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俺の初恋は若年性  作者: わたしはオジヘル
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テレジアの体臭

昨晩は伯父様の勉強部屋に泊めて頂いた。倒れられるまでは伯父様が本を見たり物を書いたりする為に使っていられた和室。


伯父様が倒れて自宅療養されるようになったのは2000年の前。テレジアは二十代だった。当時多くなかったであろう、一階をバリアフリーに改修した。


一階には現在、日中テレジアが過ごすリビングと、それから夜間ベッド上で休む部屋と、伯母様御自身が寝起きに使われるお部屋などなど。バリアフリーのこれらは車椅子で行き来できる。


二階は空き部屋ばかりになって、うち一部屋が伯父様の旧勉強部屋、今は特別室。客室は他にもあるけれど、旧勉強部屋は決まった時にしか開かない。私はそこに泊めていただいた。


子供が出来なかった伯父様夫婦の手伝いをしに、はじめテレジアは通ったけれども、しまいには住み込んだ。仕事も変えた。看護部長の役職および大学教員の仕事を持つ伯母様一人でケアするのは難しかったに違いない。


テレジアが住み込みで使用した部屋というのが、伯父様の旧勉強部屋。長い巡礼旅行を終えて後、伯母様のもとへ身を寄せた際にも部屋を使った。入室すればテレジアのにおいがする。「良い」「悪い」では形容にならない曰く言い難いにおいなのだけれど、すでに二十年ないし三十年前、テレジアは今の体臭を持っていたと分かる。もし学生時代から持っていたとすれば、私は気づかなかった。というより、気づかないわけがないから、高校3年生の時はにおいを発していなかったはずだ。どういうのだか、伯母様には分からないらしい。「?」みたいな顔をされる。


普段はシャンプーやら洗剤やらの香りに隠れがちなのだけれども、行なう介護如何でそれと分かるにおいだ。日によって幾らかずつ感じ方の変化するにおいでもあるようだ。施設にいた頃、職員の或る者は気づいてテレジアの体臭を話題にした。もっとも、分からない職員には分からず、口さがないのになると「それは●●●の臭いでしょう」など言った。しかし、絶対にそんなものではない。


たとえば雨後の原生林に分け入るにしたがって鼻腔に感じる陰翳ある湿り気、のようなイメージ──なかなか言葉にしにくいが、においと言っても人の嗅覚をとらえる成分である以上にその種の連想を誘う触媒がテレジアの体が放つにおいと言えようか。


伯父様が亡くなった年、テレジアは修道院を巡る旅に出た。

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