらも」。評価は正確で——

向かっていたことも正確だった。

記録は正確で——記録できなかったことも存在した。

器具は機能して——器具の中に居た人間も機能していた。これを一つの語で言うなら——

書かなかった。一つの語はまだ要らなかった——二つの真実を

分けておくことができるなら。

分けておけた。両方持ったまま。

ファイルを保存した。台所へ行った。

お茶を作った——日曜日の葉で。

十一月の夜、台所の窓から通りを見た。

通りは普通のことをしていた——存在すること、動くこと、誰の許可も要らずに。

それで十分だった。◈春樹は大学受験に合格した。

三月——合格通知が来た朝。母に見せた。

母は泣かなかった——笑った。

誇りの笑いで。由紀にメッセージした。

「受かった。」三分後——「明らか。」

その一語だった。辞書の意味では:証明不要。

二人の意味では:言語化する前から知っていた。

今日の意味では:

あなたなら受かる——最初から分かっていた。春樹はその「明らか」を

新しい語彙のノートの最後のページに書いた——東京のノートの、最後のページに。

大学では新しいノートを始める。

新しい街で。新しい図書館で。

新しいテーブルで。新しい光で。

語彙は——移動する。語彙は人間の中にあるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。