信じたい
テレジア。僕は誤解していたかもしれない。全てを誤解していた。大きな大きな思い違いがあった。主人公の気分に浸っていた。去年からのこの十三カ月の間、自分が作った物語の主人公になっていた。僕は天恵の仲介人ででもあるかのように浮かれた。愚かにも、傲慢にも、あなたに祝福をもたらしたと考え始めるところだった。あなたを悪い施設から救ったのは僕だと。心のどこかで、あなたの救い主になっていた。誰よりも救われなければならない僕が。誰よりも救われがたい僕が。誰よりもあなたの救いを必要としている僕が。気がついたら救ったつもりになっていた。あなたを。この僕が。
あなたから言葉を奪ったのは僕だ。そうでなかったか。あなたの傷は僕が負わせた傷だ。あなたにナイフを入れたのは僕。僕がその跡をつけた。度々辱しめられたのは僕の行ないがあなたに報った。虐待された。尊厳を奪われた。僕のしわざだ。伯母様は間違いだと言われる。それは蛇が囁く時の声、まんまと罠にかかることだと。そのように慰めて下さる。僕が蹂躙したのはあなたの清さだった。ひとりの肉体をにじるとき、あなたの聖性をおかした。あなたを愛するどころか、僕はあなたを呪った。一人また一人と犯すたびに、あなたを呪うわざを積み重ねた。胎児の命を奪った。僕がしたことだ。そうして、あなたから言葉を奪った。それでもあなたは人に美しい声を届ける。僕はあなたに醜い行ないを届けつづけた。僕はあなたの声を聞くのだろうか。誰の声なのか。伯母様は絶対にそうでないと言われる。言うことは気休めでない、それこそ僕の思い上がりが招く地獄だと教えて下さる。テレジア。僕はあなたを呪い続けたから天に呪われたのであるまいか。僕は自業自得だ。このまま地獄に堕ちて当たりまえ、僕は誰よりも愛すべきあなたに呪いをもたらしてしまった。結局僕はあなたの災いだったろう。これが嘘であって欲しい。真実であって欲しくない。僕の傲慢だったら良い。すべてが益となって欲しい。でもそんな事があるだろうか。僕は伯母様を信じたい。出来るだろうか。僕には資格があるのか。テレジアを愛する事はついにかなわない望みだったか。




