↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EIDOLON 知られてはならないモデル  作者: 竜の牙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/35

22. 第二十二章 春樹が数えるもの

水曜日の夜。机の上に——ノート一冊。

オレンジのペン、キャップが開いたまま。

リスト。五十一個の記録。七週間目から始めた——由紀が「明らか」を

最初の本当の意味で使った翌週。

なぜ始めたか決めた記憶がない。

ただ——書き留めておきたかった。

何を書き留めたかったか:

「明らか」が使われた回数ではなく——「明らか」が使われた質の記録。

「明らか」の意味が薄かった使用と「明らか」の意味が最も厚かった使用と

「明らか」が三層になった使用と——それぞれが違った。

でも全部「明らか」だった。リストはそれを数えていた——数えることで

記録していた。今夜——リストを見ていた。

理由:

来週、由紀が引っ越す。引っ越した後、リストをどうするかまだ決めていなかった。

続けるかもしれない——メッセージで届く「明らか」を。

でもそれは別の「明らか」になる——距離のある「明らか」、

画面を通した「明らか」。同じ語。

違う質。これが語彙の一番大切なことを

教えていた:

語は変わらないが語の重さは状況で変わる。

「明らか」——隣にいるときと、三時間離れているときでは同じ語で

異なる重さ。リストはその重さの記録だった——重さを数値にはできないが

記録することはできた。引き出しを開けた。

由紀のノート——彼女がくれたもの。

プロジェクトのタイムライン図。

レートの変化についてのダイアグラム——彼女が来なかった日に

一人で埋めた部分。「私のコピーはある」と言った。

「あなたが持って。」なぜか分からなかった——あのとき。

今は分かった:

これが物理的な記録だった——二人が一緒に作ったものの。

ノートに書かれた語は印刷できる。

でも由紀がその語を書く方法——速く、確信を持って、考える前に手が動いている——

それは印刷できない。由紀の手書きの語がそのやり方を証明していた。

だから保持する価値があった。

颯太が来た——7時に、言った通り。

ゲームをした。颯太が一回勝った。

春樹が二回勝った。

9時頃、颯太が言った:

「大丈夫?」「うん。」「来週——引っ越しだっけ。」

「そう。」颯太は春樹を見た——八年間知っている目で。

「由紀と、その後も続くじゃん。」

「知ってる。」「別の形になるだけで。」

「知ってる。」「だから——」

「颯太。」「ん。」「分かってる。」

颯太は何も言わなかった。それが正しい返答だった。

ゲームを続けた。

颯太が帰るとき:

「また来週。」「うん。」「由紀の引っ越しの日——お前は行く?」

「行かない。」「なんで?」一拍。

「向こうから来る方がいいと思う。引っ越し先で。引っ越す側の場所ではなく。」

颯太は春樹を見た。「明らかじゃん」と颯太が言った——意味を知らずに

正しい意味で使った。春樹は笑った。

「明らかに」と言った。颯太は帰った。

春樹は机に戻った。リストを見た。

五十一番目の記録を付け加えた:

51。颯太が「明らかじゃん」と言った——意味を教えていないのに。

知っていたのではなく文脈から来た。

語彙は——教えなくても正しく届くことがある。ペンのキャップを閉めた。

引き出しにリストを入れた——由紀のノートの隣に。

窓の外——三月の夜。引っ越しまで七日。

でも今夜は——ただ今夜だった。

今夜があるだけで十分だった。

それが「重さ」の語の一番正確な使い方だった——今夜の重さが

ある、ということ。それで十分だということ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。